File.09 唯一無二のイリュージョンで、楽しみながら世界に挑む ZANGEさん(パフォーマー)
ダンスやジャグリングの芸は数あれど、その中でも人間離れした身体の動きとさまざまな道具を組み合わせて視覚のイリュージョンを作り出すのがZANGEさん。現在リーダーを務めるXTRAPというチームでは、SNSでの発信に力を入れ、着々と世界中にフォロワーを増やしている。
ZANGEさんとXTRAPについて、活動のこれまでとこれからを伺った。
取材・文=青木直哉(「旅とジャグリングの雑誌:PONTE」編集長)
——まずはZANGEさんご自身のことを教えてください。
普段はショーアーティストとして、企業の式典、各種イベントに出演しています。ジャンルは、ストリートダンスがメインですね。ソロでは主に、不思議な動きをするアニメーションダンス、軟体系の技、水晶玉を操るコンタクトジャグリングを織り混ぜています。僕がリーダーを務めるXTRAPというチームでは、フィンガータッティングという指を使ったダンスをメインにお見せしています。TikTokやYOUTUBEなどインターネットで映像作品を発信したり、CM案件も頂いていますね。
——ZANGEさんがダンスを始めたきっかけはなんでしたか?
1998年の紅白歌合戦に、DA PUMPが出ていたんですよ。歌の間奏で、少しだけロボットダンスのような動きをやっていて。それに憧れて母親にダンススタジオに連れて行ってもらったのがきっかけですね。でも当時はダンスの名前もわからなくて、とにかく、DA PUMPのやつをやりたい、と言ったら「ヒップホップやね!」と言われて半年ぐらいそれを習いました。でもそれって、僕が憧れたのとはまた違うジャンルで……。やりたいのこれじゃないねんけどな、ってずっと思っていました(笑)
——当時は情報も少ないですもんね。
そうですね。それでちょっと熱が冷めた頃に、Panicrewというグループのダンスをテレビで見た時、まさに僕がやりたかったダンスをやっていたんです。「やりたかったの、これや!」と思いました。次にスタジオに行った時「Panicrewのやつをやりたい」と言ったら「ああ、ポッピンや」ということで、そこから、今のメインのスタイルである、「ポッピン」というダンスをやり始めました。
——スタジオにはどれぐらい通っていたんですか。
数年でやめて、あとは街中にあるダンサーのたまり場みたいなところで友達を作って、自己流で練習をしていましたね。
——パフォーマンスを始めたのはいつごろですか。
ダンスを始めて10年目くらいで、これで食べていきたいという思いが強くなりました。ある時思い立って大阪の京橋駅にスピーカーを持っていって、とりあえず踊り始めたんですよ。300円ぐらいでDVDも売ったりして、それが最初ですね。
——いつから道具と組み合わせるスタイルになったのでしょう。
路上でダンスを毎日1年ぐらいやっていたら、当時東京に住んでいたミスターバードさんという大道芸人の方が見に来てくれました。この方もアニメーションダンスとコンタクトジャグリングをやっている方です。ZANGEくんのダンスに合うから使ってみなよ、と言って、持っていたクリスタルボールをくださったんですよ。
——運命的な出会いですね。
それからすぐに、今度は僕が東京に行って、泊まり込みでミスターバードさんにいろいろと教えてもらいました。その頃関東では、同じようにクリスタルボールを使っていたCHIKIさん、keraさんといった大道芸人の先輩たちがいて、全員のところに連れて行ってくれました。その先輩たちをYouTubeで見て練習するところから、自分なりの使い方を模索し始めましたね。
——パフォーマンスの仕事が軌道に乗ってきたと思えたのはいつごろですか。
2009年にアメリカのアポロシアターという劇場で行われるコンテストで優勝しました。それから2011年ぐらいに、関西の大道芸コンテストでもいくつか連続で優勝が取れて。再び挑戦したアポロシアターで、今度は5大会連続で優勝できたりもして。その頃かもしれません。まだまだいけるんちゃうかな、って………。今思えば勘違いみたいなものなんですけど(笑)
でもそれぐらいから、ショーでも自然と笑顔が出るようになりました。
——XTRAPのメンバーとはどういうきっかけで出会ったのでしょう。
ある時期から、日本のフィンガータッティングを代表するNARIくんというダンサーのレッスンに通っていました。そこには、今のXTRAPのメンバーであるRYOGAくんも毎週通っていたんですね。いつかの帰り道に、フィンガータッティングをショーナイズしたらきっと面白くなるから、興味があったらRYOGAくんも誘ってやってみませんか、という話をNARIくんにしたんです。すると、興味を示してくれて。それがきっかけでオリジナルのXTRAPが結成されました。事情があってNARIくんは途中で抜けちゃったんですが、今度は同じくレッスン生だったKENSHINが代わりに入ることになり、今のメンバーになりました。
——あの複雑な振付は、どのようなプロセスで作るのでしょう。
まずはいい曲を選んできて、それから振付に進んでいきます。基本的には即興をしながら組み上げていくことが多いですが、一番フィンガータットが得意なRYOGAくんに振り付けを任せることもあります。彼のセンスを信頼している、というところも大きいですね。
——意見が合わなくて喧嘩をしたりはしますか。
実は、みんなおとなしい性格なので、喧嘩はないんです(笑)
でもやっぱり週5日ぐらい一緒にいて、ちょっとイライラし始めたら、いったん2日ぐらい休んだりもします。そのバランスはうまく取れていると思います。
——XTRAPの皆さん、みんな楽しそうにやっているな、という印象があります。
ショーをさせてもらう上で、お客さんを楽しませるのなら自分も楽しまないと、という意識にたどり着いたことが大きいですね。今は自分が楽しんでいる姿を見せて、お客さんにも楽しんでもらう、というスタンスでショーを作っています。
——なにか今後の展望はありますか。
XTRAPを結成した時には、「ラスベガスで劇場公演をやりたい」という目標がありました。でもラスベガスのショービジネスは今止まっているので、それにずっとこだわっていても前に進まない。コロナの時期だけでも何か目標を作ろうと、TikTokのフォロワーを今年中に250万人に増やす、という目標を立てました。劇場公演がこれからどういう形になっていくかはまだ分かりません。でも状況を探りながら、今はインターネットを通じて、「XTRAPのパフォーマンスを見たことがある」という人を増やしていけたらと思っています。
また、XTRAPとは違う名義で、大量のLEDを使う、6人のグループを作りたいと思っています。360度から観られる派手なサイバーショーを作りたくて。その資金には、まさしくAUFから頂いた助成金も充てさせていただいて、とても助かっています。今の状況が続けば、間隔をとるために、同じ人数を集めるのにも会場が大きくなるかもしれないですよね。すると、小さいショーのままではお仕事がいただけないかもしれない。そんな危惧もあるので。
——コロナウイルスの影響は大きかったということですね。
とてもありましたね。仕事は「イベント:映像」が、ソロで9:1、XTRAPは6:4という感じですが、イベントの仕事はほぼすべてなくなりました。それに映像の仕事でも、必要な機材が届かずに流れてしまった案件もあります。
さすがにイベントが軒並みキャンセルになった時は、どうやって生きていったらいいだろうと考え込みました。
でも一緒にアイデアを出せる仲間がいて、フォローし合うことができたのは、とてもよかったなと思います。一人だったら精神的にやられていたかもしれないです。それに、助成金をいただけたことで、気持ちの面でもとても救われました。アーティストって、自分の心に余裕がないと、いいものを作れないと思うんです。
未曾有の感染症拡大においても、チームで助け合いながらたくましく活動の場を広げて、躍進していくZANGEさんとXTRAPの皆さん。
「まずは自分が楽しむことから」という哲学のごとく、人を笑顔にする前向きなパワーを感じた。
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ZANGE(ざんげ)
2008年にストリートパフォーマーとして活動を始め、2009年にニューヨークアポロシアターの大会「アマチュアナイト」優勝。2011年には同じ大会「アマチュアナイト」で5大会連続優勝。2015年にはパフォーマンスグループ「XTRAP」エクストラップを結成し、2017年には海外オーディション番組「アジアズゴットタレント」に出演、セミファイナルまで進みました。同年に日テレ「嵐にしやがれ」「スッキリ」などに出演し、現在はTikTokでパフォーマンスを発信し、フォロワー180万人を獲得。
instagram https://www.instagram.com/zange_xtrap/
ツイッター https://twitter.com/zange402
XTRAP公式サイト https://xtrap.jp/
XTRAP YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/user/zangeofficial
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