2020年ボカロ10選

「えっ、もう2021年も二十四分の一が終わったのに今さら昨年の10選やるんですか!?」
という声が聞こえてきそうな時期ですが、やり残してしまった宿題なので回収します。
先に選出曲リストを見たいというせっかちな方は、以下のリンクをどうぞ。

なお、選考対象、選考基準はいつものように、今年公開されたソフトウェアシンガー(VOCALOID、UTAU、CeVIO (AI)、Synthesizer V (AI)、Neutrino等)歌唱楽曲のうち「印象に残った曲、私自身が好きな曲」です。
それでは、いざ。

1. ただいまP / "STAY FOREVER" (1/23投稿)
2. かしこ。 / "プラリネ" (2/14投稿)
3. 40㍍P / "BEEP GIRL" (2/27投稿)

こちらの3作については上半期5選のときのコメントで書ききっちゃっているので、下記の記事を読んでくれればと思います。

2020年上半期ボカロ5選

4. れるりり / "ヤミタイガール"(5/22投稿)

私自身は人間界隈の曲にあまり詳しくないのでよくわからないのですが、椎名林檎リスペクトともっぱらの噂の本作です。
上半期5選を選出した後、夏頃にめちゃくちゃリピートしていたんですよね。
横ノリのビート、柔らかく艶っぽいベース、抜群にリッチで見通しの良いサウンドがいつまでも心地よいのです。

5. 伊根 / "ニヒラベット" (6/5投稿)

2020年最も話題になった新人Pと言えばこの方ではないでしょうか。圧倒的な技術とクールな作風が印象的な方です。
ジャンルはマスロック……で合ってます?(自信ない)
この方から1曲選ぶなら"回避性パーソナリティ"、"ラスターガスト"、"ルーセ"あたりがメジャーどころなのでしょうが、私が一番印象に残っているのは本作です。
何と言ってもスタッカートを多用したリズムの緊張感がとても気持ちいい!
そして英語的な響きの歌詞が乗っていることの多い伊根さんの作品の中で、本作は英語そのものの歌詞が多用されているところも、チャームポイントだと思います。

6. しめじ / "ドリームレス・ドリームス piano ver." (8/25投稿)

はるまきごはんさん作"ドリームレス・ドリームス"のピアノカバー作品。
本作はまさに正統派ピアノカバーといった風合いで、かつこの再生数(2021/1/17現在、わずか168再生)から抱くネガティブなイメージとは似つかない上質なアレンジとサウンドを備えており、原曲に負けない仕上がりになっています。
原曲は壮大で力強い雰囲気ですが、本作ではキーが下がり編成も小さくなっているため、穏やかでリラックスした雰囲気になっています。
ちなみにこの方はオリジナル曲も素晴らしく、美しく時に雄大な世界観は近年類を見ない出来なので、ぜひ一度聴いてみてほしいです。

7. kanaria / "KING" (8/2投稿)

本作は説明不要でしょう、2020年のボカロシーンから生まれた最大のヒット作です。
曲も詞もとにかくめちゃくちゃにダサい!(褒め言葉) ダサくないところが無いと言っても過言ではないくらいにダサい!(褒め言葉)
しかし何事も突き詰めれば芸術的なオーラを帯びてくるもので、本作もそういう突き抜けた魅力を有する作品だと思っています。
「これをダサいと感じるのは自分の感性が間違っているのではないか?」と思わせる徹底ぶりが、本作を名作たらしめている要素でしょう。
特に最初の2小節のモチーフは白眉で、世界で一番ダサいフレーズを書いてやるというkanariaさんの魂が伝わってくるようです。

8. かいりきベア / "ダーリンダンス" (8/30投稿)

こちらも今年屈指の大ヒット作なので説明不要かと思います。
かいりきベアさんを10選に選出するのは、実は初めてなんですよね。
ここ5年ほどで最も活躍されているボカロPのお一人ですし、私の好きな曲も多いので、自分でも意外でした。
さて本作の魅力ですが、スッキリ見通しの良い縦の線とギュウギュウに詰め込んだ横の線のコントラストを挙げておきたいです。
ドラム+ベース+ギター+ボーカルだけのシンプルな編成で鳴っているパートも多く、譜面を縦に見ると(往時のバブルロックあたりと比べて)スッキリしています。
一方、譜面を横に見ると、合いの手、キメ、転調……とギミックが次々と出てきて相当に詰め込んだ作りです。
縦がスッキリしているから何度もリピートできる薄味さを持っており、横が詰め込まれているから聴いていて飽きさせないという、高度な完成度の楽曲です。

9. TentaQle / "ブロークンハロー" (9/20投稿)

ジャンルはエレクトロニカ(でいいのかな、ギターが特徴的なので別のジャンル名がありそうですが……)。
TentaQleさんはこの2年ほどずっとエレクトロニカ系の作品を作り続けておられる方で、私も今年かなりハマった方です。
本作はその中で最も印象的だった作品なので選出しました。サビで強烈なキメを入れてドンと盛り上がるところがキャッチーで好きですね。

10. 香椎モイミ / "天誅" (12/17投稿)

鏡音レンボーカルのトラップ。有名どころだとNeruさんの"病名は愛だった"みたいな、遅いテンポのクラブミュージックですね。
香椎モイミさんと言えば、プロ然としたクオリティの高さとR&B的な濃い作風の印象が強い方です。
2020年末の3曲("ブーゲンビリア"、"しょってぃん"、本作)でテンションを上げた感じの曲をポンポンと投稿されたので、いよいよ天下を取りに来たかと密かに期待していますw
さて、本作にはまず歌い出し前の「Ah」が圧巻の調声で圧倒されます。
透明感と力強さを兼ね備えたこの声は、ポテンシャルをきちんと引き出された鏡音レン以外ではなかなか聴けない歌声です。
もちろん、曲の完成度、サウンドの良さについては、言うまでもなく一流の出来栄えです。
2021年はこういう香椎さんがたくさん聴けたら良いなあ……!

以下、あとがきです。

今回の10選は、投稿時期で見ると上下半期それぞれ5曲ずつ、再生数で見ると3桁再生からダブルミリオン作品までとかなり広範囲をカバーできたのではないでしょうか。
それにしても、2020年はAI合成の台頭、初音ミクの非VOCALOID化、りんごろうのうたのブーム、Ayaseさん(YOASOBI)の人間界隈での大ヒット等々、後々大きな節目として語られるであろう年でしたねえ。
(既に始まっていますが)2021年もこの勢いが続くような刺激的な1年になるよう願っています。いや我々が刺激的になるよう聴き続けていかねばならないのですけどね……!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?