ありのままで

         (2018、12,10)

今まで必ず、月に一度髪を染めていた。
毛髪は一日に0.3mm伸びるという。30日で正確に1㎝白髪が出てくる。それが気になって必ず美容院に行っていた。
 何度か白髪に戻すことを考えたが、どうしても決心がつかなかった。
ためらっていたのは、その途中の見苦しさを恐れていたためだ。
一年近くも、中途半端な頭でいることは許せない。

  ありのままの 姿見せるのよ
  ありのままの 自分になるのよ
  何も怖くない 風よ吹け
   少しも寒くないわ
  悩んでいたことが 嘘みたいね
  だってもう自由よ 何でも出来る
  どこまでやれるか 自分をためしたいの
   そうよ 変われるのよ 私
          (アナと雪の女王)

 白髪染めをやめて4ヶ月経った。まさに中途半端、まだら髪である。
でも今はその中途半端を楽しんでいる。この日々変わる様子はたった一度のことだもの。
これは何でも許せるようになった自分の年のせいか。
それとも多様性を認められるようになった時代のトレンドなのか。
「まだら」と思わずに「グラデーション」という手もある。
今、グレイヘアがはやっているらしい。となると私は流行の先端ということか。
毎朝鏡を見るたびにドキドキする。見慣れない自分がいる。
「おはよう、昨日とちょっとちがう私」

 年を取るのも悪くない。
「知りません」
「分かりません」
「忘れました」が、平気で言える。
この変な頭も認められる。
と同時に今だからこそ、しておきたいことがある。

 私はこれまで経験してきたことを、子供や孫たちに伝えておきたいと思っている。
戦後の何もない時代から始まって、池田隼人の所得倍増論、田中角栄の日本列島改造論、石油ショックや、バブルの崩壊。そして今は人口減少とITの時代。
 私たちはその中で、おろおろと日々の生活に追われながら、必死に過ごしてきた。
アルヴィン・トフラーは、人類の大きな流れについて、「第一の波は農業革命、第二の波は産業革命、今はそれに続く第3の波の中にある」と40年も前に看破している。
 私たちは、まさに大きな時代の変わり目に生まれ合わせたことになる。

いろんなことを乗り越えてきたからこそ、人生は豊かになると、今なら言える。
その変化はあまりに目まぐるしくて、ほんの数十年前の話でも、浦島太郎の昔話のように受け取られそうだ。
 でも、おばあさんの昔語りとして、その流れの中の小さな経験や、今では考えられないようなおかしな体験を、次の世代に出来る限り、書き残しておきたい。
 そのためには、グレイヘアのパフォーマンスも悪くないかも。

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