墓と坂道、糞漏らしの平穏⑦ 本尊

我が家には「草木の会」の本尊があった。
「御本尊」と呼ばれて立派な仏壇に掛けられ、母方佐々木家の祖父母も両親もその「御本尊」に向かって、日夜正座し合掌し読経し、熱心に日蓮の題目を唱えていた。

私も正座は辛かったが、兎に角両親が誉めてくれるので、題目はできるだけあげるようにはしていた。
素直な子、とよく呼ばれた。

一階の佐々木の家の御本尊の安置されている部屋…仏間は広く、山田先生の大きな写真が額縁に入れられ飾られていた。
そこではたまに、「草木の会」の近所の会員達が集まって集会を行っていた。
みんなで題目をあげるのだ。
幼い頃からの日常だし、みんな幼い私のことをかわいがってくれるので、決して嫌ではなかった。正座は辛かったが。

ある時…私が5歳の頃だったと思われるが、既に小学校に上がっていた姉が、きれいな頭飾りを付けながら、その仏間でダンスの練習をしていた。
母は受かれながら「草木の会の祭典があるの。山田先生もご出席されるの」と言っていた。

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