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【在宅勤務を快適に】中古マンションに家庭内VDSLでLAN構築した話

今回のテックブログは、在宅勤務におけるネット環境改善がテーマです。「ネットの接続が悪くてリモート会議が大変」という話、共感する方も多いのでは。要因のひとつとして、家の構造が絡んでいる可能性もあるそうなのです。知る人ぞ知るVDSLで、快適環境を手に入れた田森さんの試行錯誤の軌跡をどうぞ!

はじめに

メディア研究開発センターの田森です。

在宅勤務がメインになり1年半が経とうとしています。我が家は光回線も引けない古いマンションで、大元のインターネットもVDSLでの分配で結構非力なんですが、他にも様々な事情でWi-Fi環境も非力です。そこで、在宅勤務を快適にすべく、試行錯誤した記録を残しておきます。

我が家の構成

居間にインターネットの大元のルーターがあり、そこからWi-Fiが飛んでいます。インターネットのもともとの速度は、ルーターとPCを有線で接続し、対インターネットで速度測定すると平均して60Mbps程度です。

在宅勤務はそこから5m程度離れた部屋でしています。オンライン会議などをしていくとブチブチ音声が切れると苦情が…。速度を測定すると、平均して15Mbps程度、気づけばWi-Fiの電波強度もあまり良くないようです(Wi-Fiのアイコンで3本中2本、たまに1本という感じです)。

ルーターと部屋はそんなに離れていないのに、なぜこんなにWi-Fiが弱いのか。色々調べると、マンションが「壁式構造」という工法で建てられていることがわかりました。

(ご参考)

柱があまり無いかわりに、コンクリートの壁自体で建物を支える構造で、壁を叩いて確認すると、壁がいたるところコンクリートでできており、その壁がWi-Fiの電波を邪魔しているようです(どおりで画鋲も通らないわけです)。

このままでは厳しい在宅勤務になりそうだ…。築十数年の古いマンションのため、有線LANのコンセントが各部屋にあるわけではありません。有線LANを廊下におもむろに引くのが一番手っ取り早いのですが、景観上避けたい。一方で有線LANの工事をすることまではしたくない。長く厳しい?自宅内LAN構築が始まりました。

やったこと1: Wi-Fiのリピータ(中継機)設置

まず、Wi-Fi中継機を購入し、在宅勤務をする部屋に設置しました。これは、Wi-Fiの電波を中継し、より広い範囲でWi-Fiが使えるようにするものです。

しかしこれが微妙…。Wi-Fiの電波強度は強くなりました。これは、中継機から発信されているWi-Fiに接続しているので当然です。よく考えたら、ルーターから中継機のWi-Fiが非力なので、結局ここのボトルネックを解決しなければ意味がありません。速度測定しても、速度の改善はあまりありませんでした。

やったこと2: PLC設置

次の試行錯誤はPLCです。PLCとは、Power Line Communicationsの略で、100Vの電気を各部屋に供給する「あの」コンセント経由でLANを構築する、というものです。

(ご参考)

調べると、PLCには世代が色々あり、最新なのは第3世代というもので定格としては最大240Mbpsくらいは出る、少なくとも実測で50Mbpsはでているという報告もありましたので、購入してみることにしました。

PLCは、LANを引きたいコンセント間で、対向でPLCアダプタというものをつけます。それぞれのPLCアダプタは、電源コンセントに直接挿すための電源プラグが付いています。またPLCアダプタには通常のLANケーブルが挿せるようになっています。

ルーター付近の電源コンセントと、在宅勤務をしている部屋の電源コンセントにそれぞれPLCアダプタを挿した上で、PLCアダプタからLANケーブルを伸ばしてルーターとPCを接続します。注意点としては、電源コンセントの延長ケーブルなどにPLCアダプタを接続するのはご法度のようです。

緊張の速度測定…。なんと5Mbps。Wi-Fiよりも速度が低下してしまいました。PLCには延長ケーブルNGの他、同じコンセントにいろいろな電化製品が挿さっていると、それらが発するノイズが邪魔をするという報告もありました。他の電化製品を外したり、ノイズをフィルタするアダプタなども購入して試しましたが、速度の向上には至らず。原因は不明でしたが我が家ではPLCは向かないと判断し、利用は断念しました。

一筋の光

PLC設置を諦めてから3ヶ月。相変わらずギリギリの環境で在宅勤務をしていました。オンライン会議ではカメラはOFF、なるべく他のアプリは落とす、などしていました。

我が家にはLANコンセントはありませんでしたが、気づけば電話線のコンセントが各部屋に2口あります。我が家は中古物件。前のオーナーが自宅で自営業っぽいことをやっていたと聞いていたので、おそらく電話が2回線必要だったんだろうな、と普段から思いを馳せていました。

ふと、この電話線のコンセントをうまく利用できないかーー。そんなことを思いました。この電話線をLANケーブルに交換すればいいじゃないか!

しかし、電話線コンセントを外したり、屋根裏の配線などを確認しましたが、素人が太刀打ちできる感じではありません。筆者は一応工事担任者の資格を持っていますが、ペーパー担任者なので、そんな工事もできません。

じゃあ電話線そのものをLANにできないのか、ああそれってVDSLそのものか、というところまでは考えが及んだものの、VDSLってインターネットの大元と家庭をつなぐ、インターネットプロバイダーが使うものという先入観がありました。

ダメ元で調べてみたところ、某通販サイトに「イーサネット・オーバー・VDSL2コンバータ」なるものが売っているではありませんか!これはPLCと同じ様に、上流、下流2箇所の電話線コンセントにこちらのコンバータを接続してイーサネット(LAN)を構築できるものです。

やったこと3: VDSLコンバータ設置

ただこのVDSLコンバータ、結構値が張ります(対向2台で3万円くらい)ので、購入の前に下調べをしました。ケーブルテスターを購入して、居間とターゲットの部屋間の電話線がつながっているかを確認したり、ブログなどを確認して成功例がどのくらいあるかなど確認したりしました。ただ事例はあまりなく、結局はエイヤッと購入することとしました。

設置はいたって簡単でした。上流と下流の2台のコンバータに付いているスイッチを「上流」「下流」にそれぞれ設定して、電話線でそれぞれのコンバータと電話線コンセントを接続、LANケーブルでルーターと上流のコンバータ、下流のコンバータとPCを接続するだけです。

接続完了のランプが点灯後、Wi-FiをOFFにして速度測定すると、50Mbps近く出ている!ほぼ、ルーター直挿し程度のスピードが出ました。

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VDSL saves the day!

VDSLコンバータを導入してからというもの、オンライン会議の苦情が出ることもなくなり、ネットワーク環境はほぼ問題なくなりました。PCはすべて有線接続に変更できたので、ネットワークストレージへの接続やバックアップもスピードアップするという副作用もいい感じです。ただ、特定のオンライン会議サービスとは何故か相性が悪く、その時だけWi-Fi接続に切り替えています。

(あまりないかもしれませんが)電話線のコンセントは各部屋にあるんだけど、有線LANが接続できない、Wi-Fiのスピードが思うように出ない、という方はぜひお試しください。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

(メディア研究開発センター 田森)