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アートアニメーション『屋根の上とベットの下』<AS生作品紹介・その5>

ほのぼのとした独特の世界観のアニメーションを制作するZ.Xさんの作品を紹介いたします。時間の流れに人はみな、いろいろな感覚と記憶を重ね合わせて、しみじみと何かを感じることがあります。そんな瞬間に出会うきっかけを作ってくれる、素敵なアニメーションです。

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はじめまして、Z.Xです。短編アニメーションを制作しています。
研究科での一年間、先生から指導を受けながら、今作りたいものを形にして、自主制作アニメーションを作りました。

作品のタイトルは「屋根の上とベッドの下」です。ストーリーは自分の体験をもとにして作り上げたものです。大人の私がある日、ベットの下にある古い箱を見つけました。その箱の中には、子供の頃に集めた色々なコレクションがありました。その中に、子供の時に抜けた乳歯が並んでいました。乳歯を見て、私は子供時代の記憶を思い出しました。歯が抜けても、楽しそうに笑っている子供の自分を思い出して、そして鬱々としている今の自分の顔を見て、懐かしい気持ちと、もう天真爛漫な昔に戻れないという寂しさなど、複雑な気持ちになりました。そんな自分の感情を描いて、映像化にしてみました。

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ちなみに、作品の中には「屋根」が出ていませんが、なぜこのタイトルにしたかというと、中国でも日本でも、昔から伝えてきた、ある言い伝えに関係しています。それは、「上の乳歯を床下へ、下の乳歯を屋根上へ投げると、続いて生えてくる歯が投げる方向に向いて、健康に生えてくる」です。私は子供の時に、この言い伝えを聞いて、すこく印象に残りました。だから、自分の「乳歯」を巡って語るストーリーを考え出した時に、この言い伝えの言葉を借りてタイトルにしました。

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この作品を作る時、私は日本の美意識「もののあはれ」から影響を受けました。「もののあはれ」は、身近にある物の変化に気付き、そこから時間の流れを感じ、心にしみる感情を生むことを指しています。日本へ来てから、私は日常生活の中で何度か「もののあはれ」を体験しました。例えば花火を見た後、その一瞬で消えゆく美しさを思い出しながら、寂しい気持ちになりました。また、春に、家の近くにある桜が満開の状態から、わずか数日で散ってしまう儚さに触れ、切なさを感じました。「もののあはれ」を感じた時の感覚を自分の作品にも入れたいと思って、私は生活で体験した小さな事をもとに、自分が感じた繊細な感情をアニメーションで表現してみました。作品を見て、少しでも共感してもらえたらと思います。

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やさしい気持ちにさせてくれる独特のタッチで描かれたアニメーションは、切なさと懐かしさを感じさせてくれます。校舎で行なう展示でもプロジェクション上映いたします。ぜひ、232教室でご鑑賞いただけたら幸いです。動画もオンライン卒展で公開予定です。

阿佐ヶ谷美術専門学校 卒業・修了制作展

2/21(日)〜23(祝)10:30-18:00

https://www.asabi-sotsuten.com


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