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ミン・ウォン『偽娘恥辱㊙︎部屋』展@ASAKUSA

ベルリン在住のアーティスト、ミン・ウォンによる、日活ロマンポルノを題材に、アーティストが架空の次世代ロマンポルノ女優「偽娘」大谷美葉を演じて、「性」についての再考を促すインスタレーション。

ポルノ映画が孕む男性主義的視線(女性蔑視も含む)を、男性であるアーティスト自ら、日活ロマンポルノの伝説的スター女優を演じることによって、明らかにする。
本展は、まず一階で、ウォン氏が『一条さゆり 濡れた欲情』神代辰巳(1972)で伊佐山ひろ子が演じた勝気なストリッパーを再演する映像が流れる幾多のスマートフォンの展示で幕開ける。

しかし、彼(彼女)は映画のように日傘ではなく、自撮棒を片手に街を闊歩する。それは、自己同一性が、自身の身体・身辺だけでは成立しなくなりつつある現在を雄弁に物語る。
階段を上がると(階段には、ポルノ映画の歴史本等が数冊)、ベッドシーン撮影直後のように乱れたシーツが露わな小さなベッドと、それを囲うように設置された簡素な照明類。そこにも、幾多のスマートフォンが。画面の中では、SMプレイで名を馳せた名女優谷ナオミに扮するウォン氏が。気負いしないチープなプレイといったところか。
カーテンを始め、小道具は『赫い髪の女』神代辰巳(1979)を意識してか赤系統で揃えてある。ウォン氏は、スマートフォンの中で、『赫い髪の女』の男性依存症(これもポルノにおいて、男性の御都合主義かと)と思われる女を演じた宮下順子も演じていた。彼女(彼)は、男性ではなくどうやら自撮依存らしい。
二階には、撮影で使用したと思われるボディスーツやウィッグもあり、それらを眼前にすると、ポルノ映画の中の「男」にとっての「女」が、いかに薄っぺらな記号なのかと思わずにはいられない。

寝室が、セルフィー仕様の「偽娘」大谷美葉って。私小説ならぬ、わたくしポルノ作家といったところなのだろうか。

そう、入り口の傘置き場にあった傘が赤くって。ここから展示が始まっていたのでしょうか?

限定販売の図録(カレンダーになっている)を購入。演じた架空女優のなりきりインタビューと親切な解題(英語訳もあり)、そして渾身のポートレート12作品。

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