甘い汗、夏の憧れ⑦ レギュラー
バレー部では、先輩たちが引退の季節を迎えていた。
私たちの代のレギュラーメンバーを選抜する時期がやってきた。
キャプテンの鈴木(すずき)。
エースの田江(たえ)。
私をバレー部に誘った中下。
それに日下部、三ツ木。
普通に考えれば、6人目は高井戸だった。
風間は体力がなく、肥後はパワーはあるが反射神経に鈍いのでレギュラー候補には入っていなかった。
だが、なぜか私がレギュラー候補に挙がった。
言われたことを一生懸命にやろうという姿勢を、評価されたらしい。
セッターを誰にするかのテストがあった。
私と中下が、交互にトスを上げた。
鈴木がアタックを打ち、私と中下のトスのどちらが打ちやすかったかを判断するテストだった。
この時、なぜか私は人生最高のトスをあげてしまった。
私のトスが打ちやすい、という話になった。
私はセッターは断った。
中下がセッターになった。
「なんで浅田が断ったら俺になんだよ~」
中下に嫌味を言われた。もしかしたら彼はセッターをやりたくなくて、わざと下手にトスをあげたのかもしれない。
高井戸がレギュラー候補から外されたのは、彼は調子が良いので(それが彼の持ち味でもあるのだが)練習をさぼり勝ちだったかららしい。
私はもちろん身長的にもアタックは打てないので、レシーバーになれとのことだった。
大国先輩にいびられていた時には考えられないことだったが、まさかの6人目のレギュラーに私がなってしまうことになった。