株トークin 大阪 初心者セミナーのレポ(2/3) バリュー投資の基礎について

※1回目のnoteとバリュー投資の説明の間に本多静六の話がありましたがこれは(3/3)に回します。


さて、1回目では「初心者はまずETFから。ETFで基礎を身に着けたうえでさらに上を目指したい人が次にチャレンジするのがバリュー投資」というたーちゃんさんの話を紹介しました。
今回は「バリュー投資」の説明になります。

*バリュー投資の根幹 「価値があるものを価値より安い価格で買う」という投資哲学

①まず価値と価格の違いを意識しよう
 

価値=何かを買うときに手に入れるもの
価格=何かを買うときに支払うもの

ここを混同してしまうと「値動き」に翻弄されます。
値動きに価値がついていってるような錯覚をしてしまいます。

「価値」の中身を理解して「確実な価値よりも低い価格で買う」に徹するのがバリュー投資です。

②「安全域」=<自分が算定した価値よりもどれだけ安い価格で買えているか>こそが大事
これによって、普段の値動きに振り回されずに、価値の側に着目するという「健全な投資」ができる。とにかくバリュー投資では「企業価値」をどれだけ正しく見出せるかに力を注げばよい。


③じゃあその肝心の企業価値はどうやって算定する?

企業価値は単純化すると以下の3つに分けられる

・保有資産(解散価値)
・将来価値(将来の収益力)
・バイアス

このうち、確かな解散価値に重点を置くのがバリュー投資。
解散価値は厳しく厳しく見積もって、そのうえで安い!と思う株を買う。

*企業価値の算定1(まず資産価値)

④実際に解散価値を確認してみるワーク

当日のセミナーでは具体例として

 ◆瀧上工業(これはたーちゃんさんが以前からtweetされてた銘柄)
 ◆丸八HD
 ◆〇〇〇

の三社についてワーク形式で解散価値を算定するワークを実施しました。

⑤バリュー株投資については大きく2パターンの算定方法がある

・資産バリュー株(解散価値を自分なりの基準で計算)

・ネットネット株(グレアムが元祖。これを現在流にアレンジする)

詳細については以下のページなどを参考にしてください。

https://valuekabu.net/value-investment-netnet/
http://loosersgame.wp.xdomain.jp/2017/06/value-invest/

これらは本当に基礎的な話なのでいろんな人が実践しています。これを知っただけで勝てるようになる、などと勘違いしてはいけませんが、逆に言えばだれが計算しても同じになる数値をもとにしていてかつすぐに変わることがない資産をベースにしているので防御力は格段に上がります。


⑥バリュー株投資はひどく退屈


・そのままでは上がらない。安いのに放置されているのはそれなりに理由はある。
・何かのカタリストがあった時にはじめて買われる。
・割安だからという理由だけで買われるのを待つと5年~10年かかることも。
単に資産バリューがあるというだけでなくもうひとひねり必要

例えば有価証券報告書で経営指標を見て

 1:売上がきちんと伸び続けている
 2:従業員は増えていないのに売り上げが伸びている
 3:投資CFを確保した上でFCFが大きくプラスになっている
 4:キャッシュ回りが良い(売上回転率が良い)企業

といった要素を加味していく必要がある。

*企業価値の算定2(収益力のバリュー計算)

⑦様々な計算方法があり、実際にここの評価次第で株価にブレが生じる
 

・DCF法(金利をベースとした考え方)
・割引率で計算(どのくらいのリスクプレミアムを取るか?)
・成長率をベースにして将来価値を計算する。

詳細は説明しませんが、アナリストが書いている
α(国債金利)、β(リスクプレミアム)というのは割引率の話です。

いずれにせよ結論はそれほど大きくは変わりません。

・高成長企業なら「FCF」の15倍程度
・成長なしの企業なら「FCF」の8~10倍程度

が収益力によるバリュー算定になります。税金のことを考えてFCF=「ざっくり経常利益の6割」として扱う人もいます。


しかし、これすごく大事なのですが「収益力評価」に関しては個人がプロに勝つのは難しいです。プロがカバーしてない領域で探すならともかく、そうでないなら企業レポートを「目標株価を無視して」中身をしっかり見たほうがいいでしょう。その上で厳しめの基準で目標株価を算定しなおす作業を行いましょう。


⑧結局どういう株を持てばよい?


・営業利益率が10%以上(営業利益率が低い場合、PERはあんまり見ても意味がない) 
・営業CF>純利益(RIZAPはこの面で失格だったわけですね)
・上記二つを満たしたうえで、PERが一桁。

この3つの条件を満たした株を

「相場の下落時に買って」(ここが死ぬほど重要です!だからたーちゃんさんは先にバリュー投資よりも先にETFへの投資を通じて相場の下落時をつかむことを推奨していたわけですね) 
・「5~10年持ち続ける」

この二つが出来れば、安全域を維持しつつ、価値の水準まで株価が是正される(最近では同業他社による買収やTOBなど)タイミングで大きく利益を上げることができますし、そうでなくとも安心して配当を得ることが出来ます。


まとめ バリュー投資は「確実性」を重視する

最後に復習しておくと、バリュー投資というのは

・「現時点で確実に成長し続けている企業」が
・「価値より安く売られている時や市況の関係でたたき売られている時」に買って
・確実に株価の是正が起きる5~10年単位で持ち続ける

という投資法になります。

この逆は
・「将来成長するかもしれない」という不確実な要素に賭けたり
・「業績につながらないかもしれないがこのテーマやトレンドは大化けする可能性がある」という期待で
・現時点では価値よりも価格が高いものを売買する

といった投機的な手法になります。

私は後者が必ずしも悪いとは思わないです。これはこれでcisさんが言われていた順張りになっている間は期待値が高いです。また、バリュー投資をベースとして詳細な分析によって「確実性がどのくらいあるか」が分かっていれば、先読み投資は十分期待値で勝てるでしょう。

とにかくやってはいけないのは「全然中身わかってないけどなんとなくすごそう」「これはテーマ株だからいけるはず」くらいの理解しかないのに割高状態の株を逆張りで買うことです。日本の投資家は大部分がこういう投資パターンだそうです。twitterではこういう手法で勝ってる人が目立ちますがそういう人はマレです。マネするものはもっと難しいです。自分で詳細な分析ができないうちは、この投資パターンは負けやすいんだ、ということを理解しましょう。そして「確実性」の高い所からスタートして徐々に「不確実性」を克服していく、という風に段階を踏んで成長していきたいですね。

まぁそのなんだ。twitterの煽り銘柄、本当に危険だから少なくとも下げ始めてからは絶対に乗らないほうがいいです


というわけで、2回目でバリュー投資の「資産価値の算定」と「収益評価」まで終わりました。ここまで意識してほしいのはバリュー投資では「BS」と「過去数年分の業績推移」を重視しているということです。

ということで、

①今まで毎日株価やチャートをチェックされていた人
②PERとPBR、ROEくらいしか知らない人
③業績と言えばかぶたんの決算速報しか見てなかった人

などは、次の(3/3)に進む前にBSを通じて、自分が投資しようとしている企業だけでもBSやCFをチェックしてみてください。

最近は大手町のランダムウォーカーさんが毎週開催されている「会計クイズ」のように、初心者にも分かり易くBSを見ることの重要性やそこから何が分かるのか、を教える取り組みが始まっています。是非こちらも参考にしてください。

ここまで理解した上でようやく最後に「市場」の話になります。チャートやテクニカル、出来高といったテクニックの部分はこうした基礎ができた上でようやく見ていくものです。市販の株の教科書などは、ここまでの基礎固めの部分を軽視しがちなものが多いので、是非(1/3)(2/3)をよくよく確認した上で先に進んでください。




残りはおまけです。

⑨応用編1:四季報の活用

たーちゃんさんはセミナー中で、らうさんの「四季報読み」のポイント解説を絶賛されていました。

あえていうと、「ヤマダコーポレーション」はシクリカル銘柄であるため、理想を言えばシクリカルでない銘柄で同等の条件を満たすものを見つけたい、というお話をされていました。

⑩応用編2:バリュー株投資とテンバガー銘柄探しは実はつながっている

⑧がバリュー投資における「収益力評価」に基づいたスクリーニングの基本です。この原理がちゃんと理解できていれば、応用して5倍~10倍化する株を探すことが可能というお話をされていました。ただし、これは③~⑤の資産評価がしっかりできたり、⑧について原理を理解して収益力評価ができるという段階をちゃんとクリアしてからになります。

欲張っていきなりこちらの条件の株を探さないようにして欲しいと思うので、(3/3)か、その後の補足で改めて書こうと思います。

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