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【all of the time】

2【観覧車🎡のある風景】

20**.**/*1  日曜日

「アレ?おかしいなぁ。」
ダイヤル式のトースターのスイッチがいつもの様に回らない。

キッチンの上に隙間なく、置かれた瓶と瓶に挟まれた、手紙がまな板の上に落ちるまで、あと3秒…

季節はやく冬のど真ん中、通販で購入した。いろんなモノに同期出来る、ラジオが夜とも早朝とも言えない時刻をさす…

珈琲メーカーのドリップの完了の音楽を変えようといつも思うのだけど、つい忘れてしまう。

姉が旦那さんと喧嘩して、家出をしてから3日目の朝、僕は変わり映えのない朝食を作る為にキッチンにいた。
ようやく、1人暮らしのリズムに慣れてきた、社会人一年生の冬の出来事…

今年は珍しく、雪が降って通い慣れた、バス停までの道にもまだ雪が残っている。

今日は当直明けで、少し時差ぼけ気味だ。
なんの気無しに、街の雑貨屋でワンコインで売っていた。木目の珈琲カップにゆっくり注ぎ込む。

自分で仕掛けた、時限爆弾が落ちて来ることも知らずに…

窓の外の去年、出来たばかりの15分で一周する。
観覧車の常備灯が静かにタイマー通り、明かりを落として、朝の訪れを教えてくれていた。

テーブルには一体、あの体型の何処に入るのかわからない空のワインのボトルが全く手のつけられていないオードブルだったのだろうか…冷めてしまった宅配ピザと一緒に無造作に置かれているのが眼に入る。

ダイニングを挟んで向かいの部屋に霰もない姿で、深い眠りにようやくついた姉を起こさない様に僕の一日が始まる…

もともと、部屋をシェアするつもりで借りたのだけど、予定の人は彼女が出来て、それどころではなくなり。
ワリワリと云うあいつの少しニヤケた顔が何となく憎めず、そのまま計画通り借りてしまった。

大家さんが1階で2階をリフォームして賃貸で貸しているタイプの物件で…

内観の時にいろいろお話させてもらって、御好意で少し家賃を下げてくれた。

シェアする相手の事情を話したら。
「大丈夫?」と声をかけてくれたのは去年今ぐらいだっただろうか?

いつかルールがあったけど…
僕にはどれも該当しないモノばかりだったので、すぐ話がまとまった…

実家を出て、2度目の引っ越し…
いろいろな荷物が少しずつ増えてゆく。

家を出る事が決まった日に母とデパートに行った…
余り派手な事をする人では無いのだけど…

食事をする事に対しての意識が凄い高い人で、コレでも男なのだけど、かなり長い時間、母の台所での実技と講習は受けた…そんな事もあって食べる事には、今だに余り、困った事が無い。

余り何か欲しいと云って買ってもらった記憶はないのだけど、簡単なモノなら一通り作れる道具をほぼ揃えて、購入する母の姿に僕は言葉を詰まらせてしまった。

あ!挟んだ手紙が流しの中に落ちて、文字が滲んでしまって…手紙の下半分が読めない。

見覚えのある…少し丸みのかかった癖のある文字…
内容から同窓会の案内だった…

どうやら、参加、不参加を問う、内容だったのだろう。
僕は熱めのカップと手紙を持って一度、部屋に戻った…
何種類かある選択肢の中で一番よく使う選択を無意識にしていた…

僕は机の引き出しにチョコレートの缶の中に手紙をしまう…
悪い癖で入れ物を気にいると捨てれない処がある。
お菓子の缶とか、まぁいろいろあるのだけど。
独特な名前のついた丁度、引き出しに収まるサイズが気に入って、いつまでもそこにある…

実家を出た刻に大概のモノは置いて出て来たけど。
この机は連れてきてしまった。

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