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生命の源泉

〜関わり〜【2】

 そういえば、しばらく釣りに行っていません。

 小学校から二〇代の半ばまで当時の友達や家族と川釣りに行っていました。
 川釣りと言っても人によって好みが違うのは面白い所です。
 ボクはどちらかと言うとウキ釣りでエサの付け替えをしたりウキ下の調節をしたりして様子を見ながら釣るのが好きでした。大物を狙うより細くてしなやかな竿の当りを楽しむ感じです。竿が敏感だとたいして大きくなくても引きを楽しむことが出来ます。いわゆる雑魚狙いです。フナでもコイでもナマズでも、釣れれば何でも楽しいのでした。

 父も色々工夫していた様ですが、メインはリールの投げ釣りです。そこそこ大きな川の流れを目がけて仕掛けを投げます。吸い込みと言われるバネのような仕掛け針ではなく大きめの針にエサをつけていたのではなかったかと思います。断然大物狙いで、リールで仕掛けを投げた後は少し巻き上げてじっと竿先の動きを注視していました。ある時、かかった魚が大きすぎて岩の下に潜り込まれて上がらなくなったので、竿をそばで釣っていた人に任せ、川を泳いで引き上げたと言う逸話があります。大きなコイを無事上げたとか。「そこまでやる?」とボクは若干飽きれましたが、そんな情熱がボクに欠けているのかもしれません。

 友達の釣り方は吸い込みを使った投げ釣り。ほとんどがダムや池でした。たくさんの針がついたバネのような仕掛けにたっぷり餌をつけて玉にし、深み目がけて投げ込みます。投げた後はおしゃべりしたりくつろいだり、暇だからと言って何本も竿を出していたりしました。

 海釣りが面白いと思うようになったのは、田舎町に移住して来てからのことです。内陸部なので海までは車で2時間以上かかります。ガソリン代が高くなったこともあって最近出かけていませんが、こちらで仲良くなった友達の提案で時々出かけるようになっていました。エサ代さえあれば一日楽しめるからという理由です。
 海は何が釣れるか解らないのでワクワクします。もともと川で雑魚釣りばかりしていたボクは、海でどんな魚が釣れるのかということがとても楽しみでした。ところが、釣具屋でエサが欲しいと告げると「何が釣りたいの?」と聞かれてちょっとビックリしました。何が目的なのかによってエサが違うのだとか。川釣りでは練り餌を使えば渓流魚や鮎でもなければ何でもかかって来たけどなぁと思いつつ何を釣りたいのか決めてなかったので困ってしまったのでした。そして友達のアドバイスで買うのは大抵アオイソメ。ボクらは護岸からリール竿で釣りするのが常でした。カレイとかアイナメとかキスとか…結局色んなものが釣れるわけです。
 そんな友達も東京へ行き、ガソリン代も上がり、なかなか時間も作れなくて最近は釣りもご無沙汰になりました。

 そもそも釣りを始めたのはいつだったかと考えてみました。たぶん幼い頃に祖父に教わったのではなかったかと思います。村はずれの茅葺き屋根の祖父の家の前には川が流れていました。まるで大きな桃でも流れて来そうな川です。幅は一・五メートルくらい。深さは一メートルくらいはあったでしょうか。おそらく田んぼに水を引くための農業用水で川岸には細長い葉の植物がびっしり生えていました。幼かったボクは恐ろしく深い川に思えていたのです。当時は川の中にミズカマキリがいるのが見えたりしました。たしかホタルもいたように思います。

 祖父が教えてくれた釣りは細長い竹を切り出して干しただけのような簡素な竿で、ウキと重りと針をつけたシンプルな仕掛けを使い家の前の川で釣りをするのです。昔は護岸をコンクリートで固めたりしていませんから、川には随所に凸凹があり淀みを作っていました。そんな川ですから狙う魚と言えば、小さなフナくらいが関の山だった気がします。タナゴなんていたでしょうか。さすがに記憶が曖昧です。でも、魚釣りの面白さは幼い身体にしっかり焼きついたのでした。

 その川は川幅が狭いこともあって雨が降ると増水していました。すると近所の人がザルとバケツを持ってやって来るのです。
 そのおじさんはザブリと川の中へ踏み込むと川の両岸の草むらをザルでザブザブすくい始めました。何だろうと思っているうちにザルの中には大量のドジョウが入っているのです。記憶では、その日におじさんが獲ったドジョウはバケツに二杯半。ウチもバケツに半分くらいは獲れたと思います。川幅が狭いとは言え増水していますからたとえ大人でも川の中に踏み込むのは危険です。
 ボクはと言えば、祖父の家の側の道路脇を流れる側溝にドジョウを見つけて何匹か拾ったと思います。
 昔はそんな光景が見られたのですが、最近区画整理とやらで祖父の住んでいた地域も大掛かりに工事をしています。止まっていた高速道路の工事が再開され、それに合わせて整備する様なのです。
 いつまでも変わらない風景は貴重ですね。せめて記憶の中だけでも。

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ご精読ありがとうございました。

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