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チャンス大城が圧倒された、明石家さんまの鋭い反射神経と人間的な優しさ

 お茶の間の記憶に残る男としてTV出演急増中の芸人・チャンス大城(本名:大城文章)さん。そんなチャンス大城さんが自らの半生を赤裸々に語り下ろした『僕の心臓は右にある』(2022年7月刊、朝日新聞出版)から、明石家さんま師匠にカラオケではじめて会ったときのエピソードを、本文から抜粋、編集して紹介します。(写真:朝日新聞出版 写真映像部・東川哲也)

大城文章著『僕の心臓は右にある』(朝日新聞出版)

 お酒をやめ、勝手にコンビニのトイレ掃除や、道の吸い殻拾いを始めてからしばらくたったとき、スピードワゴンの小沢君から電話がかかってきました。

「いま、六本木でカラオケやってるんだけど来ない?」
「えっ、行ってもええの?」

 小沢君に教えてもらった住所に向かうと、そこはカラオケ店といっても、尼崎で友達と通っていたような店とはまったく違う、超高級店でした。

 フロントに行くと黒服のお兄さんが、個室まで案内をしてくれました。個室のドアを開けると、中には10人ほどの男女がいてすでに盛り上がっています。

「あっ、××さんもおる。◯◯さんもおる。売れてる人ばっかりやー」

 部屋の一番奥の隅っこの席に、帽子を目深に被った人が壁に背をもたせかけて座っていました。

「誰やろ?」

 目を凝らして見ると、

「あーーーーーーーっ、あーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 僕は思わず、その人を指さしながら絶叫してしまいました。

「自分、初対面の人間のこと指さして、なんやねん」

 声の主は、紛れもなく明石家さんま師匠でした。

「チャンス大城と申します。よろしくお願いします」
「仁義なき戦いって、なんやねん」

 その日、僕はたまたま仁義なき戦いのTシャツを着ていたのでした。ありがたや、さんま師匠は爆笑してくれました。

 初参加の僕に、その日のメンバーが自己紹介をしてくれることになりました。

 タレントの卵だという若い女性が、最初に挨拶をしてくれました。

「アサミと申します」
「チャンス大城です。珍しいお名前ですね。マンガの『あさりちゃん』と同じ名前なんや」
「アサリじゃないよ、アサミちゃんだよ。何言ってんだよ」

 メンバーのひとりに、すかさずツッコミを入れられてしまいました。個室の中に微妙な空気が流れました。するとすかさず、さんま師匠がこう言ったのです。

「ほな、隣はシジミちゃんでな」

 このひと言で、変な空気を一瞬で消してしまったのです。

 僕は師匠の反射神経の鋭さと人間的な優しさに、ただただ圧倒されてしまいました。

「誰か、牛丼食べへんか」
「食べます」
「ほな、俺とチャンスと二人前や」

 黒服のお兄さんが、牛丼をふたつ持ってきました。

「俺、お新香食われへんから、おまえ食うとけ」
「おかんに、さんま師匠からお新香もらったって自慢しときます」

 さんま師匠は、ちょっとだけ笑ってくれました。


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