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『海』行きたい。
『海』?なんでまた?
還りたくなるときあるっていうじゃん、『人間』
それ死ぬときじゃねえの。
『海』の事をさあ、『母』とかっていうの、なんでだろうな。
単純に広いからじゃねえか、
『海のように広い心で~』みたいな表現あるっていうじゃん。
『母』ってそういうことだろ。
おれはな、得体が知れないからだと思う。
あー…
言いたいことは、まあ、
みんなわかるもんなのかな。
どうだろうな、まあ少なくとも俺らより知ってるだろうな。
そうだね。
おまえは行きたいとこ、ないの。
俺?
うーん、別にねえな。
その辺うろうろしてるだけでも俺、なんも思わないし。
何年もしてて、本当に何も思わないの?
思わないから言ってんだろ。
てか気にする方がめずらしいだろ。
そうかなあ。
だってお前、ちゃんと『時間』とかわかってんの?
『今日』と『明日』とか、『去年』と『今年』とか
そういうの知ってんの?
知らないよ。
ほれみろ。
でも、変わってるじゃん。周りは。
おれらが変わらない間に、当たり前みたいに。
そりゃ当たり前だからな。
おれらには、おれにとっては、当たり前じゃないのに。
それもそれ自体が"当たり前"だろ。
お前にあるわけないんだから。
その"枠"はわかるのに、『時間』も『今年』もわからないのはなんでなんだろう。
……はあ、ほんとお前って、
変わってる?
まあ、異質ではあるな。
それはお前もわかってんだろ。
でも、おれからしたら、何も思わないほうが不思議だよ。
認識してるのに、なんで誰も…
お前な、俺らが『人間』をよくわからないみたいに、『人間』だって俺らのことわからねえだろ。
『犬』と『狼』も、同じじゃないって。
知ってる。
だったら…
ちがう、『人間』はおれらのこと、知ってるよ。
は?
この前『本』を見てる『人間』に名前をつけられた。
おまっ、姿見られたのかよ??
話もした。
あいつらと会話できんの?
できた。
……それで?
それでって?
いや、お前が気になってたことたくさんあっただろ。
聞けなかったのかよ。
『人間』と会話をしたこと、怒らないんだ。
怒ってどうにかなるもんじゃねぇだろ。
しかも、『人間』がどういうやつかを聞くんじゃなくて、おれが気になってたことを聞けたかどうかを聞くんだ。
あー、だって俺は『人間』に興味ねぇからな。
ふっ
なんだよ。
なんでもない。
『海』行かない?
…行かねぇよ。
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