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サカナはあぶったイカでいい理由 (2)


代弁者だという自覚や覚悟があるからここまで歌ってこられた。

自分のことや自分のエゴを歌おうとしたら多分ここまで歌ってこられなかったでしょうね。

  (八代亜紀)


カノンを聴いたことがあなたにもあると思う。優しく励ましてくれる調べ。

いっけん、八代亜紀とカノンは関係ないように見えるでしょうね。

へへ、関係無いです。無理やりこじつけました。あは。



カノンを作ったパッヘルベルは17世紀、バロック期のドイツの作曲家だそうで、あれから400年近くも経っていた。

で、身長184cm、不信心な台湾のギタリストが二十歳の頃、このカノンをハード・ロックにアレンジした。

そのビデオをYouTubeにアップし世界的に有名となった。

今や、13歳から80歳までの幅広い年代が『カノンロック』をカバーしています。


ヴァイオリンやピアノなど、エレキギター以外の楽器でもカバーされている。

で、カノンロックは数々あれど、このバイオリン・バージョンが秀逸。

わたしは、もう10年ほど聞き続けていて、なにもわたしだけでないようです。

中毒性が高いので、みんな離れられなくなっている。

https://www.youtube.com/watch?v=G8g957FWv-c


有名どころの演奏は数々あれど、やっぱり聴きたくなるのは、彼女です。

深くふかく沈み、そしてから、遥か天に舞う。

蒼の空の、さらにその上へ上へと。


チャイニーズでしょうか。

困ったような顔をした子で、二十歳前後。(13年前、彼女はこれをUpした)

少しぐらい笑ったらどうだいと言いたいのだけど、彼女はいっさい自分を出さない。

ひょっとして、聞いてもらいたくないんじゃないかと思われるほどに愛想が無い。

が、ひき出すと、まあ、弓の運びがハンパなく、うまい。

肩の力が抜け、柔らかな手首の動きで、すべってゆく。

荒々しいロックのなかに神々しく響くバイオリンの音色。

きみは、いっさい自我を出そうとしない、八代亜紀並みの代弁者なのかい?



あまりに見事な原曲だった。

もともと、パッヘルベルはカノンをおそらく神にささげた。

だから、彼はロックに編曲されたことを決して許さないでしょう。

お空の上かどこかで、激怒している。


いや、もちろん、あなたの曲は素晴らしいです。

その妙なるしらべを流したら、天井の上で背中に羽生えた子たちがぴよぴよと羽ばたくのが、わたしにだってみえますっ。

でもね、エレキギターでがんがんやるのも、すごいんです。

ロック版をピアノやフルートだってやると、すんごいの。

ええ、あなたはこの編曲をお怒りでしょうね。


でもね、意外と病みつきになります。

癒しとパワーの蘇りが同時に起こるなんて、ちょっとあなたには信じられないでしょう?

あれから時は流れ、みな独りぼっちになっちゃったのですよ。

人たちに、もう神はいない、今です。

わたしの生の意味は自分で見つけなければならなくなり、ひどくエネルギーが必要となりました。

きみたちは、肉もさんざん食ってるだろ?とあなたは言うでしょうが、

こころへパワーを入れるのは自分では難しくてですね、みんなこころを痛めております。

ですから、止むを得ず、このバージョンが産まれたのでござりまするぅ。



パッヘルベルさまにも、バイオリン握ってるこの東洋系の子を聞いていただきたいと思うんです。

これを聞くとですね、これぞ、東洋の至宝ってな感じになるかと存じます。

一切の想いも、リキミも、なんにも無い淡々族がやっています。

なんのアピールも無いのです。

ぶすっとしたタマゴの殻にヘノヘノモヘジが描かれていて、そのタマゴちゃんを見てるような。

でも、逆に、こんなふうに演出もアピールも一切無いって稀に見る事象でしょう。

修飾も編集も強制も飾りも無くて、聞き手がまったく自由にこころ羽ばたく。


あなたの原曲ですと、あなたの意図通りに、そのとおりに敬虔になって、沈み、癒されます。

でもですね、この子の演奏ですと、そんな誰の意図も汲めないのです。

彼女は自由に捧げたのです。

自由の代弁者というプライドを、わたしはこの子に感じるのです。


「自分語り」が好きっていうのがバレてしまったので、

わたし、かわりに今日から「推し」生活に入りましたっ。みたいな。



P.S.


ピアノによる原曲バージョンです。

https://www.youtube.com/watch?v=7tsiFrHM0q0

カノン原曲に対して、多くの書き込みがあります。


「生きる事に少し疲れてしまいました。働いて働いて働いて子供に会えるのは週末だけ。
それでも養うために働いて、ちょっとだけ愚痴っちゃいました。
すいません。でもこの曲を聞いてまた前を向いて頑張れます。」


「小学生の頃、母がカノンが好きって知った日から、喜んでもらうために必死で練習したな。
母は私が13の頃に亡くなって、それからはカノンを聴くたびに母との思い出が蘇って泣いてしまう。

もうすぐ離れ離れになって10年
この動画と出会ってずっと弾かずにいたカノン、
また練習して弾けるようになって
成長した姿見せたいって
また喜んでもらいたいって思えました。音楽って素晴らしい。」


「私はうつ病で、物凄く他人と会うのが怖くて、外出をするのが物凄く怖いです。
でも、先週、子供の卒業式があり、頑張って出席するために、
このカノンを聴いて、心を落ち着かせて、頑張って行ってきました。
卒業式が始まる直前までイヤホンをして、聴いていました。この曲、本当に大好きです。」


「このカノンのピアノだけが唯一私が不安障害の症状に悩まされる中、聞ける音楽です。
不安でたまらない時に聞くと驚くくらいに落ち着きます。
涙が止まらなくなることもあります。音楽の力が本当に凄いんだなと感じる瞬間です。
ありがとうございます ただただ感謝です」


体がこころが苦しい。怖い。

でも、気持ちが浄化されて、ただただ無心になれるこの曲が好きだという。

泣いてしまうという。


わたしは、ゆっくりゆっくりと歩き始める。

前を向いてすこし歩く。

歩き出すと、向こうの丘の木々、川、花や小鳥が目に入って来る。

歩く足にテンポがでてきて、じぶんの体が軽くなる。

それは、わたしが持っていた元々のリズムだった。


ゆっくりゆっくりと歩く。

そのたび、足を動かす。

足を動かす時、体を硬くこわばらせていた思考たちが止む。

止めば、雨の音、風のささやき、鳥たちの騒ぎ、赤ん坊の泣き声に気が付く。

春の香りだったり、夏の強烈なアスファルトから立ち上る香りだったかもしれない。

足が動けば、体中に風や香りが連れられて来る。


わたしは、やっぱり動く物なんだ。動物なんだな。

思考の呪いは、原始の五感が振り払う。

動いて、嗅いで、見て、触って。

ゆっくりゆっくりがいいのだな。


歩けば、わたしに埋め込まれていた原始リズムがようやくまた時を刻み始め、思考から感じる次元へと移れる。

Do'nt think, feel!と言った人は、このリズムを知りそれに助けられたんだろう。

さあ、歩こう。たったその一歩でいいからと。



わたしは、かなりオセンチだな。

やっぱり何度聞いても、天井のピヨピヨくんたちが舞う。

神も仏も信じないわたしが、穏やかな敬虔な心持ちになる。

宗教が大事なんじゃなくて、宗教心が本質なんだと分かる。

大事なものは、外にではなく、このじぶんの胸にある。

外の権威では、取り込まれてしまい大事なことに気づけない。

誰かに頼って恵んでもらうようなものじゃないとわたしは思う。


自分の中から湧いてくるたましいの声を聴け!

カノン、カノン!

なぜか、泣いちゃう。

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