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ばんばん物語 2023

名前 のつづき)

実家の向かいにある溜池に、 毎年渡ってくる3羽のオオバン
名前は ばんばん(なつこいバン) まつい(見解をだすバン) よしむら(見解をうけて動くも自分の気持ちも同時に発生し葛藤するバン)。

母から飛来の知らせを聞くと、 ああ今年も無事にと、 春一番のよろこびをもらう。

それが今年は、 その溜池が工事かなにかで池の水が抜かれた状態がつづき、
ばんばんたちが来る頃も、 半分も水はもどらず、 それだからか、 いつもだったら戻ってきている時期がすぎても、 3羽の姿は池になかった。

もう今年は会えないのかと 母だけじゃなく わたしも落胆していたときに、
奇跡が起こった。

彼氏とのデートでパターゴルフにはまった妹が、 家から車で行ける距離に
パークゴルフ場があるのをみつけ、 母を誘いその場所へ行ったとき
ゴルフを終えたそのすぐそばに、 焼き鳥屋さんの出店を見つけた。
買って帰ろうと立ち寄ると、 その後ろにある小さな池に、 「えっ、 もしや!」
3羽のバンがいるのを、 発見する。

あの3羽に違いない 直感的に感じた母は、 「バンバーン!」 と呼びかけるも
3羽とも、 反応はなく 遠く離れたところにいて 動くことないままだった

ああそれでも、 いる場所がわかったと 今年も無事の飛来を確認できたこと
それだけでもう奇跡と 普段ならゴルフなんて来ることもなければ、
焼き鳥屋さんがそこに立っていなければ、 その奥の池にいる3羽の姿に気づくことも、 きっとなかった。 どこいにいるのだろうと、 思うばかりだったかもしれない。

その話を聞いたときは、 母の思いが通じたのだと、 もう水は戻ったから、 また戻っておいでと、 テレパシーで呼びかけるといいよと、 その報告を受け、 母と話した。

それでも、 3羽は家の方の池へはそれからも戻って来ず、 ときどき車でゴルフ場の池まで行くと、 そっちにはみんないるようで、 やっぱり今年はもうこのままなのか、 池の水がなかったことで、 ばんばんたちを戸惑わせたのかと、 母づたい、 わたしのこころも、 焼き鳥屋さんの奇跡はあれど、 寂しく痛んだ

そうして少したってから、 母から相談の連絡がくる
早朝に目を覚まし、 寝室の窓から池を望むと、 一羽のばんの姿があるのをわかり
急いで階下へ降り庭へ出たら、 もうその姿はないというのが、 何度か続いているということ。 自分は幻影を見ているのか、 なんなのかという相談で、 わたしもそれはなんだろうと、 じっと見てみる。

そうしてきた情報は、 なんなのか切ないもので
以前からもそうだったけど、 なつこいばんばんに対し、 あとの2羽は野鳥としてあたりまえだけど、 母の呼びかけも、 母が大盤振る舞いでふるまう鯉の餌も、 (最後の方は懐柔されるとはいえ、) いつもすっと引いた距離をとっていた。
この度わかったことは、 その、 2羽の目もあって なつこいばんばんは、 大っぴらに母のいる池には戻ってこれないで、 早朝を狙い、 母が朝に自分の存在を気づくのを待ってから、 その受信を感じてゴルフ場の池に戻るというのをしているということ。

母と直接交流してしまえば、 あとの2羽にそれが伝わり、 あなたあっちの池に行ってるやんとわかってしまう、 そのところから、 母に会わずして、 姿だけ見せ、 池に戻るという ばんばんの その気持ち…

バンの世界も 人間と同じなのかと なんともいえない思いになった

母へは、 それは幽霊でも幻覚でもないよと伝え
そうしてまた、 しばらくがたったとき

溜池に、 そのばんばんが、 戻ってきた!
例年の住処は、 池の奥の方、 家側と対岸のところに、 3羽皆でいるのだけど
その日のバンバンは、 母が鯉に餌をあげる、 その桟橋近くの橋の下で
まるで母が来るのを待っていたかのように、 そこにいた。

「バンバン!!」 歓喜のよびかけに、 こたえるばんばん
大急ぎ 鯉の餌を取りにゆき、 ばんばんに向けて粒を投げると
鯉たちのなか1匹だけ、 赤い色の鯉がいて 母はその鯉を「あかちゃん」 と呼んでは、 たくさんの鯉たちのなかで そのあかちゃんだけ特別あつかいしているのを、 自身も自覚をしている、 そのあかちゃんが、 びゅーんとその場へ突進してゆき、 ばんばんと母のあいだに立ちはだかり、 ばんばんが餌を食べるのをじゃましようとして、 ばんばんが近づけなくなるという、 そういったことも なんなのか起こった。

それでも、 もうその日から、 ばんばんはゴルフ場の池に戻ることなく、 溜池の方にとどまり、 あとの2羽はどうしているのか、 どう思っているのかはわからないまま、 完全に野生を忘れたかのような、 ハート全開の自由をばんばんは、 ばんばんに許可したかのように、 それは、 何かからの解放、 もう池の対岸にいることもなく、
家側の、 桟橋近くに待機して 母が来たら、 「アッアッ アッアッ!」 と、 まるで
つららの声とそっくりに、 ばんばんは、 鳴いて返事をするようになる

母がドアをあけたら、 遠くへいても、 全力で走るように泳いでそば近く、 表情がわかる距離まで近づいて、 いつからか あかちゃんのやきもちも、 あきらめか受け入れに変わり、 ばんばんは鯉たちに混じって、 いっしょにご飯を食べるようにもなった。

ばんばんのご飯の食べ方がまたすごく まいた餌の一番近くからじゅんに、 一粒一粒、 ていねいに食べ逃さないよう、 餌の粒をこつこつと食べていく。 ここにも、
ばんばんの鳥柄がうかがえるようで、 それを聞いて じわっとなる。

あとの2羽はどうしているのか、 気になり出したころ、 友人からランチの誘いを受けた母が、 何年振りかに行ったお蕎麦屋さんの前にある池で、 あとの2羽の姿を見つける。 その池は、 ゴルフ場の池よりも、 溜池からすぐそばの場所にあり、 そこまで戻ってくるのなら、 いつもの溜池に来たらいいのにとも思うけど、 それでも近い距離、 2羽の存在を確認できて、 3羽、 ばらけていないでよかったとなる。

そうして いよいよ 桜のころも過ぎ いよいよ渡りの時期が近づくとき
ばんばんは、 より積極性をもって、 ちょっとでも母の気配を感じたら
「アッ! アッ!」 と鳴いて、 母のとの会話や、 やりとりを求めるようになる

ちょっと大丈夫かなと ちゃんと飛び立つのかと このまま池に留まることになったらどうしようと あとの2羽のすがたも見えなくなって、 もしも置いていかれてたらと、 だんだん母は心配になり それを聞き、 ふたたびばんばん、 リーディングをすると  ばんばんは、 わかってた。

もう自分は旅立たなくてはいけない、 その迫りをよくわかっているからこそ
旅立つ前の最後の時間、 ちょっとでもいっぱい、 母との交流、 その体感の記憶を
つくって もってゆこうとしていた。  大丈夫。 ばんばんは旅立つ意識でいることを、 心配はいらないから、 へんにそっけなくする必要はないと、 母に伝える。


4月13日 池からばんばんの姿が消える

4月16日 父と母の結婚記念日

母が朝に、 家の向かいの畑へ出ると その瞬間、 母の頭上を、 3羽のバンが
渡りの方角へと向かい、 飛んでゆくのを その姿、 しっかりとわかる距離で見る

旅立ちのお別れを告げにきてくれたのをわかる


よかったね。 一羽で向かうことなしに、 まついとよしむら、待っててくれた
さらには、 母へのお別れの挨拶、 いっしょにつきあってくれた

その知らせを聞いたとき もうもう、 胸がいっぱいになった。


ばんばん物語 2023。
来年は、 どんな話を 知ることができるのか
3羽とも どうか無事で、 どうか元気で
今年も、 しあわせを よろこびを ありがとう。


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