こぼれ落ちそうになったら~15歳からの社会保障~

15歳からの社会保障という本が刊行された

社会保障制度をわかりやすく身近なものとして
気軽に読める本

社会はとても便利になっていて
ないものを見つける方が難しいくらい何不自由なく生活することができる
なんでもできる、どこにでも行ける、誰とでも繋がることができる
確実に快適で、希望が持てる時代になっているはず。

だけど、一つどこかで間違えると、簡単には戻れない場合が多い
上手に言語化できないけれど、、確実に社会は分断が進んでいる
趣味一つとっても選べる選択肢が増えて、個人の尊重が進んだ中で
すぐ隣にいる人もまったく別の物を見ていて、交わる機会がないままのことも増えている

私も、ずっと高齢者分野で働いてきてほかの分野の制度に触れる事はほぼなかった
分業が進んで、仕事も効率化を求められそれぞれの領域に踏み入れず、興味があっても時間がない

現在は就労移行支援事業所で生活支援員をしている
様々な障害を抱える方が多く利用されるが、
利用中は訓練プログラムでじっくり話す時間が取れないことも多い。
その方が私の目の前に来るまでにどれだけの困難さを抱えてきたか
何度、通り抜けようとしたドアが閉まってしまったか

この本は、当事者の生活場面と、その時の感情がストーリーで
丁寧に説明されている
困難な時ほど、冷静な判断が必要な専門職ではあるが、
実際に困難を抱え、矢面に立っておられる方の感情の渦に触れて、
私も感情を揺さぶられ涙が出たし、自分もこうだったらと、怖くなった

今私がたっている場所から見える景色と、利用者として通っている人の
景色は何も変わらないのと同時に、明らかな違いもある

「スペクトラム」という言葉を想起する
物事はすべて繋がっていて、曖昧な境界を持ちながらも連続している

物語で紡がれているこの本は、
いろんな流れの中に困難さもその方の幸せも内包されていて
それが自分事として自分へ入ってきやすい形になっている事

この間口の広さ、
著者の横山さんのいつも言っている
誰も排除しない社会をしっかり形にしている書籍だと思った。

15歳から、と書かれてはいるけれど、
大人も手に取りやすく、生活に落とし込みやすく、人に勧めやすい。

一人がすべてを知っている必要は決してなくて、
この本を通じてほんの小さなきっかけから新しい線が繋がり、
他者への理解や想像が広がっていったらいいなぁと感じた一冊でした

また、申請主義の文脈から、知らないことは個人の責任ではないこと・社会保障は自分で作っていけるものだというあとがきも
安心感を持って明日も生きていける気分でした。
問題提起や、状況の列挙だけではないところ。
自己責任でなく、社会を変えていく必要があること、その社会は自分たちが
変えていけるという自信を、臨場感を持って感じ取ることができました。

横山さんと、私の周りの人と、明日も淡々と生きていこうと思いました!


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