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目覚め

「…君は」
「お久しぶりです、姉さん。僕は貴女の弟、レキテネです」
「………おとうと…?」
「はい」
「…いもうと、ではないのかい?」
「?  弟、ですよ」
「弟…   ……  君は……おとこ、なのかい?」
「はい」
「……ねえ、この世界には、性別…というものが…存在、するの…?」
「…? はい」
「………そう   ………   ……ああ…なんだか、肩の力が抜けたよ」
「……?  目覚めたのは3日前だったそうですね。お見舞いが遅くなり、すみません」
「…いや、いいよ。この世界にいるということに慣れるまで、時間がかかったからさ。顔を上げて。敬語もいらないよ」
「…はい。敬語は、癖ですので。気になさらないで下さい」
「…そっか。まあ、君の楽にしてくれればいいよ」

・     ・     ・

「姉ぎみの様子はどうだったんだい?」
「…落ち着いていましたし、健康上も問題は見当たらないそうです。ただ、眠っている間、夢を見続けていたそうで、まだ現実を夢に感じると言っておりました。社会や通貨の概念も知らず、おおまかに説明したところ、これからどうやって生きていこう、とも…」
「…フム。ねえ、僕も君の姉ぎみに会いに行ってもいいかな」
「?   なぜでしょうか?」
「僕なら、退院後の生活のことで、何か助けになれるかもと思ってね」
「ですが、お仕事が」
「これくらい構わないさ。理由が要るっていうなら、いつも世話になっている礼ということで充分だろう?」
「…ありがとうございます」

幼い少女時代から謎の昏睡に陥り、病院の一室で眠り続けていたソールレイ。彼女は夢の中で少女ではなくなると同時に目覚めた。
その後訪ねてきたレイラにスター性を見出だされ、アイドルユニットに誘われる。
いざ立たせてみると、ソールレイはベッドからスクッと立ち上がった。不可解な昏睡の仕方をしており、夢の中と同じだけ筋力が成長していたのだ。病み上がりの人間の振る舞いではなかった。
ダンス映像を見せ踊らせてみると、飲み込みもセンスも良い。夢の中で社交ダンスを嗜んでいたこともあり、ぐんぐん上達した。
そんなわけで、急遽ソールレイはShootinのメンバーに加わった。男性の存在する世界に来たことで、性格も軽くなっていった。
ちなみにフリィとアズーラはレイラに対し丁寧な敬語を使うが、ソールレイだけは砕けた敬語で話す。こういった経緯と、社長秘書のレキテネの姉だからということもあるのだろう。

なお、レキテネと同じように、(株)Spark empressの一室に住み込んでおり、オフの時は発電技術向上のための実験、研究の手伝いをすることがある。

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