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コント台本 岡山県議会

Aスーツを綺麗に着ている。Bスーツの第一ボタンを開けている。Cスーツを綺麗に着ている
Dスーツを着崩している。

 (席が四つ。席の左側に答弁台がある。)
 (Aのみ板付きで座っている)
 (C、登場)

Cすみませんお待たせしました。はいこれ、資料です
Aありがとうございます。わざわざ印刷していただいて
Cいえいえ大丈夫ですよ
Aそれにしても遅いですねあの二人は
Cまあいいじゃないですか、ちょっとくらい

 (B、登場)

AちょっとBさん、4分遅刻ですよ
Bいいじゃないですか。4分くらい
A4分でも立派な遅刻です。早く座ってください
B細かい人だな

 (D、登場)

Dいやあ、すみません お待たせしました
AちょっとDさん、5分遅刻ですよ!(腕時計を確認して)
Dごめんなさい、すみません。(BとCにも頭を下げる)
Dいやあ、それにしても今日は天気が良いですね
C午後から雨降るみたいですよ
Dええ嘘だあ、どうせ降らないでしょう
Aいいから座って!

 (全員、着席)
 (A、立ち上がる)

Aえーこれより、第32回 岡山県議会を開会致します 。本日、議長が体調不良で欠席の為、進行は私、Aが務めます。それでは初めに出席議員の確認を行います。お名前を呼ばれた方はご返答ください。

A C君
C(手を挙げて)はい。
AB君
B(手を挙げずに)はい。
A D君
Dはい元気です。

 (A、Dを睨む)

Aそれでは、本日の議事に移りたいと思います。現在、岡山県の財源は窮地に陥っており、この状況を打破するため、県外からの観光客の増加を目論んでおります。
Dそうですね
Aその為に我々は、観光客を呼ぶための策を講じなければなりません。
Bその通り
Aそして一月前、岡山県が発祥の地であります、昔話「桃太郎」を改造し、新しい桃太郎、新「桃太郎」を作ることが決定致しました。本日の議会は、その具体案を各自発表することと致します。
Dあのーすみません
Aなんでしょう
Dこれ、企画のプロに頼んだ方が良くないですか?
Aだからそれはできないんですよ
Dなんでです?
A予算がないからですよ この間も言ってたでしょう。ちゃんと話聞いてください
Aえーそれでは、、誰からいきましょう、、
B私が
AではBさん、お願い致します。

 (B、答弁台へ)

Bえー私は、昔話の桃太郎を今風に作り替えた、現代版「桃太郎」を作成しました。
Cなんか良さそうですね
Dねえ
Bこちらご覧ください

 (スクリーンに紙芝居形式で何枚かの画像が映し出される)
 (Bの語り)

B現代版、桃太郎。
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。毎日おじいさんは、家で株式投資を、おばあさんは趣味の生け花をいっていました。
Aん?
B二人が川の見える別荘でくつろいでいると、川上から大きな桃が一つ、どんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。「おやおや、これは見事な桃だこと。おじいさんへのお土産に、どれどれうちへ持って帰りましょう。」そう思ったおばあさんは、すぐに召使いを呼びよせ、桃を持って来させました。仕事を終えて帰ってきたおじいさんに、おばあさんはこう言いました。「ほらご覧なさい、この桃を」おじいさんは言いました。「ほほうこれは、見事な桃だこと。株主優待かい?」
Aちょっとごめんなさい!
Bなんです?
Aなんです?じゃないでしょ あんた!なんなんですかこれは!
B現代版桃太郎ですよ
Aこういう事じゃないでしょう!
Bそんなの知らないですよ
D僕は好きです、続けてください
B「いえいえ、株主優待ではありません。今日、川で拾ってきたんですよ。」『おやおや、それは珍しい」おじいさんは言いました。二人が桃を眺めていますと、ポンと中から二つに割れて「オギャアオギャア」と子供が飛び出しました。おじいさんとおばあさんは大層喜び、この子に「桃太郎」と名付けました。 ここまでで第1章です。
Aもうやめませんか
Dいや面白いですよ。ねえCさん?
Cはは、まあ(苦笑い)
Bおじいさんとおばあさんの元ですくすく育った桃太郎は、大切に育てられ村一番の力持ちになりました。(画像は、大金持ちの風体)その頃、桃太郎は鬼ヶ島の鬼の噂を耳にします。おばあさんは桃太郎にこう言います。「近くの村が鬼に荒らされて困っているの。これでは経営が成り立たないわ。」実はその村、おばあさんの土地だったのです。
Aもういい!!いい加減にしてください。
Bなんでですか。あなた、続きが気にならないんですか?
Aなりませんよ!
D私、気になります。
Bそうでしょう?(笑)この後鬼ヶ島で石油を見つけて、鬼に働かせるんですよ
D良いですねえ!現代っぽい!
A次!!Dさん!
Dあ、じゃあ

 (D、答弁台へ)

Dえー私は、桃太郎をモチーフにしたテーマパークを提案します。
Bいいじゃないですか
D詳細はこちらです。

 (画像を見せる。かなり大雑把)

Dえーと、ここのあたりに、桃のデザインのジェットコースター。で、ここに鬼ヶ島と、桃太郎の実家です。何かしらのアトラクションを設置する予定です。
A随分いい加減な設計案ですね
Dそうですか?
Aそうですよ! あとこれもさっきから言ってますけどね、我々には予算がないんです! テーマパークなんて作れるわけないでしょう!
Dいやあ、作れると思いますけどねえ
Aじゃあどうやって資金調達するんですか?
Dだからまあ・・・募金とか?

 (A、Dを叩く)

D痛っあ!叩くことないでしょう!
Aあなたが悪いんですよ
D私だってねえ、他にいい企画案持ってきてるんですからね!
Aほほう、じゃあ聞かせてもらいましょう なんですか?
D・・・だから・・巨大モニュメントですよ
Aなんの?
D吉備団子
Aそれじゃあただのでっかい球だよ!
A次!Cさん、お願いします

 (Bが出てくる)

Aなんであなたが出てくるんですか!次はCさんだって言ったでしょう!
Bまあまあまあ
Aまあまあまあじゃないでしょ、あなたは!
C Aさん、私は大丈夫ですから
Aもーう、すみませんCさん。
 しょうがない人だな(Bを見ながら)

 (B、答弁台へ)
Bまたまた登場です。今回は桃太郎のサイドストーリーを考えてきました
Aどうせまた変な物語ですよ
Bこちらをご覧ください


(スクリーンに紙芝居形式で何枚かの画像が映し出される)
 (Bの語り)

B桃次郎。みなさん、桃次郎をご存知でしょうか?まあおそらく知らない人がほとんどでしょう。(歩きながら)
Aなんですか?この茶番は
B実は桃太郎はね・・・双子だったんですよ!!
A(勘弁してくれという表情)
B桃次郎の存在はね、おじいさんとおばあさんによって隠蔽されてたんだ!それはなぜか。桃次郎が桃太郎と比べて、非力で内気だったからなんです。狭い世界で生きるおじいさんとおばあさんは世間体を気にして、家族のお荷物となる桃次郎の存在を無きものとした。そして桃太郎のみ自分らの息子としたのです。・・・でもこれが悲劇の始まりでした。
Aもういいですって!
B部屋の隅で引きこもる桃次郎。一方その頃、鬼を倒した桃太郎は村の人々に感謝される。どんどん卑屈になっていく桃次郎。挙げ句の果てに桃次郎は・・・桃太郎を殺害した・・・
A火曜サスペンスの見過ぎです。もうダメです。次!Cさんお願いします。
Bっちぇ

 (C、答弁台へ)
A Cさん、頼りになるのは貴方だけです。
Cはは、またまた
Cえーそれでは、発表を始めさせて頂きます。私は、昔話をモチーフにした映画の作成を提案します。
Aうーん、でもやっぱり予
C分かってます、予算ですよね。 わたくし、考えてきました
Aおお
Dすごい
C映画は集客力が高く、効果的に観光客を呼ぶことのできるコンテンツです。しかしその分、予算はかさんでしまう。そこで私考えました。映画を他の県と共作するんです!
Bというと?
Cつまり、浦島太郎発祥の地であります京都府、そして、かぐや姫発祥の地であります奈良県と協力して一本の映画を作るんです!これなら予算の心配は無用です!
Aなるほど!すごい!
D天才ですよ
C実はこの企画、勝手に水面下で進めており、もうシナリオ出来上がってます!

 (A、B、D、拍手。口々に褒める)

A皆さん、Cさんを見習ってください!
Bちなみに、そのシナリオは・・・
C当然、プロに頼んでます 
Bすごい 
Aあなたとは違うんですよ
Cでは早速

 (Cの語り)

C 昔々あるところに竹取の翁がありました。光る竹を見つけ切ってみると、その中にはなんとも美しい光る桃が。桃を割ってみるとその中には、竿をもった赤ん坊。おじいさんはこの子に浦島太郎と名付けました。おじいさんの元ですくすく育った浦島太郎は、ある噂を耳にします。「鬼が村を荒らして困っているの」これを聞いた浦島太郎は黍団子を持って、鬼退治に出かけました。旅の途中では猿・雉・犬・亀に出会い、一緒に鬼ヶ島へ向かいます。しかし、道中、亀は浦島太郎に打ち明けます。「私は今夜、月に帰らねばなりません」
A Cさん、ちょっとごめんなさい
Cなんでしょう?
A・・・これ、ほんとにプロに頼んだんですか?
Cはい、頼みましたよ
Aそのー何というか・・・
Dつまらない
Aちょっと(小声で)
Bしかも主人公がなんで浦島太郎なんですか
Cいやあ・・・
Aどうしました?
Cいやー実は、京都府と奈良県とでかなり揉めまして・・・
Aもめた?
Cはい。京都と奈良と岡山の中で、一番財源があるのが、、
Dそりゃ京都でしょう
Cはい・・・
Bん?ってことは一番金を出すのが京都府なんだから、主人公は浦島太郎にしろってことか?
C・・・はい

 (口々に、京都のことを悪く言う)

Aきったねえな京都府は!!
Bそういう場所なんですよあそこは!
Dこれだから首都になれないんだ

Aもう皆さん全然ダメじゃないですか!これじゃあ観光客を呼べませんよ!
Bそんなこと言われてもねえ
Aこんなことなら、少ない予算を使ってでもプロに頼めば良かったですよ!
D随分ないいようですね
Bそんなに言うならあなたはどうなんですか
Aはい?
Bあなたが考えた企画を教えなさいよ!
Dそうですよ 我々にこんだけ言うってことは、あなたの企画は立派なんですよね?
A・・・
Bほら行って

 (A、答弁台へ)

A私が考えてきたのは新しいお土産の発売です。
Bそれで?
A現在、岡山県の主要なお土産は、吉備団子ただ一つです。そこで新しいお土産を発売することによって観光客を呼び込めるのではないかと考えました。
B具体的には?
Aすごい食いつきようですね
Bそりゃそうでしょう
A例えばこちら

 (画面に映し出される)

Aおばあさんの洗濯板
Dただの洗濯板じゃないですか
Aおじいさんの鎌
Dだからただの鎌じゃないですか
A・・・
Bえ?
A以上です。

 (B、D、口々に言う)

Bつまんないですねー
Dつまらない、これはつまらない
Aそんなことないでしょう!私だって必死に考えてきたんですよ!
Aねえ、Cさん。面白いでしょう?
Cつまらないです。
Aいやあああああ

B Aさん、決議を取ってください。
A・・・はい
Aそれでは第32回、岡山県ぎ

 (徐々に暗転)
 (音声のみでが放送される)

報道特集。続いてのピックアップはこちらです。
(ピロンという音)「税金の無駄遣い 岡山県の失墜」です。岡山県議会は観光客増加のために、巨大吉備団子のモニュメント制作に着手しました。しかし、この動きに対して地域住民からの不満が爆発しています。ジャーナリストの斉藤賢治さん、どうお考えでしょう?
「うーん、そうですね、巨大吉備団子と言ってもただのでっかい球ですからねー。発想があまりに安易だと思います」ありがとうございました。それでは今日の報道特集、ここまでです。

  終了

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