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ガラクタおもちゃの国

こちらは海見みみみさん企画の『第1回noteショートショートフェスティバル』参加作品です(*^.^*)
ルールはコチラ♪
なお、この企画ではコラボが推奨されています(^-^)
もし私のこの作品を読んで、イラストや音楽などイメージが浮かんだという方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひコラボしませんか!?(^_-)☆

SSF参加2作目となるこの作品は、既出のリメイクになります♪
既出といっても、noteにUPした時は”ラジオ童話”という形でした(^-^)

で。その時のシナリオを2000字以内になんとか削り、
今回の応募作品とさせていただくことにしました(^-^)
(単にアイディアが浮かばなかったから…というのはここだけのヒミツw)

言い回しの変更や削除された箇所もありますが、よろしければ上記のラジオ童話も併せてお楽しみいただけると、雰囲気や世界観などをより感じ取っていただけるのではないかと思います☆彡

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「この空缶で何か作って!」
今日も街外れの土手で、子どもたちが登(のぼる)おじさんを囲んでいます。
「ようし! その紐を取ってくれないか」
おじさんは得意そうに眼鏡をずり上げました。
登おじさんはガラクタをおもちゃに変える天才なのです。
子どもたちが興味深々で見ていると、大小さまざまな缶をまとめて紐でくくり、あっという間にドラムセットを作ってしまいました。
「この棒切れで叩いてごらん」
「わぁ!」
子どもたちは、われ先にとドラムに群がりました。

登おじさんは夕方まで会社に勤めています。
エリート社員ではないことは、くたびれたスーツが物語っています。
それもそのはず。
おじさんにとっては、会社で書類と睨めっこするよりも、こうして子どもたちとおもちゃを作って遊ぶ方が、ずっとずっと楽しいことなのでした。

登おじさんが作ったおもちゃでみんなが順番に遊び終える頃、太陽は重く地平に沈み、子どもたちは一人ずつ帰っていきます。
母親が迎えに来る子、おじさんの腕時計を見て慌てて駆けてゆく子。
そんな中、いつも最後まで残っている子がいました。
哲也です。
哲也の両親は離婚して、母親が夜中まで働いているのです。
「また僕が最後だ……」
遠くまで伸びた影を見つめる哲也の頭を撫でながら、
「おじさんも子どもの頃は鍵っ子だったから、おもちゃが一番の友だちだった。昔は木の枝や草や石で、おもちゃを作って遊んだんだよ」
登おじさんはよく、自分が子どもの頃の話をしたものでした。

ある日のこと。
哲也は小学校の帰り道、いつもはまだいないはずの登おじさんが、土手にぽつんと座っているのを見つけました。
「おじさん、今日は早いんだね」
「あぁ。今日からはもう、朝から晩までみんなと遊べるんだよ」
おじさんはその日、会社の偉い人から“もう会社に来なくていい”と言われたのでした。

「さぁて、今日は何を作ろうかな?」
二人はゴミ置き場から、たくさんのガラクタを拾ってきました。
三輪車の輪っか。
お鍋のふた。
ベニヤ板にダンボール箱……。
「おじさん! 車を作ろうよ!! 僕ドライブ行きたい。ずっと連れて行ってもらってないんだもん!」
「そうだな。じゃあ二人乗りの大きいのを作ろう」
登おじさんは一番大きなダンボールを見つけて組み立て始めました。
「どこへ行こうかな?」
哲也もわくわくしながらそれを手伝います。

「よし、できた!」
完成した車はちゃんと車輪もハンドルもあって、クラクションの代わりにチリリと鳴るベルもついています。
「運転してもいい?」
「もちろん!」
哲也が前の席に座り、おじさんが後ろに立って、さあ出発です。
おじさんがゆっくりと地面を蹴ると、車はゆるい土手の斜面を滑るように走り出しました。
「ひゃっほう!!」
哲也が手を叩いて喜んでいます。
「いいぞ!!」
スピードがみるみる上がっていきます。

と、その時。
「ぶるるるるー! ぶぶぶぉーーーん!!」
高らかなエンジンの音とともに、車は水面を石蹴り石のように跳ねたかと思うと、川を渡りきって反対側の土手を勢いよく上り始めたのです。
「わぁっ! 滑走路みたい! すごいね、おじさん!!」
哲也が振り向くと、そこにはおじさんではなく、哲也と同い年くらいの男の子がいました。
「キミは?」
男の子は何か言いかけましたが、その瞬間、
「あっ!! 飛んだ!!」
車はすうっと空に吸い込まれるかのように舞い上がりました。
「僕は登だよ。よろしくね!」
大きな眼鏡をずり上げながら、後ろの男の子は笑いました。

二人はおそるおそる街を見下ろしました。
「うわぁー!」
それ以上の言葉が見つかりません。
なぜならそこは、工場もビルも学校もない、ガラクタおもちゃの国だったのです。
木彫りの人形が笹舟から手を振っています。
小石たちは澄んだ音を響かせながら、おはじき遊びに夢中です。
「あれは全部、僕が作ったおもちゃだよ」
登が嬉しそうに言うと、ダンボールの車はゆっくり円を描きながら地面に着地しました。

「ガラクタおもちゃの国へようこそ!」
二人は住人たちから大歓迎を受けました。
お鍋の太鼓に合わせてホウキの人形がフラダンスを踊り、折り紙の動物たちも、粘土の動物たちも、みんな仲良く手をつないで、パレードもとても賑やかです。
「ねぇ、これはどうやって遊ぶの?」
哲也が手渡したものを、登は慣れた様子で手のひらに挟みました。
「こうやってひねって、パッと離すのさ。竹とんぼっていうんだ」
「ようし! じゃあ、地面に点数を書いて、竹とんぼが落ちた場所で競争しよう!」
二人は交互に竹とんぼを飛ばし始めました。
登がおもちゃの使い方を教えると、哲也がそれを元に遊び方を考え出します。
するとまた登がアイディアを出し、哲也も一緒になって考えます。
いつまでも日の暮れない国で、二人の遊びはいつまでも尽きることがありませんでした。

そしてその日以来、街外れの土手に、登おじさんと哲也の姿が見られることは二度となかったそうです。

                              fin

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