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ウマ娘が野球をやったらどうなるか?

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 毎度、札幌在住ホークスファンのネイチャの彼氏兼モルモット君です。小倉レース場○のネイチャはきっと鷹党。
 いざゆーけー無敵ーのー若駒軍団ー。
 千賀ー! グラシアルー! モイネロー! 唯斗ー! はやくかえってきてくれー!

 さて、野球オタ兼二次元作品オタなら、好きな作品で絶対に一度は考える「○○で野球」ネタ。野球回のあるアニメが名作かどうかはともかくとしても、『CLANNAD』みたいに作中でそれを実際にやってしまった作例もあるわけで。
 今回は「ウマ娘が野球をしたらどうなるか」を考えてみろ、というお題をいただいたわけですが――。

 時速60kmで走るウマ娘が一塁に全力疾走したら人間と比べて一塁到達タイムがどれだけ短くなるのか、平然と車を持ち上げる(参照:キタサンブラックのサポートカードイベント等)ウマ娘の腕力で投球や打撃を行ったらどうなるのか。
 バッティングに関しては単純に腕力があればいいというものでもないので置いておくとして、「ウマ娘の脚力で走塁をしたら野球は成立するのか」をちょっと考えてみましょう。
 といっても別にスポーツ科学の人間でもないので、真面目で専門的な話にはなりようがありません。
 というわけで、既存の数字を基に死ぬほど雑に計算してみましょう。

 野球のダイヤモンドの大きさは、マウンドからホームベースまで18.44m、塁間27.4m、ホームから二塁まで38.8m。ソフトバンクの周東佑京が2020年に記録した一塁到達タイムの最速が3秒50なので、トップスピードに乗るまでの加速とか抜きにして単純計算するとだいたい時速28kmで走っている計算になります。
 ウマ娘がこの倍のスピードで塁間27.4mを走れるとすると、一塁到達タイムは2秒を切るでしょう。実際は1200m以上を時速60kmで走る身体であるウマ娘がたかだか27.4mでトップスピードに乗れるかという疑問はあるにしても、それでも根本的に出せるスピードが違う以上、塁間を走るのに2.5秒(時速39km)以上かかることはなさそうです。
 走者が一塁から二塁へ盗塁を仕掛けたとき、投手がボールを投げ、捕手がそれをキャッチして二塁へ送球、二塁手が走者にタッチするまでの所要時間はプロ野球で平均3.6~3.7秒だそうですから、塁間を2.5秒で走られたら盗塁し放題、盗塁成功率は100%でしょう。その前にゴロを打てば結構な確率で内野安打になりそうです。ピノかな?

 では、投げる方もウマ娘であれば?
 捕手の送球速度はだいたい120km/hだそうです。投手が150km/hの直球を投げ、捕手が120km/hで二塁送球したとすると、投げる動作を除いた、ボールが空中にある時間はだいたい合計で1.6秒。前述の通り投球・捕球・タッチの動作で2秒ほどかかるわけで、この動作の時間は削れないと考えると、塁間2.5秒で走る走者を刺すには投手と捕手が0.5秒でボールをマウンドからホームベースを経由して二塁へ送らないといけません。
 つまり18.44+38.8=57.24mを0.5秒ということは、要求される球速は412km/h。はい、いくらウマ娘でもこれは無理ですね。

 では、ウマ娘の投球・送球動作の所要時間は人間と同じ、塁間は時速40kmで走るとした場合、釣り合いの取れる投球・送球速度と塁間距離は?
 人間が塁間を走る時間の3.5秒を、ウマ娘が時速40kmで走った場合、塁間は38.36mになります。塁間38.36mのダイヤモンドを想定すると、ホームから二塁までは54.24m。割合を同じとするとマウンドからホームベースまでは25.78mになります。
 この合計80mを1.5秒でボールが行き来するのに必要な球速は192km/h。まだあんまり現実的じゃありません。

 今度はじゃあ塁間を4秒走ってもらいましょう。塁間44.4m。ホームから二塁までは62.8m。マウンドからホームまでは29.8m。92.6mを2秒で行き来するボールは166.68km/h。おお、人間でも出せそうな数字になりました! だいたい投手が球速200km/h、捕手が球速160km/hを出せばいい計算です! ウマ娘の身体能力をもってすれば決して出せない数字ではないはずです!


 ……いや、待ってください。ウマ娘のスピードで、44.4mを走るのに時速40kmというのはあまりに遅くありませんか? 1000mを1分で走るウマ娘です。レースでの時速60kmには及ばずとも、時速50kmぐらいは出ていないとおかしいはずです。

 再計算しましょう。
 人間が塁間を走る時間の3.5秒を、ウマ娘が時速50km/hで走った場合、塁間は48.6mになります。塁間48.6mのダイヤモンドを想定すると、ホームから二塁までは68.7m。割合を同じとするとマウンドからホームベースまでは32.6mになります。
 この合計101.3mを1.5秒でボールが行き来するのに、必要な球速はだいたい243km/h。まだあんまり現実的じゃありません。

 今度は再び塁間を4秒走ってもらいましょう。塁間55.5m。ホームから二塁までは78.5m。マウンドからホームまでは37.3m。115.8mを2秒で行き来するボールは208.44km/h。お、ちょっと現実的になってきました。そうか?

 もういっそ塁間を5秒かかるようにしましょうか。塁間69.4m。ホームから二塁までは98.1m。マウンドからホームまで46.6m。144.7mを3秒で行き来するボールの速度は173.6km!
 おお、さっきの数字にかなり近付きました! これもだいたい投手が球速200km/h、捕手が球速160km/hを出せばいい計算です!


 ということはつまり、ウマ娘の脚力で野球を成立させるためには、塁間が70m以上、ホームから二塁までの距離が100m以上あればいいということになりそうです!!! ということは既存の野球場のセンターフェンス手前に二塁ベースを置くと良い感じですね!
 バッターは50m先から飛んで来る時速200kmのボールを打ち返し、70m先のベースへ5秒以上かけて全力疾走します。70m四方のダイヤモンドに散らばった内野手は5秒以内に打球を拾って一塁に送球!
 ――できるかバカ! バントされたら終わりじゃい!


 いや、考え方を変えましょう。塁間70mの野球では、投手が投げる位置は従来の野球の二塁ベースの位置よりさらに8m後方です。
 ということは、一塁手と三塁手はそのまま塁につくとして、残りの野手のポジショニングは根本から考え直した方がよさそうです。
 二塁ベースが従来の野球でいうとセンターの深めのあたりに位置するわけですから、つまりセンターが二塁について、ライトとレフトが従来の野球でいう二塁手と遊撃手のポジション(一・二塁間と二・三塁間)につくことになります。
 ということは、二塁手と遊撃手が二塁に入る必要はありません。つまり二塁手と遊撃手は、元々の守備位置にあたる場所――このクソデカダイヤモンドにおいてはマウンドより10m前後手前にポジショニングすればいいことになります。
 おお、つまり投手・一塁手・三塁手の位置を変えるだけで、残りの野手の位置は動かさなければ野球になりそうです!

 このクソデカダイヤモンド野球では、外野という概念が存在しなくなるので、内野の外まで打球を飛ばせばだいたいホームラン。ランナー1・2塁でフライを打つとほぼインフィールドフライです。ランナーを三塁に進めても、塁間を走るのに5秒かかるのに野手が180km/hの返球をしてくると考えるとほぼタッチアップは不可能でしょう。そして野手全員がウマ娘の脚力なので、守備範囲は人間よりだいぶ広くなるはずです。
 ということは、フライを打つメリットはホームラン狙い以外にありません。ホームラン以外のフライはほぼアウトになると考えた方がよさそうです。ということはひたすらゴロを打って脚力で引っかき回すのが正攻法。つまりセーフティバント一択ということになります。しかしそうなれば二塁手と遊撃手は思い切り前進守備をとってセーフティバントを潰しに来ます。打者はうまくその前進守備ふたりの頭を越えて、二塁ベースとの間に――いや、そこには投手がポジショニングしていますから、よほど上手く野手のすぐ後ろに落とさないと捕球されて終わりでしょう。
 そして塁間が70mもあるので、一塁線・三塁線の当たりは高確率でファールになるか、フェアでも一塁手・三塁手の守備範囲に来る頃には勢いがだいぶ死んでいるはずなので、これもほぼヒットにはならなさそうです。
 ということは、打者にとってヒットコースは前進守備の二塁手・遊撃手の間を破って、46m先の投手に捕られないゴロを打つしかなく……無理じゃね?
 はい、ゴロで引っかき回す戦法は野手のポジショニングでだいたい潰せてしまいそうです。となれば、あとはその腕力でホームランを狙うしかありません。つまりホームランか三振かの野球になり、走力はあんまり意味がなくなります。……あれ?


 はい、クソデカダイヤモンドではゲームバランスを保つことは難しそうです。つまるところ、人間の身体で時速60kmを出すウマ娘の脚力では野球というスポーツが成立しそうにありません。

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 しかし、このテイオーとマックイーンの会話が示すように、ウマ娘が草野球をやるという文化はあの世界に存在するようです。マックイーンが趣味にしている野球観戦は人間の野球でしょうが、少なくともテイオーもマックイーンも「自分たちウマ娘が野球をやる」こと自体に疑問を抱いている様子はありません。
 ということは、ウマ娘でもできる野球がこの世界には存在することになります。しかし、ウマ娘の脚力は野球というスポーツのバランスを完全に破壊してしまうのは上で見てきた通りです。
 さらに、ウマ娘の世界におけるウマ娘の人口は決して多いわけではないはずです。実際の日本の競走馬の生産頭数と同程度だとすれば年間約7500人。日本の出生数が87万人なので、単純計算で人口の120人に1人がウマ娘と計算できます。つまり日本には約100万人のウマ娘人口があることになります。
 日本の野球人口は諸説ありますが、笹川スポーツ財団のサイトによると約384万人。単純計算でいえば人口の3%強、ウマ娘には3万人の野球人口がいる計算です。しかし本能的に走ることが好きでトゥインクル・シリーズを目指したがるウマ娘の中で、わざわざ野球をやろうというウマ娘は余程の物好きではないかと思いますから、実際は100万人のウマ娘の中に野球人口がどれだけあるかというと、かなり心もとないのではないかと思います。もちろん身体能力が違いすぎますから、人間の野球に混ざってやることもできないでしょう。野球をやるには最低18人必要です。その18人を集めるだけで現実的にはかなり困難でしょう。

 しかし、テイオーはマックイーンを野球に誘っています。
 つまり、ウマ娘がやれる野球がこの世界には存在するはずなのです。

 ウマ娘の身体能力をもってしてもバランス崩壊しない野球。
 少ない競技人口でもできる野球。
 そんな野球がこの世に……。





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 ……ん? こいつらバッティングの話しかしてねえな?
 しかしテイオーが審判を探しているということは、バッティングセンターに行くのではなく、あくまで試合形式の野球をしようとしているということで……。
 バッティングだけで出来る野球の試合? そんなものが――。





 ありました。
 投球も走塁も必要ない、ウマ娘と人間でそこまで大きな差がつかないであろうバッティングだけで競い合える、立派な野球が――。









 

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