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絶滅危惧種のはなし

 今日は12時に来客があるので、さきほどキッチンの戸棚から菓子器を取り出して、チョコレート菓子と、スナック菓子を綺麗に並べました。数年前に住んでいた祖母の家には、菓子器が沢山あって、近くのおばあさん仲間や植木屋さんなんかが来たときに、麦茶や緑茶と一緒にテーブルに出していた記憶があります。

 私の家にある菓子器は、そんな祖母の菓子器軍団の中から選りすぐった一つを譲り受けたものです。本日で出番は2回目になります。有難いことに我が家には連日友人がワイワイ集まってくれますが、飲み会には菓子器の出番はほぼなく、缶ビールとワインボトルがテーブルを占拠するのが常です。

 前回菓子器を出したのは、我が家に新聞記者さんがいらしたときで、結局お菓子には一切手をつけずに、「長居してすみませんでした」と丁寧に頭を下げて出て行かれました。(その日は節分だったので、せめてお土産にと、小袋に入った豆は持って帰ってもらいました)

 今日も別の方がお仕事でお見えになるので菓子器を取り出したのですが、まあ、十中八九、お菓子は召し上がらないでお帰りになると思います。社会人って忙しいですよね。私だってお客さんとゆっくりお菓子を食べながらお茶をすするような仕事の仕方はしないし、「この会議をいかに結論まで持っていくか」ということに頭を使いながら、それなりにワークマネジメントしています。やるべきことやって、色々考えてみて、経済を回して、社会に何かしらは貢献しているはずとか信じたりして、そうやって、いち会社員として、せわしなく生きています。

 それでもまあ、せっかく私の家に初めてお見えになるお客さんに対しては、「菓子器に茶菓子を用意する」という、今となっては完全に自己満足な行為を、臆せず継続していきたいなあと思っています。目まぐるしいスピードで変わっている(と言われている)社会の中において、戸棚から菓子器を毎回出すことって、私にはとってもとっても大切なことだからです。

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