4月30日

今日はめずらしく昼過ぎまで寝た。
テレビをつけてみるとどのチャンネルも最近この町にやってきたサーカス団の話題でもちきりで、フミちゃんが目をまたたかせながら「お祭ですか!? お祭りですね!?」とはしゃぎはじめる。彼女は祭だとか記念日だとかパーティーだとかをめっぽうよく愛する女なのだ。そんなフミちゃんの空気にあてられて、ベランダ付近を浮遊していたUFOがグリーンやらイエローやらスカイブルーやらの光線で部屋中を鮮やかにつらぬく。それを受けた窓際のサボテンが勢いよく花を咲かせたのを見て「あなた、そんなこともできたの」と驚嘆すると、UFOは得意そうにくるりと宙を一回転した。
「お祭りにはやっぱりワイン」ということでわたしたちは真っ昼間からへべれけに酔っ払うことにする。ラジオからジャコ・パストリアスの「リバティシティ」が流れてきたのを皮切りに、訳もわからないステップを踏んでふたり一緒にくるくる踊る。UFOは眩過ぎて最早ミラーボールの様だった。
「ハッピーバースデー!」「えっ、だれの」「そんなのわかんないですけどお! いやあめでたい! めでたいですねえ!」「ううん! わかんない! けど、めでたいかも!」「ハッピーバースデー!」「バースデー!」とわあわあ騒ぐ。と、そのとき隣の部屋からハッピーバースデーの鼻うたがきこえてきた。
このマンションの壁はあまり厚くできていない。
わたしたちは揃って赤くなりながら、ハッピー、と小声で言い合ってソファに倒れこんだ。

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