近江八幡からの京都リベンジ その2

近江商人なる言葉が知られているように、近江八幡は昔からの商業都市だったようだ。とはいえ、どういう商売だったのかはよく知らないんだけどね。で、そのかつての商業都市エリアが現在の駅の近くにあるのかというと、さにあらずなのだ。後から訪ねることになるハイド記念館の解説の人が言ってたけれど、明治になって鉄道が通ることになったとき、地元の商業地が寂れることを懼れた住人たちは反対したそうだ。それで、鉄道の開業当時、駅は野っ原の中、市街地から2キロほど離れたところにつくられることになった。もちろん不便ではある。でもそのおかげで旧市街は開発をまぬがれ、むかしの建物の多くがいまに残った、というわけだ。川越市や栃木市が旧市街を「蔵の街」としてアピールできているのも、同じような経緯があったんだろう。

さて、泊まったホテルは近江八幡駅のすぐ近くにあって、目的地となる旧市街エリアは西北に向かってかなり遠い。とはいえバスは少ないしタクシーなんか使える身分ではないのでひたすら、歩く。毎度のことだからとくに苦にはならないのである。

さてと。↓のリンクは観光案内所で手に入れた、去年のイベントで使われたヴォーリズ建築マップで、ほぼこれを手にしながら旧市街地をうろつきまくった。のだけれど、地図はあっても写真は少なかったりするんだよね。まあ、特定のイベント用だから仕方がないのかもしれないけど。
もちろん事前にWebでも調べはしたんだけど、これまた隔靴掻痒で。建物写真を多く紹介しているページは、散策に役立つマップがなかったりする。マップのあるページは、建物の紹介が貧弱だったり。まさに帯に短し襷に長し。なかなかうまい具合のものはみつからなかった。
ヴォーリズ建築が存在するのは旧市街が中心、とはいっても、旧市街からちょっと離れたところにある建築もあって。そういう物件について、地図上ではテキトーにしか書かれていないのも困りものだった。たとえば、距離の縮尺が詰められていて、近いように見えて実はかなり離れていたりするのだ。だから、誰かに言われたように自転車を利用して見て回ればよかったのかもしれない。でも、そんなことは事前には分からなかったし、街を歩いてみてもレンタサイクル屋なんか気がつかなかったんだよね。ほんと、もっと利用する人の立場に立ったガイドが欲しかったよなあと、いまさらながらの愚痴ではあるけれど、思ったりするのである。

さて、旧市街がはじまるのは中村というバス停あたりからのようで、その中村の交差点を左手に折れても、ヴォーリズ建築がいくつかあるように地図には書かれていた。だから少しテクテクしたんだけど、案の定、地図がテキトーなせいか、なかなか見つからない。さっき愚痴ったように縮尺がいい加減だったり、道路も省かれて書かれていたからなんだろう。なので早々に見つけるのはあきらめて、まずは近くにある池田町の洋風住宅街に行ってみることにした。テクテク。
こちらは案外と分かりやすく、たどりついてみると、これがなんと質素ながらため息が出るほど魅力的。小路に数件つらなって残っているのだけれど、どうやらいまも人が住んでいるらしい。素朴な煉瓦塀がぞくぞくするほど魅力的だ。

この洋風住宅街が途切れたところで右に折れ、ずううううっと進めば、突き当たりがめざすヴォーリズ記念館になる。でも、道すがらにもヴォーリズ建築がいくつも点在しているからそっちにも寄り道しながら、と思いつつふらふら歩いていると、そこかしこに昔風の板塀の家や格子戸のある屋敷が多く残っていて、もちろんどれも人が住まっている様子。町全体が歴史的建造物の保存地区みたいではないか。往時の姿をできるだけ保存しておこう、という人々の思いが、暮らす人の体温とともにつたわってくる気がしてくる。


少し歩いて「近江商人の町並み」とも称される新町通りにでると、タイムスリップしたかのように、伝統的つくりの軒の低い木造建築がつらなっている。通りすがりの見ず知らずの人と会釈を交わしたり。そぞろ歩きするだけでも気分は近江の人になったような気になってくる。

さらに行けば、四つ角に教会。その先にはアンドリュース記念館。向かい側には牧師館が集まっている。とはいえどれも中に入ることができないので、外観だけを眺め回す。いずれも過去の遺物ではなく、いまも現役の施設として使われているようだから仕方がないといえばそうなんだけど。さらに進んだ四つ角を左に折れたところにある旧八幡郵便局は、これはもう完全に過去の遺物のようだ。なかなか威厳があって、かつての郵便局の位の高さを感じさせられる。日曜祭日ならば中に入れたようだけど、平日なので外観しか見られなかったのは残念だった。

な感じでうろうろしながら、元はヴォーリズの住居だったというヴォーリズ記念館前まで到着した。でも、あらかじめ予約した10時30分にはまだ15分ほど間があるので、ではと裏にあるハイド記念館の方にまわってみると、ヴォーリズ学園という学校の門と校庭、奥に学校建築があるだけで、とくにハイド記念館という表示がない。さて、どうしたもんかな、と、ちょっと右手に行ってみると小さな脇門あって、ここは開いている。もしかしてここから? このように開かれていて、とくに関係者以外立入禁止、などと書かれていなければ、路上徘徊者は「これはウェルカム」と解釈するのが一般常識。なので、おそるおそる足を踏み入れてみる。なんてったって学校の敷地内だし、少しは緊張するのだよ。
物置のような小さな建屋とちょっとしたベンチ、その反対側には下駄箱などのみえる校舎への入口がある。たしかここにハイド記念館と書かれた看板がかかっていたっけかな。それでまあ、ひと安心。でも、入ってしまったら見学に時間がかかりそうな雰囲気だ。それに予約の時間も近づいている。もどろうか、と思っていたら、二人連れのオバサンも同じようにウロウロしていた。彼女たちも観光客かな。でも、それはほっておいて先ほどのヴォーリズ記念館へ戻り、約束の時間の5分ぐらい前に到着したのであった。(2023.04.06)


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