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「モデルみたい」はもはや褒め言葉ではない! 時代錯誤な“残念な人”にならないために気をつけるべき視点

 理不尽な言動で周囲を振り回す“アホ”との付き合い方を伝授した、シリーズ80万部突破のベストセラー待望の最新作『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)が発売された。コロナ禍を経て、さらにパワーアップした「アホ対処法」を、同書から一部を抜粋して解説する。今回のテーマは「日本人の物の見方の危うさ」について。
(タイトル画像: designer491 / iStock / Getty Images Plus)

田村耕太郎著『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)
田村耕太郎著『頭に来てもアホとは戦うな! 賢者の反撃編』(朝日新聞出版)

 アホがアホである理由のひとつに、考え方が硬直していることがある。一つの視点でしかモノを見られないため、他人の意見を受け入れられず排除しようとする。

 例えば、『トップガン マーヴェリック』のあるシーンでトム・クルーズがバーからたたき出されるシーンである。昔付き合っていた女性に対して「相変わらずきれいだね」といった瞬間の話だ。この発言が女性蔑視とされ、罰を受けて訓練生たちにたたき出される。

 ここを理解できる人が日本人にどれだけいるだろうか? 容姿の美醜について自身のバリューでジャッジして口に出すことは蔑視になるのだ。

 背の高いやせた若い人に対して「“モデルさん”みたい」「“女優さん”みたい」という発言をしてしまう人がいるが、ほめているからいいだろ、というものではない。それで怒られるわけではないが、少なくとも「残念な人」になってしまう。

 特にZ世代以下にはそうだ。モデルとか女優とかみたいにみられることをうれしく思わない、どちらかというと、嫌な人も結構いる。あなたが言われたいように、皆が言われたいわけではないのだ。

 アメリカ人や東南アジア人など、国籍で括ることも気を付けた方がいい。2021年に帰国した際、日本のスポーツ番組をみていて、大谷選手とアーロン・ジャッジ選手、MLBアメリカンリーグでのMVP争いの解説を聞いてぶったまげた。元日本のプロ野球選手の解説者が、「今年はアーロン・ジャッジでしょう。アメリカ人はなんといってもパワーが好きですから」と真顔でいっていたのだ。

 まずこの人はMVPがどうやって決まるか知っているのだろうか? そしてアメリカ人とは誰のことだろうか? パワーが好きというのはどういうデータに基づいているのか? 

 そもそもジャッジ選手の名誉のためにいっておくが、彼はパワーだけでホームランを打っているのではなく、配球を読む頭脳もあり、広角に打つ技術もある。

著者の田村耕太郎さん(撮影:小原雄輝)

「外国人」や「アメリカ人選手」などと日本の解説者は雑に言うが、多くはドミニカ人だったりプエルトリコ人だったり出身地も色々だ。彼らが日本の解説者によって無責任に「アメリカ人」だと言われているのを知ったら怒る選手もいるだろう。皆母国にプライドを持っているから。

 MLBの中でも投球・打球速度も飛距離もトップクラスの大谷選手の登場で、日本人解説者も「あれは日本人にはまねできない打球です、投球です」とか言えなくなったが、根拠のないステレオタイプ化は一度や二度は許されるが、お里がしれてやがて信頼を損なってしまうことを忘れてはいけない。

 多くの日本人は、自分たちのことを繊細だと思っているかもしれない。もちろん、そういう一面もあるが、ある意味鈍感で無神経だとも思う。配慮があるようで配慮が全く足りないところもある。

 ステレオタイプに人をジャッジしたり決めつけてものを言ったりしてはいけない。こんなことをいうと「物が言いにくい時代になった」とかいう人がいるが、違いに無神経でリスペクトがないだけである。そういう人は、日本人の中でもいろんな人がいるのにそういう人にも失礼な物言いや対応をしているのだ。

 私たちのステレオタイプなものの見方は根本から疑う必要がある。男性や女性と割り切れない人もいるし、同性が好きな人もいる。食べ物だってわれわれがおいしいと思うものを、皆が本当においしいと思っているわけでもない。笑うところやきれいだと感じる感覚も怒るポイントも違う。

 自分のバリューで相手を褒めていることになっているのだから何を言ってもいいというわけではないのだ。相手に何か言いたいならもっとよく観察して誰からみてもフェアで正確だと言える形で表現してあげることだ。

 これもできないならまさしくアホである。国内で日本人同士であってももっと必要なことだ。本当のリスペクトを学ぶ第一歩はステレオタイプをやめることである。

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)
1963年、鳥取県生まれ。国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授、一橋大学ビジネススクール客員教授。カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュートフェロー。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院、オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券に入社。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年から10年まで参議院議員。第一次安倍政権で内閣府大臣政務官を務めた。その後、イェール大学フェロー、ハーバード大学リサーチアソシエイト、ランド研究所で当時唯一の日本人研究員を歴任。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。14年より、国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営。 カリフォルニア大学サンディエゴ校でもアメリカ地政学プログラムも主宰。世界のスタートアップに投資するエンジェル投資家でもあり、Web3.0、フードテック、教育関連中心に投資を行う。シリーズ87万部突破の『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など著書多数


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