近況報告。
拝啓 バイスプレジデントT様
ご無沙汰しております。
梅雨寒の折、貴社いよいよご清祥のこととお喜び申し上げます。
まずはご昇進、おめでとうございます。
プロデューサーはまだしも「バイスプレジデント」ですか。相変わらず横文字がお好きな社風なようで懐かしく存じます。
が、むしろ貴方は「バイスサワー」のほうがお似合いです。
地位が高くなっても高級すし店なんぞ行かず、変わらず大衆酒場めぐりを続けてください。そして給与アップの分、私にしたように後輩たちを飲みにつれて行ってくださいませ。
さて、自称”映像事業部の至宝”と謳われた私が会社を去って早二年目、その損失の穴埋めはさぞ容易ではないことと存じます。
そんなエースディレクターも酒蔵がどんなものか何も考えずに婿入りしたため、新天地では新人AD同然、杜氏、ベテラン蔵人にシゴかれ挫折感を味わう日々でございます。
貴方様にご忠告された酒蔵の大変さ、今更ながら噛みしめております。
この年で一から勉強は大変ですが、しかし解らないからないことだらけではありません。
前職と照らし合わせてみると酒造りは以外と親和性があるといいますか、腑に落ちることも多々あります。
役職で言うと
蔵元(経営者)
=プロデューサー(市場や顧客のニーズ把握・ディレクターへの作品の方向性の提示・予算管理など)
杜氏(酒造りの責任者)
=ディレクター(撮影スケジュール・シナリオ制作・演出)
蔵人(杜氏の補助)
=AD(ディレクター補助)
また作業も映像制作の工程と似ています。
こう当てはめると全体像を把握しやすく、自分の役割を認識しやすくなります。
では自分の役割とはなにか?
貴方は昔よく言ってましたね。
「ディレクターの個性を引き出してこそのプロデューサーよ」
今は奥さんが杜氏を務めています。
自分もディレクターを十数年務めたから余計にそう思うのかもしれませんが、杜氏が蔵に入ってから十数年、経験を重ね、ちょうどこれからが自分のやりたいことと培ってきた実力が合致していっている時期だと感じています。
なんだかんだ楽しそうですしね。
なので彼女しか出せない個性をとことん磨いてほしい。その求める味の再現性・完成度を高める補助を蔵人・蔵元として支える。
そんな心持ちになりました。
これも名プロデューサーを間近に見ていたからでしょうか笑︎
昔はディレクター一筋でやっていきたいと思っていましたが、プロデューサーもやりがいがありますね!
東京出張の際は飲みましょう。
また大衆酒場つれていってください。
とりあえず近況報告でした。
元エースディレクター