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第Ⅷ因子(血液凝固因子)が少ない体質


今回はわたしが親知らずを抜くときに一番問題視された、第Ⅷ因子の少なさについて話していこうと思う。

素人が病院で言われたことや調べたことをもとに書いている記事だから、自身の身体で気になることがあれば血液内科や循環器科、血友病に関する機関等に相談することをおすすめしたい。


血友病について

まず最初に、わたしは血友病と診断されていない。
そもそも女性は血友病の因子を持っていても、発症することはほとんどない。

ちなみに血友病は伴性遺伝という方法で保因者の親から遺伝する。
メンデルの法則に従って遺伝するので、思わぬところで理科の授業を思い出すことになった。

血友病は、主に男性に生じます。女性の場合は、X染色体が二つ存在するため、一方のX染色体に異常があっても通常血友病を発症しません。
また、大変まれですが、後天性血友病(後天的に血液凝固因子が働かなくなる大変まれな疾患)の場合、男性、女性いずれでも発症します。

出典 武田薬品工業株式会社 ヘモフィリアステーション 血友病Q&A
(https://www.hemophilia-st.jp/about/faq/)

第Ⅷ因子とは血を固める因子の一つで、もう一つに第Ⅸ因子がある。
人間の身体は血が出ると傷ついた血管に血小板がくっついて、血を固める因子がたんぱく質で覆うことで血を止める。

第Ⅷ因子か第Ⅸ因子が欠損、または低いことで起こる血液凝固異常の症状をいわゆる血友病と呼ぶ。

第Ⅷ因子由来のものは血友病A、第Ⅸ因子由来のものは血友病Bとされている。

ただしどちらかの因子が少ないからこれは血友病!とすぐ診断されるものではなく、家族を辿っていき血友病患者がいたかどうかを調べた上で遺伝子学的検査を行わないと分からないらしい。

そして今回親知らずを抜くにあたって検査してくれた血液内科の先生も言っていたけど、そう気軽に受けられるものでもないそう。

遺伝子学的検査
血液中の白血球からDNAを抽出して、血友病の原因となる遺伝子変異があるかどうかを調べます。
血液凝固検査より精度の高い検査方法ですが、現在は一部の大学病院や医療施設でのみ研究の一環として 行われており、血液凝固検査のように保険診療で全国どこの医療機関でも受けられるわけではありません。
特殊な解析装置や高度な解析技術を必要とする検査ですから、解析までに時間がかかったり、検査費用や経費が高額になるといった課題もあり(これらの費用は、大学病院の研究費などでまかなわれています)、現状では希望するすべての方が遺伝子解析検査まで受けられないこともあります。

出典 ヘモフィリアナビゲーター 保因者かどうか調べるには
(https://csl-info.com/hemophilia-navi/lifestage/carrier/diagnosis.html)


ちなみに遺伝子学的検査を受けられなくても保因者診断というものもある。
ただ、自分自身が診断を受ける項目を満たしているか分からないのと知るのが怖いから受ける気はない。


保因者診断は家族歴から血友病の保因者の可能性があるけれど確定はできない「推定保因者」の方が対象となります。

出典 ヘモフィリアナビゲーター 保因者かどうか調べるには(https://csl-info.com/hemophilia-navi/lifestage/carrier/diagnosis.html)

上にあるように、血友病に対しては血縁者に血友病とされている人はいるかというのが重要になるらしい。自分が知る限り身内で血友病の人はいないから保因者診断も受けられるか分からない。

たとえ測定した血液凝固活性が平均的な値と比較して低い場合であっても診断は確定できず、「保因者である可能性が高い」と判定されます。
血液凝固因子活性の検査だけでは、 保因者であることを確定したり、保因者でないことを判定することはできません。

出典 ヘモフィリアナビゲーター 保因者かどうか調べるには(https://csl-info.com/hemophilia-navi/lifestage/carrier/diagnosis.html)

保因者診断はライフプランを組み立てるにあたって手術や出産のリスクを把握するという意味では意義のあることだけど、保因者確定という診断はされないというのが自分の中ではネックだった。


自分はあまり日常に影響がないから、保因者と確定されないなら「第Ⅷ因子が少ない体質」とだけ知っておけばいいと思った。
そんなこんなでわたしは現状、血友病保因者かもしれないという立ち位置にいる。

自分にもパートナーにも、果ては自分の子供にも関わってくる話なのかもしれないけど、結婚も出産も望んでないから特に問題は感じていない。


血が出やすいのは昔から

今思えば、昔からよく鼻血を出していた。

暑い季節になればのぼせて鼻血を出し、花粉の時期になれば鼻をかむごとに鼻血を出していた。
あまりに頻繁に鼻血を出すから、鼻の血管を焼くのはどうかとかかりつけ医に提案されたこともある。

でも月経で血が多すぎるなんてこともなければ一週間以上続くなんてこともなかったし、歯茎からの出血が気になることもなかった。
ただ鼻の粘膜が弱いだけで、至って健康だと思っていた。

異変に気が付いたのは大学生のころだった。


検査を受けたきっかけ①【止まらない鼻血】


大学二年生、アホ真っ盛りでウェイして友人たちと楽しい日々を送っていた。
「ウィ~www」とか言いながら拳ぶつけあう、若干イラっとするタイプのどこにでもいる大学生だった。

20歳の秋ごろから、急に鼻血が出るようになった。

それも「暑い日にのぼせた」とか「鼻をかみすぎた」とかそんな理由もなく、何の前触れもなく鼻から出血が起こる。花粉症のときに鼻水がツーと出てくる感じ。

そして、その度に今までの比ではない量の鼻血が出た。
5分10分あれば止まってたのに、ひどい時だと30分以上経ってもだくだく出続けていた。


ある日、講義中に鼻血が出た。

出席自体はしているし、ノートは友人がとっておいてくれるとのことで医務室へ行った。

医務室の先生には大人しくしていたらしばらく止まると言われて、放置されていた。
コットンを鼻に詰めてから黄色のフェイスタオルを当てたりしつつ下を向いて大人しくしていたけど、そのうち講義を終えた友人が来てしまった。

90分の講義の半分を過ぎたくらいで退出していたのに、まだ止まっていないのかと驚いていた。

黄色のフェイスタオルの大部分が血で赤くなっていて、ケチャップがかかったオムライスみたいなカラーリングだなーってのんきに思ってた記憶がある。水分を吸いすぎてタオルが重かった。

鼻血があまりにも止まらないので、そのうち痺れを切らした医務室の先生にコットンを詰められて上を向かされた。


……これ、よく言われるダメなやり方では?

案の定喉に来た血を飲み込むことになって、倦怠感に吐き気が加わることになった。

心配した友人が「上って向いちゃダメなんじゃないですか?」「気持ち悪くなってきたみたいなんですけど」って何度も先生に言ってくれて、その結果「血吐くならこれに出して」って言いながらなんかあのゼリービーンズみたいな形の銀色の器を渡された。あれ膿盆って言うんだね、学び。


いや、え?

喉に下りてきた血だけをうまく吐ける人っているのか?
すでに吐き気もあるからこれ少しでも吐こうとしたらガチ吐瀉確定だし、ガチ吐瀉ならこんな小さい器で収まる気がしない。其の淵を愛でる吐瀉の海(?)

幸い、その時の出血はピキり始めた友人の怒りゲージと反比例で落ち着いたのでそのまま帰宅。翌日まで吐き気が凄まじかった。

どうして血を飲み込むと気分が悪くなるのか、調べてみても「血中の油分がダメ」やら「鉄分が胃を攻撃する」やら言われていて、よく分からなかった。

「若い血を飲むと若返る」みたいなえげつない説もあるけど、血で吐き気を催さない強靭な胃を持ってるならそれはちょっとうらやましい。
抜歯とか歯石除去で血の味がする唾液を飲み込まざるを得ない状況でも気分悪くならなさそう。


鼻血の処置を受けてた時は違和感と体調不良で見過ごしてたけど、大学の医務室であんな前時代的な処置がされてると思うとめちゃめちゃ恐ろしい。
鼻血で上向かせる人が、他のことで正しい処置をできるのか不安。

今なら後輩のために学生課に一報入れておいた方がよかったかもしれないとも思うけど、当時は学生課とそこそこ仲悪かったから仕方ない。


検査を受けたきっかけ②【ぶつけなくてもできる痣】

鼻血に続いて、痣が出るようになった。
寝てる間に壁かベッドの手すりにぶつかっているのかと思って部屋の真ん中に布団を敷いて寝るようにしても、ふくらはぎや太もも、二の腕に緑混じりの紫色の痣ができていた。

十円玉大のものからこぶし大の大きいものまで大きさは様々だったけど、どれも紫色をして薄い膨らみを持っていた。

鼻血と痣でさすがにおかしいと思ってネットで調べてみたら血友病や白血病の名前が載っていて怖くなった。
血友病の症状は男性に出るものだと思っていたし、もしかして他の病気なのかと思って病院に行くことにした。


度重なる検査

まずはかかりつけの小さな内科。
鼻血や痣だけだし気のせいだと流されるかもしれないと思ったけど、痣の多さや大きさのせいかきちんと検査に回してもらえた。採血をして、翌週の結果を待った。

結果は分からないから総合病院に紹介状を書くとのこと。


紹介状を持って総合病院へ行き、2回目の採血をして結果を待つ。
結果は分からないから大学病院へ行ってくださいとまた紹介状をもらう。


3回目、大学病院で一度通常の血液検査をして、そこで初めて血液凝固の数値がおかしいと言われた。

そこから循環器科へ回され、詳しく調べるからと4回目に試験管9本分の血液を採られた。
循環器科の待合室から採血の場所へ案内されるときに通常の場所とは違うのか、電気のほぼついていない通路を案内されて結構怖かった。

二週間くらい経ってから結果を聞きに行った。

担当の先生はすごいおじいちゃんで、その道の偉い人らしくて妙に高圧的な口調だった。言葉の端々が癇に障った記憶がある。

説明は分かりにくく「フォン・ヴィレブランド病」「第Ⅷ因子欠乏」の話をされたことだけは覚えている。

血液型がO型だと診断が難しいとか、検査の値とか症状の重さがホルモンバランスでも結構変わるとかの説明も受けた。薬で治せる病気というよりは体質と思った方がいいとのことだった。

そんな体質があるんだ、程度に思った。
ちょっと血が止まりにくいらしいけど、日常生活が困難になるような病気じゃなかった。ならいいや。

由緒ある大学病院のおじいちゃん先生が病名を出したくて、可能性のひとつとして教えてくれたものなんだろう程度に思っていた。

たくさん血を採って検査もしたし、原因が分からないよりは何か言ってくれた方がいいなぁくらいに思っていたから「あーそうなんだ」くらいに思った。
それから就職活動や卒業論文に没頭していくうちに、鼻血や痣の頻度は薄れていった。

愉快なくらいのアホ大学生だったので、血液検査の結果の書類すらその年の年末に捨てた気がする。
そうして、危機意識の抜け落ちた大学生の頭はこの時のことを過去として処理していた。


困ったこと

右の第一小臼歯だか第二小臼歯だかが変な生え方をしていた。
その歯の両サイドがくっつくように生えていて、その歯が押し出されるように生えて過剰歯みたいになっていた。

邪魔だし、磨きにくかったから虫歯になりそうだと言われたタイミングで抜いてしまうことにした。
今のかかりつけの歯科とは違う場所だったけど、腕がいいと評判のところだったので歯の根が際どく絡まりかけていてもうまく抜いてくれた。

でも、つらかったのはここからだった。
一向に抜歯の後の血が止まらず、38度後半の熱を出した。

もともと血の味がする唾液を飲み込めず、血が止まるまでティッシュやタオルに唾液を吐くタイプだった。
血餅がとれないように流れ落ちる唾液を出していたが、血があまりにも止まらない。

吐き気と熱に耐えながらうとうとすると、起きるたびに枕カバーやパジャマの袖が血で真っ赤になっていた。
唾液で薄まった弱い赤ではなく、酸化しかけた赤黒く気持ち悪い色だった。

それでも第Ⅷ因子欠乏のことは思い出さず、もらった痛み止めを飲みつつ血が止まるのを待った。

念のため抜歯の翌々日に診てもらったけどほとんど血は止まりかけてて問題ないとのことだった。

日常生活を送るうえで血が出るようなことがなく、かつ血が「止まらない」のではなく「止まりにくい」ということが危機感のなさを助長していたように思う。


危機感が芽生えたきっかけ

これまた抜歯。
血を流すようなことが歯関連しかないから仕方ないけど。

親知らずを抜くために総合病院でしっかり検査を受け、口腔外科・血液内科・小児科が絡む大きな話になってしまったことをきっかけに認識を改めることになった。


親知らずを4本一度に抜いた話


https://note.com/asa0hiru0yoru/n/n579a9e1de622


静脈内鎮静法で親知らずを抜くにあたって、血友病やら関係なく術前検査で採血がある。
そもそもわたしは第Ⅷ因子の件を先生に申告していなかったので、血液検査で急に引っかかってしまった形になった。

検査結果はこんな感じ。

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引っかかったのは血液が固まるまでの時間の項目。

・PT-INR(プロトロンビン時間 国際標準比)
・APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)

の二つ。

PT-INR→0.9~1.10の基準値で1.12
APTT→25.0~40.0の基準値で40.9

プロトロンビン時間は12.4秒で、遅すぎるわけではないけど早いわけではないねと言われた。

これだけならちょっと「遅いんだね」程度で済む話だったらしい。

先生が目を留めたのが第Ⅷ因子凝固活性の項目。
数値は78.0~165.0の基準値で57.6だった。

これそういえば前に大学病院で言われたやつだなぁと思って申告したら、追加検査をしてもらうことになった。

第Ⅷ因子凝固活性は数値が20~80程度まであればこの病院で処置はできるとのことで、血が固まらなかったときに薬を入れることを前提とした検査もあった。

その中で検査された第Ⅷ因子インヒビターは陰性で、親知らずを抜く際は必要に応じて薬を入れることになった。

血を固めるための薬を入れたときに抗体ができて攻撃してしまうことがあって、インヒビターとはその抗体を指すそう。

血友病の患者さんに製剤(今まで体の中になかった第Ⅷ(8)、第Ⅸ(9)因子)を投与すると、投与された第Ⅷ(8)、第Ⅸ(9)因子が異物とみなされ、第Ⅷ(8)、第Ⅸ(9)因子の働きを妨害(中和)する"抗体"が発生することがあります。この"抗体"をインヒビターと呼びます。

出典 KMバイオロジクス株式会社 血友病インヒビターについて
(https://www.kmbiologics.com/patients/haemophilia/inhibitor.html)


結果的に第Ⅷ因子を増やすのを助けるという薬を服用して抜歯の手術に臨み、吐き気と出血に悩まされつつも完治。


最後に

血がちょっと固まりにくいって体質なんだなー程度に思ってたけど、鼻血や痣、外科的な処置があるとやっぱり不安になる。

普段血を見るようなことなんてそうそうないから何かある時はちゃんと申告しようと認識を改めたのでした。

お付き合いいただきありがとうございました。終わり。

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