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ドラマ「ハッピー・オブ・ジ・エンド」2,3話の感想

(※原作未読のドラマ感想になります。)

とにかく1,2話が最高だったんでね。めっちゃ楽しみに待ってました3話。
いや、楽しみ半分、不安半分、怖い半分、ドキドキ半分という感じかな・・・
1話のインパクト絶大だったあの裏社会の殺伐とした退廃的なアングラ感、その救いのなさが2話で少し和らいだような気がしていたんですね。いや、和らいではないか・・・
世界観はよりディープな方向にいくんだけど、2人でいる時間に少しずつ体温が感じられるというか、優しい空気が流れ始めていたような気がしていました。

一緒にスーパーでお買い物したり、彩り豊かな手料理が出てきて映像的にも明るさが生まれていたし、おそらく初めて口にするであろうあたたかい手料理に「まずい」と言いつつもお箸がとまらないケイトの様子も微笑ましかったし、オムライスが食べたいと言うケイトに人間らしい欲求が見えたのもほっとしたし、「ケチャップない」と子供のように拗ねる様も可愛かった。

(しかしオムライスという一見ケイトには似つかわしくない、いかにもお子様なメニュ―が切ないですね。たぶん小さい頃に食べたくても食べさせて貰えなかった願望が出てるんだろうと思います。
あとお菓子も。子供の頃から食べ慣れているもの。ちゃんとした食事よりもお菓子ばっかり食べてたんだろうな。ずっと傍にあったもの、精神安定剤、千紘で言うところの煙草みたいなもの。ケイトに楽しさや安らぎを与えてくれた唯一のものがお菓子なのかなと思うと泣けてきます。)

そしてなによりおもちゃのネックレスですよね。
ダッセ…とか言いながらめちゃくちゃ嬉しそうな千紘も、そんな千紘を見るケイトの優しい顔も、すごく柔らかい空気が流れてました。
失くしたネックレスを探す必死さには、お互いを思いやる優しい感情があった。
たぶん2人は、プレゼントをするのも貰うのもほとんど経験がなんじゃないかなと思います。
人から奪われるばかりだった人生。
こんな安っぽくてちゃちいものでも、人になにかを与える喜び、与えられる喜びっていうのを初めて知った2人がすごく切なくて優しかった。

そういうほっとした部分もあった2話だったので、3話はもしかしたらちょっとハートフルな展開になるのではないかと、わずかながらにも期待した私が、すみません。間違っていました。

なにがすごいっていやもうとにかくハオレンの嫉妬ですよね。
いや、もう嫉妬なんて安易に名付けていいのか分からなくなるくらいの、あの千紘に対する執着。

「嫉妬」なんて、言ってみたら恋愛ドラマを盛り上げるスパイスだったりするじゃないですか。
嫉妬してもらって嬉しい。嫉妬しちゃって俺どうしたんだ、とか。こんな気持ちになるなんてもしかして俺あいつの事好きなのか?なんて。
そんな従来の通りのエッセンス的な嫉妬の描かれ方とは全く違う、ハオレンの痛い程に歪んだ執着や独占欲が、怖くもあり悲しくもあり、鳥肌が立つほどの思いでした。
まるでせっかく手に入れたおもちゃを奪われたくなくて泣き喚く子供のような。
冷静でクールで無慈悲な顔のひとつ向こうに、千紘を取るな!千紘は俺のだ!と地団太踏んで泣いている子供の顔が見えるようで胸が痛かった。
独占欲なんて言葉でも表せない、自分の気に入ったものを絶対他人に取られたくないという悲しいくらいの執着。
それはまるで「親」という本来絶対的に自分の味方でいてくれるはずの存在に捨てられ、人が当たり前に持つ愛情の基盤を作れなかった生育環境からくる、命がけの執着にも見えました。

そしてそれが全く無自覚っていうところがハオレンの悲しさをより増幅させるんですよね。
好きの自覚もない、嫉妬の自覚もない。自分の中に沸き上がる感情に名前を付ける術を知らない。

そんなハオレンの嫉妬が明確に行動として表れるのが強姦まがいのあれ。「脱げよ。入れたら自分で動け」のやつです。
あまりにも衝撃的なシーンでした。
一話のラストの濡れ場の感想で、“こんなに萌えのないセックスを入れ込んでくるこの作品のテイストが狂ってて好き”、みたいなことを書きましたが、そんなの全然生ぬるく思えるくらいすごかった。
無表情で「舐めてよ」っていうハオレンも、そんな要求に1㎜も抵抗せずに言いなりになる千紘の従順さも、どっちも狂ってる。狂ってて悲しい。
そのお互いに向く矢印があまりにもいびつで不器用すぎて苦しくてたまらないです。

言われるままに自分でズボンを脱ぐ千紘の憐れなこと。そのやせ細った貧相な下半身があのぼろくて汚いアパートで曝け出される悲しさったらないです。
綺麗にメイクした若いイケメンたちが美しいライティングの中で見せるキラキラの濡れ場とはあまりにも違いすぎる。
ほぼ強姦まがいに、なんの下準備もせずに突っ込まれてぐちゃぐちゃに泣く千紘が本当に可哀そうでたまらなかった。
マツキが言った「いい声で泣くのよ」がちょっと分かる気がするほどに、確かにこれは嗜虐心そそられるわってほどの泣き方がもうなんかすごかったし、そのぼろぼろの泣き顔を見て「泣くなよ。ズルいだろ」と我に返るハオレンの表情がもうたまらなかった。

なんでだ。なんであんたがそんな泣きそうな顔をするんだハオレン。

そう。ハオレンは別に千紘を傷つけたかったわけじゃないんですよね。でも他に方法を知らない。
千紘に向かう自分の愛情の扱い方も、千紘をどこへも行かせたくない欲望の向け方も、全然分からない。そんなハオレンが悲しくてたまらない。

しかしまさかここまでやってくれるとは思わなかったですね。
色んなBLを見てきて、それなりにフェラの耐性はついている方だとは思っていましたが、まさか頭掴んでイラマさせる描写まであるとは、さすがに驚きました。
地上波でここまで見せる制作陣の本気度に、痛々しくもぐっと心掴まれたシーンでした。

(あとハオレンの太ももが想像よりもむちむちで…♡っていうのはまた別の話)

それからやっぱりビールかけのシーンですよね。
衝撃でした。
相手にかけるんじゃなくて千紘にかけるところにハオレンの歪みを見た気がしました。
だって普通は元カレの方にかけますよね。うちの千紘に何の用ですか?みたいな。俺の男に手出さないでもらえます?的な。
私が学んできたBLでは、そんな風に独占欲丸出しで恋敵にマウントを取る攻めに滾るのだと。そんなヤンデレ攻めに溺愛される受けに萌えるのだと。そう教えられてきました。
でも全然違う。そんな一辺倒じゃない歪んだ切実な愛情にぞくそくしました。
きっとハオレンはゴミで惨めで誰にも必要とされない千紘がいいんだろうと思います。
弱ってる千紘なら自分から離れることはないから。どうせ行くとこなんか無いだろ、俺しかいないんだろ。
愛をもらい損ねて、愛のなんたるかが分からないハオレンにとって、千紘の弱さや生活力のなさは、絶対自分から離れないと思えるある種の安心感が得られるのだろうと思います。
俺がいないとなにもできないんだろ。
なのにそう思っていた惨めな捨て犬が、昔の男に尻尾を振ってる。なにそれ面白くない。腹が立つ。お前は俺がいないと生きていけないんだろ?
そんな行動に見えました。
そしてそんな狂った行動の中にも、「お前もずっと不幸なゴミのままか」と、自分と同じ痛みを抱える千紘への同族嫌悪に近い思いやりもあった。
この辺の感情の表し方が本当にすごくてぞくぞくしました。

そして元カレと対峙した時のハオレンの迫力ですよ。エグかった。

「一回捨てたゴミ拾いにきたの?エコだねあんた」

って、えー!こんなこと言える?この修羅場で咄嗟にこんな殺傷能力エグい言葉吐ける?いや、そんじゃそこらの肝の座り方じゃない。こんなこと普通言えないよ。しかもちょっとうまいこといってるし…って感心してる場合じゃないくらいにびりびりにひりつく空気感がたまらなかったです。
嫉妬とかそんな生ぬるいもんじゃない。ただヤリたいだけで昔の男を気まぐれにつまみ食いしにきたヤリチン元カレなんかとは完全に格が違う。踏んできた修羅場が段違い。
ブラックホールみたいに光のない目で元カレを見据えるハオレンの目つきにゾクゾクしました。
温度のない声で確実に殺しにくる追い詰め方にカタギじゃない恐ろしさを見て私は一気にハオレンに落ちました。
沢村玲、まじやばすぎるだろ・・・

言ってしまえば「嫉妬」のひとことで表せる言葉の向こうにある、こんなにもディーブな感情の渦を見せてもらえて、私はすっかりやられてしましました。

 ドラマハピエン、すごいぞ・・・

それにしても千紘ですよね。
自分を捨てた元カレのLINEなんかにいちいち返信するんじゃないよと思うけど、千紘本当に大好きだったんだろうな。
なんだかんだ言い訳しながら、結局流されるままに会ってしまう千紘に、意志の弱さ以上に、嘘でも偽物でも愛に縋りたい底なしの寂しさを見ました。
こんな酷い目にあいながらもまだどこかで駿一の愛を信じてる、信じようとしている悲しいほどの純粋さ。あれだけひどい目にあいながらも、千紘の心は汚れ切ってはいないんです。
それが悲しい。
こんなにも明らかに誠意のかけらもないのに、「本気だったよ」の言葉で絆されかける千紘がほんとバカで泣けます。
ばかで純粋で、それでももしかして・・・と思ってしまう千紘がほんともう憐れでたまらない。
もう・・・どうしたらいいのこの子。

もうほんとこのふたり、どっちも不幸でどっちも不完全で、どっちもどこまでも純粋で、足らない部分を補い合うように寄り添う姿が痛くて切なくて、いったいこのふたりが幸せになれる世界線はどこにあるんでしょうか。泣

つか、元カレよ。おい。
事後の甘いピロートークで結婚話するとかクソにも程があるよ、マジで。
久しぶりに会って、嫁とレスとかいきなりそんな話する?無神経に子供の話とかする?言うに事を欠いて風俗行っただと?
まじでクズすぎる。
ここで「バイバイ」とか使う元カレまじで最悪ですよね。きっと高校の時から千紘の好意を分かって弄んでたんですよね。
ハオレンにそこまでされてもシャワー浴びに行こ?とかもうヤル事しか頭にない元カレ、クズ過ぎて逆に笑えます。

ほんと真のクズはいったいどっちなんでしょうね。
綺麗なスーツ来て、立派な社会人の面被って、嫁もいて子供もいる駿一。
ぼろぼろの服にぼろぼろの靴、ロクに美容院も行っていない金髪プリン頭で、煙草と酒に溺れてる無職のヒモの千紘。
社会的に見て正しいのは絶対駿一です。どこからどう見ても駿一は立派な社会人。
クズは千紘。
でも本当のクズはどっちなんだ、と。私は叫びたくなりました。

そして最高に情緒が乱されたのは、ビールをかけられた後ハオレンを追いかけるシーンです。
「動くオナホとゴミとどっちがまし?」なんて、史上最悪の選択肢しかない質問なのに、「動くオナホに決まってんでしょ」という言葉が、まるでほろほろ崩れる洋菓子のように甘い言葉に聞こえるのはなんでなんですか。
普通に考えたら「動くオナホ」なんてただの悪口ですよ。侮蔑の言葉ですよ。それがなんでこんなに甘い愛の言葉に聞こえるの。泣
そしてその言葉で嬉しそうに笑う千紘がもう・・・なんでこんなに胸が締め付けられるんだばか;
そのあとの手つなぎシーンなんてまるでコンデンスミルクのような甘い恋愛ドラマのワンシーンで、私はもうわけが分からない。
そっと手を握りながらビールまみれの頭をハオレンの肩に頼り投げに乗せる姿なんてもう・・・悲しくて切なくてどうしようもないのになぜかあたたかくて幸せ。

なにこれ。なんなのいったい。こんな萌え方知らん。こんな変化球な萌えは初めてです。恋愛ドラマなんて甘い言葉をささやいて見つめ合って抱きしめ合ってキスするんじゃないのか。それを萌えというんじゃないのか。

どうしようもないど底辺の闇から見上げる空の美しさがたまらない。
汚泥のに中のほんの少し垣間見えた清らかな水がどこまでも澄んで美しくて、私の情緒は狂わされっぱなしだ。

その後のパスタを食べるシーンもよかったな。
ちゃんと「美味い」って言えるようになったハオレンにも、作ったご飯を一緒に食べてくれる人ができて嬉しそうな千紘にも、そこには確かに温かい空気が流れていて、こんなに狭く汚い安アパートなのにまるで幸せな家庭の晩餐なんですよね。
うまくフォークを使えなくてバスタをぽたぽた落としながら食べるハオレンもたまらなかった。
お箸やフォークの持ち方を教えてくれる人もいなく、ずっとひとりで生き抜いてきたそんなハオレンの過酷な生い立ち、その片鱗がそんなささいなところにも垣間見えて、そんなハオレンが笑いながら美味しそうにご飯を食べる様子が切なくて、もう感情がぐちゃぐちゃになるくらいの感動です。

絶望が壮絶すぎて、抱えるものが余りにも過酷すぎて、どうにも救いのない闇の中を手探りで進むようなこの現実、その中にほんのちょっと垣間見える普通の日常が、何倍も尊く幸せに感じられてもう泣けるんですよね。

いったい幸せってなんなんですかぁぁぁ泣

 ハオレンの過去が壮絶すぎて、あぁきっとこうやってハオレンは心を殺されてきたんだろうなと思わされたりします。
でも違うんですよね。
クールで無表情で冷酷に見えるハオレンだけど、決して感情を殺されたんじゃない。
感情や、痛み、苦しみを感じる心を封印させられただけで、ちゃんと人間らしい感情は持ってるんです。
ただあまりに過酷な環境でそのアウトプットの仕方を学ぶことができなかった。
無感情で心が死んでるように一見見えるけど、ちょっと目を向けると、千紘の撮影に付き合ってあげたり、眠る千紘にシーツをかけてあげたり、誕生日にプレゼントをあげられていないことを気に病んだり、ちゃんと他人を思う心があるんです。
ハオレンを守っていた固い殻が、千紘と一緒にいることによって少しずつ剥がされ、封印されてた心が感情として出すことができ始めてきた。
1話であれだけ無機質で感情のないハオレンがこれほど感情をむき出しにし、人に執着する様子は、確かに怖かったですが、その一方でとても嬉しくも感じました。

こんなにも丁寧に2人の感情を描いてくれて、ありがとうございますと言いたい。

それにしても沢村玲さん、演技がお上手ですよね。
クールで口数が少ないキャラだけど、その表情で伝わってくる行間がすごい。
彼活の春名の時も、その綺麗な顔と、ただの脇だけでは終わらなそうな存在感に目を引かれたけど、まさかこんなに深い演技のできる方とは思いませんでした。
表情ひとつ目線ひとつしっかり作りこまれた繊細な演技に引き込まれます。
可愛くて童顔なのにクールでどこかツンとした端正な顔の作りもとてもいい。見ていて飽きない。

そして別府さん。
背が高くて一見チャラくて軽薄そうなのに、その表情、喋り方でとても優しく気の弱い子なんだろうなと分かる雰囲気作りがすごいです。
最初の登場時は、子供のパン盗むし、カード盗むし、やりたいやりたいばっかり言ってるし、どんだけクズなんだって思ったけど、どんどん可愛く健気に見えてきて、まるでハオレンを照らす太陽のようにも見え始めてきてます。

こういうテイストの作品で演技がお遊戯だと目も当てられないので、お二人の演技力が高いのがとにかく高評価です。

そんなこんなで、使い捨てカメラに映っていた蛙もなんだか不気味だし、忍び寄るマヤの影がとにかく怖くてぞわぞわする。
ミステリー要素もありホラー感もあり、今までと毛色の違うダークでヘビーなBLの今後の展開がこれからも楽しみで仕方がないです。

不完全で足りない2人が、お互い寄り添って補い合いながら少しずつ心を交わし、いつか本当に砂糖菓子のような甘い日常が来る日を、胸を痛めながら見守りたい。

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