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Like A Virgin

ロストバージンは18歳。
大学一年の夏。その当時としてはきわめてありきたりの時期だった。
相手は付き合っていたサークルの先輩。これまたありきたりの相手だった。

その先輩とは、春のコンパで酔っぱらってうっかりキスしてしまったことから付き合いが始まった。
特に恋愛感情を持っていたわけではないが、その当時はキスしてしまったらつきあわなければいけない、となぜか思い込んでいて、そのまま交際が始まった。

つきあい自体は可もなく不可もなく続いて行った。付き合っているのだから、相手のことが好きだったような気がしていたし、たまに理不尽なことを言ったりすることはあったけど基本的に先輩はやさしかったし面白かった。

そんな風に過ごしているうちに、夏を迎えた。
カップルにとっての最初の夏は、関係を一歩進める時期。なぜかそういう不文律があり、そうしなければいけないものだと思い込んでいた。

場所は東京。先輩の知人の下宿の部屋を一晩借りることになった。学生街のアパート、狭い6畳一間。エアコンはなく扇風機だけのその部屋で、いよいよその時を迎えた。

これも定石通りに手間取っているうちにどうにか入り口を見つけ、入ってきたその瞬間。
私の脳内に浮かんだ言葉は

「お父さん、お母さん、ごめんなさい」

だった。

自分でもその浮かんできた言葉に驚きながら、痛みをこらえてひたすら早く終わらないかと待っていた。ただ、ただ、痛くて苦痛な時間だった。

終わった後翌日くらいまで、自分の中に何か挟まっているような異物感が残ったことにも驚いた。しばらく続いた排出物に、ああ本当に「膜」が破られたんだなあ、と妙な感慨があった。

その後その先輩と会うと、当然のように体を求められるわけだが、回数を重ねてもそんなにいいものとは思えないままだった。そうこうしているうちに他の人を好きになってしまい、先輩には別れを告げた。

後で好きになった相手と初めての夜。セックスすることに不安があった。どうしようと思っているうちに、彼が入ってきた。驚いた。うれしかったのだ。ひとつになっていることがうれしいと、幸せだと感じていた。こんなことは初めてだった。そしてその時やっと、私は先輩のことを愛してなかったことに気がついた。ずっと目をそむけて見ないようにしていた自分の本当の気持ちを、他の男の人に抱かれながら突きつけられた。

初めてじゃないことは相手も知っている。それでも、私にとってその夜は初めての「本当のセックス」だった。好きな人とセックスするってこういうことなんだ、と実感することができた。Like A Virgin。二度目のロストバージンは、うれしさとほろ苦さの入り混じった時間だった。

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♪B.G.M  「Like A Virgin」マドンナ

※このストーリーはフィクションです

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