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テセウスのFIFTY FIFTY|奇跡の行方


FIFTY FIFTYと『Cupid』の奇跡

2023年、KPOP界に大旋風を巻き起こした楽曲『Cupid』

ディスコポップ風の懐かしい雰囲気がウケたのか、
TikTokでの大バズりから音源チャートを爆走し、
世界一の難関チャートであるビルボードHOT100に侵入成功。
K-POP界は大騒ぎになった。

K-POPの楽曲がビルボードHOT100に侵入するのは簡単なことではない。

初めてその偉業を成し遂げたのは2009年、
Wonder Girls『Nobody』

J.Y.Parkが積年の夢であるアメリカでの成功のためにほぼ全財産を費やし、Wonder Girlsの韓国での人気も捨てて、
アメリカでドサ回りして成し遂げた唯一の成果が、
「ビルボードHOT100への侵入」だった。
このときは76位で、チャートインできたのは1週
それでもK-POP界初の快挙。
Wonder Girlsのアメリカ進出は商業的には失敗だったので、
このときの76位は「傷だらけの名誉」といわれた。

それから14年。
ビルボードHOT100に侵入に成功したグループは、
BTS、BLACKPINK、TWICE。そしてNewJeans。
以上である。(ソロ歌手ならPSYやCLも。)

これだけ見ても、ビルボードHOT100にチャートインすることがどれだけ大変かはよく分かると思う。大手事務所かつ大人気じゃないと無理なのだと。

ところがこれを、
無名の事務所から出てきた、
全く知名度のないガールズグループが、
ポッと成し遂げちゃったのだ。
しかも最高順位は17位25週連続。

人生を懸けても76位、1週だったJ.Y.Parkが号泣してもおかしくない記録。

一躍大スターになったFIFTY FIFTY。
「第二のBTS」とも呼ばれ、
FIFTY FIFTYと所属事務所ATTRAKTは、
BTSとBIG HITのような奇跡の物語を紡ぐかに見えた。

しかし大衆の期待に反して、
FIFTY FIFTYとATTRAKTは奇跡の物語どころか、
完全別ジャンルの泥沼サスペンスを始めてしまう。

FIFTY FIFTY騒動の顛末(簡略)

登場人物は、
まず FIFTY FIFTYメンバー。

左からシオ、セナ、アラン、キーナ。

シオセナアランがボーカル担当で、キーナがラップ担当。

ATTRAKTは『Cupid』のヒット後、
ボーカルが得意なシオアランに大幅にパートを割り振った『Cupid Twin ver.』をリリースし、世界的に大ヒットさせた。
特にアランの美声はカーペンターズの妹カレンを思い出させるような、優しくて落ち着く歌声で、世界中から愛された。(あんな歌声を持つ人はなかなかいないから、本当にもったいない…)

そして所属事務所ATTRAKTと、チョン・ホンジュン代表。

チョン・ホンジュン代表(写真=ATTRACT)

そしてFIFTY FIFTYのプロデュースを請け負った、
プロデュース会社The Giversのアン・ソンイルPD。

アン・ソンイル代表(写真=The Givers)

簡単に言うと、
所属事務所であるATTRAKTのチョン・ホンジュン代表とプロデュースをしたThe Giversのアン・ソンイルPDが、FIFTY FIFTYの権利をめぐって対立。

メンバーたちはアンPDの、「大企業Warner Music Koreaに移籍できる」という言葉を信じて、アンPDについて行ってしまった。

所属事務所のチョン代表は、FIFTY FIFTYを作るために借金までして数十億の投資をしたのだから、FIFTY FIFTYに関する権利を全て持っているし、当然、権利を守ろうとする。

アンPDは自分がプロデュースしたから、手柄を自分のものにしたくて、欲をかいてしまったのだろう。

メンバーたちは、小さな事務所から大きな事務所に移籍できると信じて、アンPDの味方につき、所属事務所ATTRAKTとの契約無効を主張して裁判まで始めてしまった。

あまりにも小さすぎる事務所が、
あまりにも大きすぎる成功をしてしまったために起こった騒動。

裁判ではメンバーがチョン代表の背任を主張し、最初はアンPDとメンバー側が有利に見えた。
しかし、途中でメンバーの一人キーナが翻意し、チョン代表の下に帰ったことで、風向きが一気に変わる。

結局は、
アンPDとメンバーたちが、ATTRAKTとの契約解除のために主張したチョン代表の背任は認められず、メンバー3人は敗訴。
FIFTY FIFTYは所属事務所ATTRAKTとチョン・ホンジュン代表のもの
という判決が下される。
帰ってこなかった3人(シオ、セナ、アラン)には、約130億ウォン(約14億円)の損害賠償請求がなされることになった。

裁判を経て韓国世論はチョン代表に同情。
「代表がトロット(演歌)を歌ったら買います」
とまで言われていた。
一方、
会社を裏切った3人(シオ、セナ、アラン)には、
「裏切り者」「恩知らず」
と冷たい視線が注がれることに。

チョン代表とATTRAKTは、3人(シオ、セナ、アラン)との契約を解除。
FIFTY FIFTYは解散させず、帰ってきたキーナに1人でFIFTY FIFTYを続けさせるという状況だった。

2024年のゴールデンディスクアワードでは、
キーナが一人でFIFTY FIFTYとして出席し、
トロフィーを受け取る場面もあった。

裁判がひと段落つき、
チョン代表はキーナを残したまま、追加メンバーを入れてFIFTY FIFTYを再稼働させることを発表。

もちろん、大手事務所であれば、
こんなことになったらFIFTY FIFTYを解散させ、
新しいグループを作るのだろうけど、
ATTRAKTはFIFTY FIFTYで一発当てただけの無名事務所。

「FIFTY FIFTY」というグループ名の知名度を捨てるのは、あまりにももったいないので、当然の判断だと思う。

FIFTY FIFTYとして活動再開できることになったキーナ。
約14億円の借金を背負った3人(シオ、セナ、アラン)。

判断を一つ間違えただけで、これほど大きな差が出るものか。
キーナが考えを変え、チョン・ホンジュン代表の下に帰ると決断したとき、3人(シオ、セナ、アラン)も同じ判断ができていれば、今頃はFIFTY FIFTYとして再稼働できたかもしれないのに。

調べてみると3人(シオ、セナ、アラン)は全員同年齢で、当時は18、19歳。
キーナだけ二歳年上で、当時20歳。
もしかしたらこの年齢差が、行動の違いに繋がったのかもしれない。

新生FIFTY FIFTY

ATTRAKTのチョン・ホンジュン代表は追加メンバーのオーディションを開催。
今月、新たなFIFTY FIFTYメンバーが紹介された。

その中にはもちろんキーナの姿がある。

そして追加メンバーは4人。
以前より1人増えて、5人組として再始動するとのこと。

新生FIFTY FIFTYの5人を紹介!

キーナ

2002年生まれ、21歳。
韓国人メンバー。キナとも。

唯一のオリジナルメンバー
もとはシオ、セナ、アランと四人でFIFTY FIFTYとして活動し、ラップを担当していた。

騒動の当初は他メンバーとともにチョン代表の背任を訴えたものの、途中でATTRAKTに戻り、
「全ては嘘だった。ごめんなさい」と謝罪。
ATTRAKT勝訴のキーマンとなった。

初精算金で寄付をするなど、慈善活動をしている。

シャネル

2003年生まれ、21歳。
アメリカと韓国のハーフ。

写真=『R U Next?』(C)BELIFT LAB Inc. ALL RIGHTS RESERVED.

オーディション番組『R U Next?』に出演していたため、すでに大衆に顔を知られているシャネル。

美人でボーカルスキルもあったが、『R U Next?』では徐々に自信を失い、最終的にILLITのメンバーになることはできなかった。

しかし視聴者からは根強い人気があった。
FIFTY FIFTYの新メンバーとして発表されるなり、
これは期待できる!!
とかなり注目されているメンバー。

イェウォン

2005年生まれ。19歳。
韓国人メンバー。

写真=『R U Next?』(C)BELIFT LAB Inc. ALL RIGHTS RESERVED.

イェウォンも『R U Next?』の参加者。
(タイミング的にも、『R U Next?』での脱落者にATTRAKT側が声をかけた可能性が高そうだ。)

個人的にNMIXXのへウォンに似ていると思う(顔が)。

ハナ

本名イム・ハラム。
2006年生まれ、18歳。
韓国人メンバー。

子供の頃から歌う動画をYouTubeに投稿していたらしく、登録者数も40万人以上いて人気者だったよう。

子供の頃にテレビに出て『Part of Your World』を歌う動画。

以上の3人はすでに知名度のあるメンバー。
おそらくATTRAKTもチョン・ホンジュン代表も、
プロデュースの実績はほとんどないため、
あまり自信がなく、知名度と実力のある人材を積極的に採用したと思われる。

アテナ

スウェーデン国籍。
最後に公開されたメンバー。両親は韓国人。

これは……
かなりの美少女を見つけてきましたね、代表。
ヤン・アテナが本名のようだが、表舞台に出てくるのはこれが初めてだ。

個人的にはウォニョンの雰囲気も感じるし、
NiziUリオとBABYMONSTERローラにも似て見える。
とんでもない美人なので人気が出そうだ。

歌唱力などはまだ未知数。

ということで、
キーナ、シャネル、イェウォン、ハナ、アテナ。
5人による新生FIFTY FIFTYが無事に公開され、
9月20日のカムバックが予告された。

旧FIFTY FIFTY 3人の行方

ATTRAKTから巨額の損害賠償を請求され、
さらに世間からは「裏切り者」と呼ばれて、
絶望的な状況となった3人(シオ、セナ、アラン)。

借金は返さなければならないし、
しばらく芸能活動はできそうにないし、
この先の人生どうするのかな。

と思っていた矢先に、

3人揃って新しい事務所と契約したことを発表。

へええ。
どこの怪しい事務所が拾ったんやろ。
と思ったら。

このIOK COMPANYの所属俳優を見たら、

コ・ヒョンジョン
ムン・チェウォン
チョ・インソン

めっちゃ大物ぞろい。

特にコ・ヒョンジョンは韓国人なら誰もが知っている国民的大女優だ。

こんな事務所が3人を拾ってくれたの?

にわかに信じがたいけど、しばらくして続報が出る。

3人(シオ、セナ、アラン)の芸名をそのまま使えるらしい。

よく分からないけど、
こんな大きな事務所なら借金も肩代わりしてくれそうだし、再出発も良い形でできそうだ。

3人とも歌手としての才能はあったし、特にシオとアランは歌声のファンが多かったから、歌手活動を再開したら案外うまくいくかもしれない。

もちろんFIFTY FIFTYの名前は使えないだろうし、
新しいグループ名はまだ発表されていないが、
FIFTY FIFTYの歌声の本体はこちらと言っていいだろう。
(『Cupid』を歌うのは許されないだろうけど)

新生FIFTY FIFTYのほうは、キーナがいること以外、
元のプロデューサーもいないし、メンバーもほぼ違うし、もはやFIFTY FIFTYと呼べるのかどうか。

2023年にK-POP界をざわつかせた『Cupid』の成功は、どちらのものになるのだろう?
どちらが本物のFIFTY FIFTYとみなされるのだろう。これぞまさにFIFTY FIFTY …って感じだ。

なんかこう見ると、四人組FIFTY FIFTYは、完全に分裂してしまったのだということが身に沁みる。

FIFTY FIFTYの新しいアルバムがちょっと楽しみ。


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