「きれいな手ですね」

取引先で打ち合わせを終えた後、担当の彼が言った。
ずっと気になっていた人に褒められて嬉しくなり、体温が上がった。

「あまり苦労したことがなさそうな手だと思って」
「あ、はは……」

膨らんだ気持ちはシュンと萎み、お茶と共に流し込むと舌には苦味が残った。
画像1