見出し画像

映画『オッペンハイマー』

クリストファー・ノーラン監督作品は、台詞が聞き取れない程に音楽が大音量になりがちなのが苦手で、前作『テネット』も映画館で鑑賞しなかった私です。
https://www.facebook.com/akane.saito/posts/10160974352238849

彼の新作『オッペンハイマー』は、同日に公開された『バービー』と掛け合わせたミーム #Barbenheimerで、1945年の広島と長崎への原爆投下を肯定、茶化していると捉えられ日本で公開されず仕舞い、何てことになったら勿体無いので感想を。

劇中アインシュタインが何度か登場するのですが、ナチス政権下のドイツが核開発を行っているらしいという懸念(後に、ドイツにそこまでの技術が無いと判明する訳ですが)から、アメリカ政府に核開発を助言してしまったことは、ずっと後悔していたのだろうなと思います。

そう言えば、スイスのベルンにアインシュタイン博物館があります。

Einstein Museum
https://www.bhm.ch/en/exhibitions/einstein-museum

そしてアメリカで誤認されていそうな「原爆は戦争を終結させるために必要だった」みたいな内容ではなく、旧ソ連にアメリカの軍事力を知らしめるためであったのだとはっきり描かれています。

残念だったのは、マンハッタン計画で核実験に使用された土地に元から住んでいた住人、原爆が落とされた広島や長崎に住んでいた人々の被害にまつわるドキュメンタリー的映像がスクリーンに映し出されることは一切無くって、オッペンハイマーの脳裏で原爆の影響を追体験する箇所があったのですけれども、あまりに現実から掛け離れたものでしたし、アメリカの歴史教育では全く触れていない内容なのかな?と感じてしまいました。ノーラン、英国出身ですけど。

(原爆それ自体ではなく、その後、赤狩りに巻き込まれたオッペンハイマーの半生が軸になっている映画とはいえ、)原爆投下後の被害の光景を捉えた映像が3時間の内にほんの数分、数十秒でもあれば、その後のオッペンハイマーが核兵器開発の規制を求める姿勢を取ったのも観客にとって理解しやすかったであろうし、日本でも受容される社会的意義を成した作品になっていたであろうと思います。

『オッペンハイマー』、『バービー』と同日公開ってのは昨年末の時点から映画館のトレイラーで流れていたので、「え、何でこんな両極端な映画を一緒に宣伝しているの?」と眉を顰めていたけど、両方見た感想としてはどちらの作品も良かったです。ただ、グレタ・ガーウィグは女優としても監督としても以前から好きだった分、正直『バービー』過大評価され過ぎじゃない?って気が。単にこれまでのインディーズ系からいきなり大作に変わっちゃったその格差へのショックもあるかも。

私としては、両作の公開日をセットにすることで話題作り!という宣伝戦略かと思ってたのですが、クリストファー・ノーランが今作の配給元にワーナー・ブラザースではなくユニバーサルを選んだが故、ワーナー・ブラザースが報復として『オッペンハイマー』の興行成績を下げる目的で『バービー』の公開を敢えて同日にぶつけてきたという説を読んで「映画業界って恐ろしい」と思いました。

まぁ、その結果、私みたいに両作見に行っている観客が多いし、相乗効果でどちらも予想を上回るヒットになりそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?