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Short Story

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140字までの掌編小説。ボツ小説のワンシーンを切り取ったり日常ネタなど。 不定期に思いつくまま書いています。 つぶやきと混同しないように全て画像つき。
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2023年9月の記事一覧

指先だけが繋がる手と手。前に伸びる大小の影。
少し肌寒いが暖かい風は頃合いだというように私たちの間を通り過ぎた。
どちらともなく手が離れ、影は別々に歩きだす。
一歩一歩離れるたび決断を鈍らせ、私はつい振り返る。
自分の将来へ迷わず進む彼の背中はそのまま雑踏の中へと消えていった。

向かいのマンションのベランダはずっと同じ洗濯物が干しっぱなしだ。
住人は遠目からでもわかる美人だった。でももう5日ほど見かけておらず、明かりも灯らない。
望遠鏡で確認すると部屋の床に倒れている人影。通報すると病気で倒れたらしく一命を取り留めた。
同時に今までの覗き見が露見した。