見出し画像

抗うつ剤の話

「抗うつ剤」がXのトレンドに入っていた。ざっと読むと、抗うつ剤が体に合わなくて辛いという人のツイートが話題になったようだった。

私がはじめて抗うつ剤を飲んだ時、かなり期待して服用したのを覚えている。この薬を飲めば、私のつらい気持ちは和らいで、生きやすくなるのだと願っていた。服用して、副作用のような症状はあまり感じなかったが、作用も大して感じなかった。飲んでも飲まなくても同じなような気がした。薬が効かないということは、私の生きづらさは「病気」ではないのだと思った。病気だったら治るかもしれないが、病気ではないから治らないと思った。自分の生きづらさに対して、診断名とかをつけてほしかったのだ。これまでよく生きてきましたねと労ってほしかったし、それがないのがとても悲しかった。結局、勝手に薬を飲むのをやめてしまった。そしたら、数ヶ月後に抑うつ状態で休職した。

話を戻すと、抗うつ剤の効果を即座に感じることは、難しいと思う。たぶん飲んでから作用するまで時間がかかるのだと思う。同時に、副作用を感じることも、即座には難しいのではないかと思う。うつのせいで動けないのか、薬のせいで動けないのか、判別できる人は少ないと思う。よく薬の相性について論ずる人がいるけれど、あとから振り返ってみても薬との相性がいいのか悪いのかはよく分からない。うつの状態がひどかった時にその薬をたまたま飲んでいただけで、その薬自体が悪かったわけじゃないのでは? と思うからだ。

それはそうなのだが、薬を飲む量はそれなりに体調に影響を与えていたように思う。今はだいぶメンタルが回復したため、申し訳程度(うつの再発を予防する程度)にしか抗うつ剤を飲んでいないのだが、明らかに体調がいいのだ。なんというか、ぼーっとしない。抗うつ剤を飲んでから、というか、抗うつ剤を飲まざるを得ないくらいメンタルが落ちてからは、ずっと頭にモヤがかかったような感じだった。最中は分からないのだけど、あとから振り返るとそんな感じがする。薬を飲んでいた期間は、記憶の定着が弱い気がする。活動的ではなかったせいかもしれないが、あまり記憶がない。自分のポッドキャストを聴いて、こんなことを考えていたのか、と驚くことがある。

抗うつ剤の量を減らしても希死念慮が出なくなってから、だいぶ生きやすくなった。薬のせいで動けなかったのかは定かではないが、とりあえず前より動きやすくなった。メンタルもフィジカルも軽くなった。


いま、人生でいちばん幸せだと思う。希死念慮がないからだ。久しく死について考えていないからだ。私の人生には希死念慮が隣り合っていて、それを考えないことが不思議なくらいだった。別に取り立てて不幸なこともなかった、むしろ社会的に幸福な部類の人生だったと思うのだが、私はいつも死にたい気持ちと一緒に生きていた。瞬間的には幸せなことも勿論あったのだけど、些細なきっかけで、いつも苦しんでいた。受験に成功しても、部活で成功しても、恋愛で成功しても、仕事で成功しても、私は一瞬しか幸せになれなかった。苦しみを忘れられるその一瞬のために躍起になっていて、躍起になるせいでほとんどいつも苦しかった。うつになって、成功とかを諦めるようになって、むしろよかったのかもしれない。いまは仕事でも常に失敗しているように思うし、醜く太ってしまったし、他人から羨ましがられるようなものは何も持っていないのだけれど、幸せだと思う。他人から羨ましがられるものを、昔の方がたくさん持っていたような気がするのだけど、昔より今の方が幸せだ。

抗うつ剤のせいなのか、病気のせいなのか、幸せでボケてしまったのか、よくわからないけど、頭の回転は昔よりだいぶ悪くなったと思う。はて? といつも思っている。会社の同期や後輩が当たり前に処理していることが、全然処理できない。昔はもっと色んなことに対して「そんなことちょっと考えれば分かるじゃん」とか思っていたのだけれど、今はどれだけ考えても分からないのだ。優秀な同期や後輩に可能性を指摘されて、はじめてリスクやチャンスに気がつく。仕事では本当にすごく困っているのだけれど、私はこの頭の劣化のおかげで、生きやすさを獲得したように思う。

なんとなく語りたくなったため、語ってみました。誰かのためというより、自分があとから読み返してみて、こんなことを考えていたのだと知るために書いてみました。

追記
冷静に淡々と書こうと思ったわりに想いが溢れてしまった。わけもなく、ずっとつらかったんよな。あれこれ考えてしまって。今はマジでボケてしまって、考えようとしても何も考えられなくなってしまったから仕事には支障出ているのだが、おかげで幸せになったと思う。本当はボケずに幸せになりたかったが。

OLとバリキャリとオタクの中間地点にいます。 「忘れてみたい夜だから」という番組をRadiotalkとPodcastでお届けしています。 【Radiotalk】 radiotalk.jp/program/31133