【8コマ人類史】中世ヨーロッパの「偉大な順ランキング」でわかる人間のエゴとは?
中世ヨーロッパで流行したスコラ哲学の学者たちは、ライトノベルの設定のようなことを大真面目に考えていました。
この世のすべての存在は、高等なものから下等なものへと階層を形成していると考え、石ころから天使に至るまで「偉大な順にランキングしてみた」のです。
結果は、1位が天使、2位が人間、3位は人間以外の生物、4位が無生物。1位の天使はさておき、21世紀においても、多くの人がこれと同じような感覚を持っているのではないでしょうか。
「人間は、全生物の中で最も優れている」
そう考えていたのは、哲学者だけでなく、進化論者も同じです。チャールズ・ダーウィンが『種の起源』を発表する前から進化論を主張していた社会学者のハーバート・スペンサーは、すべての生物が時間の経過とともに、より高次の存在へ進化していくと考えていました。
つまり、原始的な魚類よりも、新しい時代に登場したヒトのほうが生物として優れている、と考えていたのです。
しかし、進化によって、生物は必ずしも「進歩」しません。
例えばウマは、力強く地面を蹴って走れるように指の本数が減って1本指に進化しました。そのため手で物をつかんで運ぶことはできません。
同じくヒトも、サルから進化する過程で走るのが遅くなりました。
このように進化には、「発達」(大きく、複雑になること)だけではなく、「退化」(小さく、単純になること)を伴います。進化とは、「生息環境に適応して体の構造が変化すること」であり、進化を繰り返すほど優れた生物になるわけではないのです。
このことに気づいていたダーウィンは、『種の起源』の中で、進化を表す言葉として「世代を超えて変化が伝わっていくこと(descent with modification)」という表現を用いています。しかし皮肉にも、世間に浸透した「進化」は、スペンサーが広めた「evolution」。「進化は、進歩」という考え方でした。
そして、ヒトである私たちの種の学名を「ホモ・サピエンス」と言いますが、属名の「ホモ」は「ヒト」、種小名の「サピエンス」は「賢い」という意味です。つまり「ホモ・サピエンス」は「賢い人」。「万物の霊長」は「万物のなかで最もすぐれたもの」の意味で、「人間」を指して使われます。
やっぱり人間ってちょっとエラそう……?
(構成/ライター 澤田憲、生活・文化編集部 野村美絵)