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芸大生のレポート「十二音技法とトータル・セリエリズム」

 20世紀初頭、音楽界に革新的な変化をもたらした十二音技法は、その後、トータル・セリエリズムへと発展した。これらの技法は現代音楽を理解する上で重要な要素であり、共通点と相違点が存在する。

 十二音技法は、アルノルト・シェーンベルクによって確立された作曲技法であり、1オクターブ内の12の音を平等に扱うことを特徴としている。従来の調性音楽では特定の音が中心となり、他の音がそれを補完する役割を果たしていたが、十二音技法ではすべての音が均等に扱われ、調性からの解放を目指す。この技法では、12音を重複なく並べた「音列(セリー)」を用い、この音列を様々な形で展開して楽曲を構成する。また、音高だけでなく、リズムや音色、ダイナミクスなど、音楽のあらゆる要素を音列の順序に関連付ける厳密な規則が求められる。こうした手法によって、特定の音が他の音よりも支配的にならない音楽構造を構築し、より客観的で理知的な音楽表現を実現することが目的とされた。

 一方、トータル・セリエリズムは、十二音技法をさらに拡張した技法である。1950年代にピエール・ブーレーズやカールハインツ・シュトックハウゼンらの作曲家によって発展したこの技法は、音高のみならず、リズム、音色、ダイナミクス、さらには音の長さや休符、アーティキュレーションといった音楽のあらゆる要素を序列化して統制することで、十二音技法の厳格な規則を緩和し、作曲家がより自由に音楽を創造できるようにする柔軟性を持たせている。こうした手法により、音楽全体を統一された一つの原理で組織化し、高度な統一感と一貫性を持つ音楽作品を目指した。

 十二音技法とトータル・セリエリズムにはいくつかの共通点と相違点がある。まず、両者は音列や序列に基づいて音楽を構成する点で共通している。また、主観的な感情表現よりも客観的な音楽構造を重視する姿勢も共通している。しかし、十二音技法は音高に限定された序列化を行うのに対し、トータル・セリエリズムは音高以外の要素も序列化の対象とする。また、十二音技法が厳格な規則に縛られるのに対し、トータル・セリエリズムは柔軟な運用が可能で、作曲家により大きな自由を提供する点でも異なる。

 このように、十二音技法とトータル・セリエリズムは、20世紀の音楽に大きな影響を与えた作曲技法である。十二音技法が調性からの解放を目指したのに対し、トータル・セリエリズムは音楽のあらゆる要素を序列化し、より高度な音楽構造を構築することを目指した。


参考文献

桐朋学園大学音楽学部附属図書館「展示スクエア シリーズ「20世紀の音楽」第1回 入門 12音技法」8/21観覧 https://www.tohomusic.ac.jp/librarySite/tenji/dodeca_main.html

神戸芸術工芸大学「ダニエル・リベスキンドによる設計手法に関する考察ートータル・セリエリズムについてー」8/21観覧
https://www.mlib.kobe-du.ac.jp/bulletin/kiyou_old/09/thesis/08-01.html

森山直人編『近現代の芸術史 文学上演篇Ⅱ メディア社会における「芸術」の行方』(芸術教養シリーズ16)、藝術学舎、2014年

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