『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』が大ケッ作青春学園ミステリーだった件

この記事は 謎解きクラスタによる謎以外 Advent Calendar 2021 の15日目です

はじめに

クレヨンしんちゃんの映画、全体的にいい作品が多いのですが、その中でも今年の『謎メキ!花の天カス学園』が語りたくなる傑作だったのでご紹介します。
最初に謝っておきます。この作品、DVD/BDの発売日が2022/02/04となります。そのため、今紹介されても見られないじゃんよーってなると思います。あと2か月半、待ってください。許してにゃん。

タイトルに「謎」ってついてるけど…

「謎以外 Advent Calendar」ちゃうんか!という声があると思いますが
この「謎」は推理小説・ミステリーの「謎」であって「謎解き」の「謎」とは、また少し違うのでいいという解釈です。ミステリーと謎解きの違いについては、語り始めると一晩じゃ終わらないので今回は置いときます。
ってか、なによりもこの映画が2021年ベストだったんじゃ!語らせてくれ!!お願いしまあす!!!

本格"風"ミステリー

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公式では、本格"風"学園ミステリーと謳ってますが、はっきり言います。
ちゃんと本格ミステリーです。

何をもって本格ミステリーと呼ぶか、はしばしば議論になりますが、ここでは「謎の解決を主眼とし、視聴者に与えられた手掛かりから論理的に真相を導くことができる」という定義とします。

AIによって監視されたエリート学園を、江戸川乱歩を彷彿とさせる怪しげな吸ケツ鬼が跳梁跋扈するという魅力的な謎。そしてミステリーにはお決まりのダイイングメッセージ、一癖も二癖もある容疑者たち。
ここまで整えられたお膳立てに対して、茶化したり表面をなぞって済ませるのではなくて、ちゃんと真正面から取り組んでミステリーを成立させているのが、この作品のすごいところなのです。

具体的に、どのようなところが特にミステリー的に優れているのか、ちょうど私が考えていたことと同じことを書いていたブログがあったので紹介しておきます。ネタバレなので、鑑賞後に読んでみてください。なんでこの作品を見てミステリマニアが興奮しているのか伝わればうれしいです。

しんちゃんと風間くん、そしてかすかべ防衛隊の友情

天カス学園は全寮制の学校であり、体験入学するかすかべ防衛隊の面々も親元を離れることになります。つまり、家族の出番がほとんどありません
そのぶん、かすかべ防衛隊のそれぞれのメンバーに焦点が当てられ、彼らの冒険や成長が描かれています。特に、しんちゃんと風間くんの関係性が今回の映画の大きな柱となっています。これがマジで熱い。お互いにすれちがったり、本音をぶつけ合ったりしながら、運命のいたずらに翻弄されていく二人。そして、最後には…!?
大人だって、いや、むしろ大人になってしまった私たちだからこそ、どちらの気持ちもわかるし胸が熱くなる物語なのです。

8人の容疑者たち

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「ミステリー」「友情」この縦横の糸によって紡ぎだされる物語をひときわ華やかで魅力的に彩っているのが、事件の「容疑者」たちです。
クレヨンしんちゃんの映画は本来子供向けなので、上映時間は長くありません(104分)。その中で、キャラクターを容疑者とすることで、それぞれの人物像に興味を持たせ、深く掘り下げられるように仕立てている手腕が見事なのです。ミステリーとしての解決につながる手掛かり・伏線を散りばめつつ、キャラクター自体の紹介やかすかべ防衛隊との親交もきちんと描かれている容疑者パートもまた、この映画の素晴らしさです。

こんなに個性的な人物が出てきますが、本質として伝えたいことは「人は外見だけじゃわからない」ということじゃないかと私は感じました。彼らの多くは、物語が進むにつれて意外な一面を見せます。その姿もまた、彼らのアイデンティティであり、視聴者を驚かせ好きにさせます。

終盤、とある人物について客観的にはどう見ても100%のギャグに振り切ったシーンがあるのですが、そこまでの流れでその人物について心を動かされていた私は号泣しました。同じような人は他にもたくさんいたようです。ここが本当にいい。泣かせに来ているのではないはずなのに、泣けてしまう。この映画の底力を感じさせる一幕でした。

おわりに

思い返してみても、やっぱりすごい映画でした。ミステリーも青春も友情もレギュラーキャラもゲストキャラも全部もりもりでしっかり描き切って104分にまとめられた大ケッ作です。

見てない人は、本当ごめんなさい、あと2か月待って見てください。損はさせません。
見た人は私と語りましょう。

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