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Cadence Design Systems(CDNS)Products,24’2Q決算内容,Press Release,カンファレンスコール

EDA(Electronic Design Automation)電子設計自動化 (※ICやプリント基板などの電子システムの設計、シュミレーション、検証を自動化するためのソフトウェアやツール手法を指します。)市場でSynopsysと並ぶ2大巨頭であるCadence Design Systemsの24’2Q決算内容を見て行きたいと思います。

CadenceはSynopsysと比べて特にPCB設計(プリント基板設計と呼ばれ電子デバイスの基礎を構成する重要な工程です)やパッケージ設計分野で強力なツールを提供しており、システム全体の設計と検証に重点を置いています。

専門の方でない限り正直ピンと来ないと思いますので、先にこのCadenceが他社よりも圧倒的に評価されている部分であるPCB設計という技術について説明したいと思います。

※個別銘柄に言及する内容が含まれますが筆者の経験と知識を基に見解を述べているもので売買を推奨するものではありません。この先に進まれる方はこの件に同意されたものとみなさせていただきます。


PCB設計とは

下記にCadenceが得意とするPCB設計の主要ステップを説明いたします。

  1. 要件定義:電子デバイスの性能、物理的な制約を定義します。このステップでは基本的な仕様と制約条件を明確にします。

  2. 回路設計(スキマティックデザイン):回路図を作成しどのような部品がどのように接続されるのかを決定します。これはデバイスの論理的な接続を示すもので後の物理設計の基盤となります。

  3. コンポーネントの選択:必要な電子部品(抵抗、コンデンサー、ICなど)を選定しそれぞれの仕様を確認します。これには部品のサイズ、形状、電気的特性などが含まれます。

  4. レイアウト設計:実際に基板上に部品を配置し配線を引くプロセスです。このステップでは部品間の電気的な接続が正確であり、かつ信号の伝送特性や電力供給が最適化されるようにします。

  5. シグナルインテグリティおよび電力インテグリティ解析:配線による信号の遅延やノイズ電力供給の安定性を評価します。これにより高速信号の伝送や電力供給の効率が確保されます。

  6. デザインルールチェック(DRC):設計が製造可能であり、設計ルールに従っている事を確認します。DRCは設計の誤りを検出し製造時の問題を防ぐために重要です。

  7. 製造データの生成:最終的な設計データを製造業者に提供するためのデータを生成します。これにはガーバーデータ、ドリルデータ、部品票(BOM)などが含まれます。

PCB設計ツールとPCB設計の重要性について

PCB設計には下記のような専用のEDAツールが使用されます。

  • Cadence Allegro:高度なPCB設計ツールで大規模で複雑な設計に対応します。〈Cadenceが独自に開発した高度なソフトウェアであり、業界標準のツールとして広くしようされております〉

  • Altium Designer:使いさすさと高度な機能を兼ね備えたツールで広範なユーザー層に対応します。

  • Mentor Graphics PADS:中小規模の設計に適したツールで高いコストパフォーマンスを提供します。〈SiemensのEDA部門であるMentor Graphicsが提供するハイエンドのPCB設計ツール〉

専門分野の為私含めほとんどの方が聞きなれないと思い、Cadenceがなにを得意としていて業界の中で重要視されているのかをまず説明させていただきました。次に実際に私たちの身近などういった製品にこのCadenceのEDAツールが使用されているのかを説明したいと思います。

  1. Consumer Electronics部門:スマートフォン、タブレット、PCなどこれらデバイスにはPCB設計が中枢機能として利用されておりプロセッサ、メモリ、各種インターフェイスを接続します。また家電製品(TV、冷蔵庫、洗濯機)の内部で制御回路や通信モジュールを統合しております。

  2. 自動車産業:エンジン制御ユニットにPCB設計が利用されております。車輛のエンジンパラメータを管理し、オーディオやナビゲーションシステムの統合にも機能しております。また自動運転技術の実現に向けたセンサーやカメラの制御にも利用されております。

  3. 通信機器:ルーターやネットワークスイッチに於けるデータ転送と接続を管理したり、無線通信のインフラを構築するのに利用されております。

  4. 医療機器:MRIやCTスキャナーの制御と画像処理の部分に貢献、健康状態のモニタリングにも一役買っている電子設計です。

  5. 航空宇宙及び防衛:航空機全般の通信、ナビゲーション、エンジン制御システムの電子設計に利用されております。

このようにCadenceが得意としているPCB設計は多岐にわたる分野で私たちの生活に密着している不可欠な技術であり、各種電子機器の基盤となっております。

Cadenceのビジネスモデルについて

Cadenceの収益源は主にソフトウェアライセンスによる収入、サブスクリプションサービス収入、メンテナンス及びサポートサービス収入、トレーニング及びコンサルティングサービス収入、クラウド及びAIサービスなど多岐に渡っておりますがメインとなっているのはライセンス収入やサブスクリプション収入のようです。10億ドルを超える売上を誇るCadenceの理由と背景を説明いたします。

  1. 広範な顧客基盤:半導体メーカー(AMD、NVIDIA、Intel、Qualcommなど)や電子機器メーカー(Apple、Sony、Huawei、Microsoftなど)通信機器メーカー(Cisco、Ericsson、Broadcomなど)といった世界的企業が顧客であり、安定した収益源を確保しております。

  2. 多様な製品ポートフォリオ:Cadenceはデジタル設計、アナログ設計、システム検証、PCB設計など様々なEDAツールとソリューションを提供しており、これらのツールは多くの設計プロセスで必須とされております。

  3. サブスクリプションモデル:上記の様に多くの企業がサブスクリプションモデルを利用している為、継続的な収益が得られます。サブスクリプションモデルは企業が常に最新のソフトウェアを利用できるようにし、定期的なアップデートとサポートを提供します。

  4. 高度な技術とイノベーション:AIや機械学習を活用した最新の技術を提供しており、これが顧客にとって魅力的な選択肢となっております。例えばCadence CerebrusやChipGPTなどのツールは設計効率を大幅に向上させる為、多くの企業がこれらのソリューションを採用しております。

  5. グローバルプレゼンス:Cadenceは世界中に顧客を持っており各地域での需要に応じたサービスを提供しております。これにより地域ごとの経済状況に影響されずに安定した売り上げを確保できます。

Cadence 各国売上比率、製品プロダクト別売上比率

24’2Q決算内容、24’3Qガイダンス、通期ガイダンス

Revenue 1.06B(10億6000万$)Consensus 1.04B(10億4000万$)
Beat 0.02B(2000万$)Y/Y+6.8%
EPS nonGAAP 1.28$ Consensus 1.23$ Beat 0.05$ Y/Y+4.9%
2QBacklog(2Q終了時の受注残)6B(60億$)Y/Y+11%

24’3Qガイダンス
Revenue 1.165B~1.195B(11億6500万$~11億9500万$)
Consensus 1.20B(12億$)miss 0.03~0.05B
EPS nonGAAP 1.39~1.49$ Consensus 1.60$ miss 0.1~0.2$

24通期ガイダンス
Revenue 4.6B~4.66B(46億$~46億6000万$)
Consensus 4.6B(46億$)Beat 0~0.06B
EPS nonGAAP 5.77$~5.97$ Consensus 5.93$ miss 0.06

Cadence 24'2QResults、3Qガイダンス、通期ガイダンス

この発表を受け発表当初は株価がAHでかなり乱高下しましたが、ほとんど織り込み済だったように思え当日ザラ場の安値とほぼ同じでした。
AH終値で282$(前日比+0.73%)

Cadence 24’2Q Key Point

24’2Q Key Point

  • BETA CAEの買収を完了し、電磁気学、電熱、CFD、構造解析ソリューションを網羅する包括的なマルチフィジックス・プラットフォームを提供。

  • 主要な長期開発パートナーは、次世代AI製品のロードマップを実現するためにPalladium Z3を幅広く導入し、検証におけるケイデンスのリーダーシップをさらに強固なものにしました。

  • IPビジネスは、AI、3D-IC、HPCアプリケーションが最先端ノードにおけるIPタイトルの需要を喚起し、力強い勢いを維持しています。

ここまで見てる限りではほぼConsensus通りの決算で特に何か違和感等を感じる様な点はありませんでした。株価も決算前にほぼ織り込み済だったので大きなサプライズも無く、無風通過という感じだったのではないでしょうか。(後は今日のプレ、ザラ場をみたいと思います)

カンファレンスコール

Anirudh Devgan - President & CEO

ハイパースケール・コンピューティング、5G、自律走行など、AIのスーパーサイクルに支えられた世代的なトレンドは、特にデータセンターと自動車を中心に、複数の垂直市場において力強い設計活動を推進しています。

チップの複雑化が進み、システム企業が独自のシリコンを構築するようになったことに加え、こうしたトレンドは当社の差別化ソリューションに大きな追い風となっています。 当社は、インテリジェント・システム設計戦略を堅実に実行し、コアEDAにおけるリーダーシップを拡大する一方、新しいシステム設計解析分野での足跡を着実に拡大しています。

顧客は、AIを活用したオートメーションへの研究開発費を増やしています。 当社のCadence.AIポートフォリオは、比類のない結果品質と生産性の利点を提供し、受注が昨年の3倍以上に増加するなど、勢いを増しています。

当社のソリューションは、半導体およびシステム分野における大規模なAIインフラ構築を可能にしています。 さらに、EDA、SDA、デジタル・バイオロジーの各ソリューションにAIを組み込み続けています。

第 2 四半期には、当社の長期的な開発パートナーである NVIDIA 社が次世代 AI 製品ロードマップに対応するため Palladium Z3 を広範に導入し、業界におけるケイデンスのリーダーシップがさらに強固なものとなりました。

また、ある大手ハイパースケーラは、Cadence.AI EDA、SDA、およびハードウェア・ポートフォリオの幅広い普及を通じて、第2四半期にケイデンスとのパートナーシップを大幅に拡大しました。

インテグリティは、TSMC のすべての最新 3D ファブリック製品で認定され、階層型 3D-IC 設計のようないくつかの新機能を実現しました。

〈Integrity 3D-IC PlatformがTSMCの全ての最新製造技術において公式に使用され、信頼性が確認されたことを意味します〉

また、スタック・チプレットの設計者によるアセンブリを加速するサムスン・ファウンドリーのマルチダイ・インテグレーション製品すべてでインテグリティが有効になったことも発表しました。
さらに、Intel 18Aテクノロジーとシームレスに動作するように最適化された、完全なIntel Foundry EMIBアドバンスト・パッケージング・リファレンス・フローをリリースしました。

当社のAI主導型検証プラットフォームであるVerisiumは、クアルコムをはじめとする市場を形成する複数の顧客がVerisium Sim AIを使用してカバレッジの最大化に成功し、検証作業時間を最大20倍短縮するなど、顧客による急速な採用が続いています。
当社のシステム設計・解析事業は、第2四半期も好調な勢いを維持し、前年同期比20%の増収を達成しました。

デジタル IC およびカスタム事業は、当四半期も堅調に推移した。
最先端ノードにおける当社のデジタル・フルフローの普及は続いており、特にハイパースケーラでは、過去12カ月間で40件近いフルフローの受注を獲得しました。
400を超えるテープアウトを達成し、PPAと生産性の面で驚異的なメリットを提供し続けているため、顧客は業界をリードするAIツールであるCadence Cerebrusへの信頼を高めています。

たとえば、ケイデンスのセレブラスは、世界的な大手システム会社で最大10%のPPA向上を実現しており、現在では最先端ノードの最新設計のデフォルト・フローの一部として導入されています。
サムスンのファウンドリは、DTCOとインプリメンテーションの両方でケイデンスのセレブラスを活用し、SF2ゲートのオールラウンド・プラットフォームでリーク電力を10%以上削減しました。

〈データセンター向けの半導体設計はSynopsysの方が優れているイメージを持っておりましたが、AIツールを利用したCadence CerebrusやVerisiumによって遜色ない立ち位置になって来たイメージが湧きました。
また、TSMCの最新製造技術においてIntegrityが公式に使用される事になった点もかなりの躍進なのではないでしょうか〉

John Wall - SVP & CFO

ケイデンスの2024年第2四半期の業績が好調で、上半期の受注残が約60億ドルに達したことをご報告できることを嬉しく思います。
〈※前年同期比のBacklog(受注残)は約5.4B、Y/Y+11%〉
また、第2四半期にはBETA CAEの買収を完了し、マルチフィジックス・プラットフォームを拡大しました。

以下、P&Lから第2四半期の財務ハイライトを紹介する。
総売上高は10億6,100万ドル。 GAAP基準の営業利益率は27.7%、非GAAP基準の営業利益率は40.1%、GAAP基準のEPSは0.84ドル、非GAAP基準のEPSは1.28ドルであった。

次に貸借対照表とキャッシュフローについて。 当四半期末の現金残高は10億5,900万ドル、債務残高は元本13億5,000万ドル。
営業キャッシュフローは1億5,600万ドルでした。 DSOは49日で、第2四半期に1億2500万ドルをケイデンス株の買い戻しに充てました。

2024年の最新見通しは、売上高が46億ドルから46億6,000万ドルの範囲。 GAAPベースの営業利益率は29.7%から31.3%の範囲。
非GAAPベースの営業利益率は41.7%から43.3%の範囲。
GAAPベースのEPSは3.82ドルから4.02ドルの範囲。 非GAAPベースのEPSは5.77ドルから5.97ドルの範囲。

営業キャッシュフローは10億ドルから12億ドルの範囲であり、年間フリーキャッシュフローの約50%をケイデンス株の買戻しに充てる予定である。
これを踏まえ、第3四半期の売上高は11億6,500万ドルから11億9,500万ドルの範囲と予想しています。

GAAPベースの営業利益率は27.7%から29.3%の範囲。 非GAAPベースの営業利益率は40.7%から42.3%の範囲。

Charles Shi - Needham & Company(この方の質問)
今年の見通しが上方修正されましたが、その一部はBETA CAEによるものです。 しかし、もっと広い意味での疑問は、半導体の世界的な売上高が、あなたやあなたの同業他社と比べて、かなり速いペースで伸びていることです。

しかし、AIが半導体の大きな原動力となっている今、ケイデンスが半導体全体、特にAIからもう少し大きなパイを得ることができるのは、価格設定なのか、それとも他の手段なのか、疑問に思っています。
今日、何かお考えがあればお聞かせください。

Anirudh Devgan - President & CEO
長期的な質問をされましたが、一歩引いて考えていただければ、13%以上の増収と42.5%の営業利益率を見込んでいます。
これは収益成長と営業利益率の両方でクラス最高の組み合わせだと思います。 また、過去3年間のCAGR(年平均成長率)を見てみると、これは私たちが好きな指標のひとつですが、成長とマージンの拡大という点で、これもかなり好調です。

昨年は伸びなかったが、今年は伸びそうで心強い。
しかし、ご存知のように、チャールズ、私たちは顧客の収益よりも研究開発費の方が大きいのです。 もちろん、収益が上がれば研究開発費も増えますが、一般的には、当社の顧客はシステム・メーカーも半導体メーカーも研究開発費を使い続けており、これらは長期的なプロジェクトです。

半導体の収益が全体的に改善していることは心強いことです。
また、受注残をご覧いただければわかると思いますが、かなり健全な受注残を維持しています。 ですから、全体的には順調に推移していると思いますし、このAIは広がりを見せています。
つまり、皆さんもよくご存知の通りです。 AIはデータセンターだけでなく、自動車、携帯電話やPCのようなエッジコンシューマ機器にも広がっています。 ですから、全体的には、この業界について、そしてもちろん、デザイン・ソフトウェアの不可欠なプロバイダーとしての当社の位置づけについて、非常に良い感触を抱いています。

Vivek Arya - Bank of America Securities(この方の質問)
下半期の予約や受注残の動向についてどう考えているのか、お聞かせください。 受注残は60億ドル前後で推移すると予想すべきでしょうか?
それとも回復に向かうのか? 私が理解しようとしているのは、ここから売上が加速すると考えるべきなのか、それともこれが会社の持続可能な成長率のようなものなのか

Anirudh Devgan - President & CEO
今回は前述したような理由から、より後方への負担が大きくなっています。 また、第2四半期のようなカーブの形状を考慮し、より慎重な収益見通しを立てています。
ですから、今年とここ数年の違いは、カーブの形状を考慮し、ジョンが言ったように、収益ガイドをより慎重にしていることだと思います。

John Wall - SVP & CFO
基本的にハードウェア・システムに対する需要は旺盛です。
すべての事業が好調です。 また、ご質問の件ですが、BETA CAEを加えても、収益ガイドを引き上げているわけではありません。
基本的には、つまり何が改善されればいいのかというご質問であれば、それは中国の売上比率だと思います。
第1四半期は12%、第2四半期は12%でした。 第2四半期は第1四半期より改善し、通年でも改善が続くと考えている。
しかし現時点では、ガイダンスの中間点を達成するためには、中国が13%に達する必要があると想定している。

Harlan Sur - JPMorgan(この方の質問)
HBM制御ロジックチップは、最先端技術と高度なチップ設計に移行しています。 同様に、NANDのお客様の中には、CMOSの周辺回路をアレイに接合するような方向に進んでいるところもあります。

また、周辺チップも同様に、先進的なデジタル設計へと移行しています。
では、Virtuosoの先進的なデジタル実装・検証製品は、メモリの顧客により多く採用され始めているのでしょうか?

Anirudh Devgan - President & CEO
私たちは幸運なことに、すべての主要なメモリー会社と深く長いパートナーシップを結んでいます。
少なくとも3つの大メモリ会社と、その次のレベルには2つの会社があります。 しかし、全体的に見れば、私たちは......あなたがおっしゃったように、Virtuosoが私たちの強みであり、あらゆるメモリ実装のためのプラットフォームです。

実際、メモリ会社では、デジタル設計が以前から行われていましたが、今はもっと増えています。 TSMCの技術をメモリに統合する傾向もあります。

また、TSMCとの強力なパートナーシップは、メモリーメーカーとの取引にも役立っています。
ご存知のように、3大メモリ会社であるTSMCは3D-ICをより多く手がけており、メモリ層が8層から12層になるなど、最先端の3D-ICを実現しています。

私の準備した発言でも、例えばサムスンとのパートナーシップや3D-ICについて触れました。
また、メモリーにおける他の2大プレーヤーについても同様です。
ですから、私たちはメモリと、HBMと3D-IC統合という新たなトレンドにおけるポジションに満足しています。

※補足説明、最先端の3D-IC技術とは?:従来の2D平面上に配置された回路を超えて複数のチップを垂直に積層し相互接続する事で実現する技術。
性能向上、省電力、小型化、多機能集積とまさに最先端技術の集合体でCadenceはこの分野でのリーダーシップを確立させるために最新の3D-IC技術を採用し、設計ツールを提供しております。

まとめ

一通りカンファレンスコールを読みましたのでまとめたいと思います。

Cadenceのビジネスモデルはライセンス料やサブスクリプションがメインなので広域的にシステムツールが利用されても、NVIDIAの様に収益が爆増するわけではありません。

そういった点では投資家として見栄えがあまり良くないかもしれませんが、この事業を30年も続けてこられている同社・・・
常に新しい技術に挑戦されており、この厳しい環境下でトップレベルの顧客層や技術面での認可は素直にリスペクトしかありません。

〈第 2 四半期には、当社の長期的な開発パートナーである NVIDIA 社が次世代 AI 製品ロードマップに対応するため Palladium Z3 を広範に導入し、業界におけるケイデンスのリーダーシップがさらに強固なものとなりました。

また、ある大手ハイパースケーラは、Cadence.AI EDA、SDA、およびハードウェア・ポートフォリオの幅広い普及を通じて、第2四半期にケイデンスとのパートナーシップを大幅に拡大しました。〉

前記のCEOコメントにもある通りNVIDIAがSynopsysではなくCadenceのツールであるPalladium Z3を選択したという点には一旦驚きました。しかしこのシステムの性能が最先端のAIやオートモーティブ、データセンターアプリケーションに必要な高いスループットと容量を提供できる理由で選択をした様ですので、今後のNVIDIAとCadenceは強力体制をより拡大していく事が見込まれます。

また、CadenceはSamsungやIntelとも協業を深めており更なる収益の安定化と成長が見込まれると思います。
3月に買収を発表したBETA CAE Systemsの買収によって自動車、航空宇宙、産業、ヘルスケアのポートフォリオを拡大できる可能性が高く、SynopsysによるAnsisの買収に対抗し得る可能性が高まったと考えられます。

下記の様に2030年までにEDA市場はCAGR 10%で成長していくと予想されており、Cadenceは今期の様な革新的進歩によりマーケットリーダー企業になる可能性が十分に高くなったと思います。

EDA市場 CAGR 10.5%

さて、実際の株価ですが今期の決算は既に織り込まれており来期ガイダンスもあまり良くはありません。カンファレンスコールにもありましたが24’4Qにかなり集約されている通期予想なので、株価が上振れるようになるにはここのガイダンスが織り込まれ始めることが必要なのではないでしょうか!?

上記した通りTSMCとの強力なパートナーシップやNVIDIAとの協業など、1Qには見られなかった功績がでてきております。
このままSynopsysが黙っている訳は無いと思いますが、このままCadenceがリーダー企業に近づいてくればおのずと株価も躍進してくるでしょう。

そういった期待や安定度を見て市場はガイダンスが悪くても投げ売りをしなかったのではと推測いたします。

長くなってしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました。
※スキやコメント、オススメ記事 執筆のモチベにつながりますので是非ともよろしくお願いいたします。

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