夢の話
夢の中でずっと、私は起きていました。
街灯の下でずっと、あなたが眠るのを待っていました。
白いものがちらちらと、光の輪郭を見せるので、
雪かな、と思ったのですが、
それは、まるく膨らんだ花がはらはらと、
散っていく姿でした。
細い枝は三羽のカナリアにゆらされ、
まるで手を伸ばせばあなたの髪に触れそうな香り。
カナリアたちは、
ほうしゃれいきゃく。
と、鳴いて、黄色い体を闇の中へ溶かしました。
私の爪先は冷えて、かたくなってしまうので、
マーチの足踏みをしながら、
目の前の道を、不揃いな間隔で走る自動車を数えました。
こつこつと、響く足音、
冷たく真っ直ぐなライトが、
目から私の喉へと、
胸からお腹へと。
100台目の自動車が通り過ぎ、
(あれはたぶん、ブルーバード)
エンジンの音も遠く離れた後で、
月に照らされた雲の隙間から、すっと、金色の小さな星が、落ちていきました。
あなたのまぶたはいま、とじられたのですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?