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ロシア中銀の資産凍結は、ロシアだけじゃなくて欧米の銀行にも大打撃を与えている?

実はSWIFT制裁よりも、ロシア中銀の外貨準備凍結の方がダメージが大きかったという話。この事情が分かってる人からすれば、ここ数日のFXは誰でも儲かる相場だったに違いない……。

全員が面倒になるだけのSWIFTよりも、インパクトが大きくサプライズだったのはロシア中銀の外貨準備凍結である。

具体的にいうと、欧州の銀行を中心にして米ドルが一気に不足することになった

平時において外貨準備はグローバル金融市場で余資として運用されている。日本や中国の米国債運用などはよく話題になるがロシアも平時は運用側である。ロシア中銀は2022年1月時点で630 bnの外貨準備を保有しており、2割の金塊を除くとざっくり外貨500 bnとなる。うち200 bnは証券投資で運用され、100 bn強がブンデスバンクなど他の中央銀行に預金されている。民間金融機関への預金もあるだろう。300 bnがロシア国外で運用300 bnが短期運用に投資され、うち200 bnが米ドルのFX Swapで運用。FX Swapでロシア中銀から米ドルを借りている主体は(預金がある米銀は借りないので消去法的に)欧州銀が中心となる。ロシア中銀はFX Swapで米ドルを欧州銀に貸し出し、担保として交換されてきたユーロ等の低金利通貨をブンデスバンク等に預金して米欧金利差を稼いでいた。

→100bnにしろ200bnにしろ、ロシア外貨準備の凍結は世界中の米ドル資金調達体制に十分大きな穴を開けた

つまり、欧州銀自身が他所から米ドルを借りざるを得なくなった→さらに米ドル建てのCD/CP(短期の運用資金調達)が困難に

そしてFX Swapの米ドル流動性逼迫シグナルは、計算式で考えても借り手の代替調達手段を連想しても隣の市場に波及する

FX Swapの米ドル調達コスト高騰が米ドル建てCD/CPに波及する

企業側の資金調達も高いコストを払いながら長期化することになる。またコロナショックで実際に起きたように、米ドルの確保を急ぐ側としては短期資産を売れなくなった後に他の資産をぶん投げる順番になるかもしれない

流動性の危機が起きているのに潤沢な資産を積み上げてきたFRBは、これらを基本救済できない


Gov MMFが無リスクであるT-Billにさえ食指を伸ばさずデュレーションリスクに対して保守的に構えているなら、いわんやPrime MMFのクレジットデュレーションリスクをやである。
Fedが既に米ドル過剰な有担保市場に流動性を追加したところで、それは分断されている無担保市場への効果的な資金供給にならない。2020年に恒久化されたSRF(Standing Repo Facility)はドメスティックな有担保米ドル調達に対してセーフティネットを提供するが、FX Swapとは別世界にある

これによって、欧州側で信用リスクが発生してしまっている。

結果として、現在はEUR/USDの下落、そしてUSD/JPYの洒落にならない上昇といった現象が起きている

短期クレジット市場の修復は株や長期クレジットよりも遅れた。従って将来「戻らない」だけなら無視してもよいということになるが、今は(対策も見えていないので)まだドルファンディングは悪化している途中である。

こういう事情が見えている人たちにとって、ここ数日はFXってめちゃくちゃ簡単に儲かる相場だったんだろうなあ……


この記事については、理解できない点が多いので後で以下の記事も読みます

・FRA-OISスプレッド
・LIBORはCD/CPの利回りに連動する話。


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