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バーチャンリアリティー ★

ぼくのバーチャンは齢94を迎える。
とんでもなく生きている 3ヶ月前まで半年入院してたのに この年で退院して歩行器で歩けるまで回復した。バケモンだと思う。爆弾をよけて育っただけある。そんな生に頓着することがあるのか、見習いたいくらいなぼくは先日友達の結婚式のついでに実家に帰省した。バーチャンとご飯が決定したので、近くまで車で送ってもらい、そこから一緒に歩いてふたりで話した。

『ごめんね』

これはバーチャンの口癖。何かしら全てを謝ってくる。3年前実家に居た時、謝るくらいなら感謝しろと60年後輩のぼくから説教を喰らったことを忘れたのだろうか。ぼくが強く言いすぎて怖かったのか、ぼくが家にいるその間は『ありがとう』が口癖だったのに。ぼくの''ありがとう洗脳''被検体①になってくれてありがとう。

『お母さんは頑固だから』

そう言う ぼくのバーチャンは実の娘である母とはマトモに話が出来ない。お互い頑固なのだ。ふたりっきりで同じ家に共生しているとは思えない。

『ワタシはたくさんいけないことをしたから、神様に償いとして生かされているんだ』

これも4.5年前から言っている。なんて傲慢なんだと思う。そのルールでいったら、ぼくはバーチャンよりも長生きしてしまうことになる。償いは生きてることじゃない、生きてる時に償うことだと思う。

『一日が長くてツラい』

94歳のトンデモ発言。人間は歳をとるにつれて時間が早くなるんじゃなかったのか、あのあるあるの例外がこんな近くに居たとは。ぼくもニートの時はそういう時期あったけど。

『○くん、寝てる時でいいから、ワタシをやっつけて』

もう聞き飽きた。ぼくにあなたをやっつける義理はありません。仮にやっつけようとしてもあなたの生命力はぼくの命さえもおびやかす。あなたは今、娘に介護されてる現実と醜くなった姿を恥ずかしく、切なく、悲しく、苦しく思っているだろう。今のぼくはそんなことになったら耐えられない。あなたは耐えていて尋常じゃない。だから絶対にやっつけたくない、バーチャンは家でぼくの唯一の支えだった。ぼくはバーチャンの飯を食って育った。あのヒジキ料理しか入ってない夜飯を忘れられるはずがない。その思い出をやっつける訳にはいかない。あなたは振りまいた優しさのせいで、生かされているのだ。

ーーー
4年前 ぼくが成人式で帰ってきた時
『○くん大きくなったね 』と言った。
流石にぼくの身長は止まってたし、当時はバーチャンが小さくなっただけだろと思ってたけど。その後測った身体測定でぼくの身長はちょっと伸びてた。勝手にバーチャンが言霊をぼくに作用させた。ほんとに刃牙みたいなバーチャン。
ーーー

バーチャンは食事中、手がおぼつかず食べ物をこぼしてしまっていた。母はバーチャンに''こうしたらいいのに''と方法を教える。バーチャンは従わない。母は''だから、こうして食べればいいじゃん''と笑いながら教える。バーチャンは''わたしの食べ方で食べさせてよ''と言う。ぼくもその背中を押して''いいじゃんやりたいようにさせたら''とカッコつけた。10秒後、バーチャンはハチャメチャにこぼした。フォークとかもバコバコ落ちて店員さんが駆け寄ってきた。

ぼくはバーチャンがその時言ったセリフを
今後の全てに誓いたい。

『言うこと聞かないで自分流でしたら失敗した

ごめんなさい』

バーチャンは未だ成長過程。つまり最強だ。

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