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雑草の資格

〜グラウンドデザイン〜

 家庭菜園を作っている方ならおそらくコンパニオンプランツと言う考え方をご存じかと思います。

 先日の随想で「天使の取り分」というお話をしました。そして天使と悪魔が別の存在とは限らないということ。
 実際、畑に種を播いただけですとまもなくほとんどを食べ尽くされてしまうこともあるわけです。「これは天使の取り分よりはるかに多いな」とガッカリします。まるで虫に餌を与えているような状態ですね。種ばかりではなく苗の状態でも環境次第では同様の結末に至ります。食べ尽くされないような環境づくり。生態系が均衡を保てる状態をデザインする必要があります。言わば生態系デザインです。

 コンパニオンプランツは、野菜や花などを組み合わせて植栽することでこの生態系デザインを実現しようとしています。
「タデ食う虫も好きずき」なんて言うように虫にだって好みはあるわけです。その性質を利用します。
 野菜には、それぞれを好む虫に違いがあるため、育てたい野菜を好んで食べる虫を調べ、その虫が嫌う野菜や花をコンパニオンプランツとして一緒に育てるわけです。この発想は病気にも有効とのことです。ボクは発想と理論ばかりで実践が伴っていないのであまり偉そうなことは言えませんが、相性の良い組み合わせについては野菜や菜園の雑誌等で紹介されています。

 以前、農家に住み込みのアルバイトで毎日畑に出勤していたことがあります。白菜・レタス・グリーンボールがメインで、田圃も少しやっている農家でした。グリーンボールと言うのは、小玉のキャベツのような野菜です。肉厚で柔らかくとても美味しいのですっかりファンになっていました。ある時、農家の方のご都合で数日休みになったことがありました。そして久しぶりにグリーンボールの畑に行ってみると、人の気配に驚いて白い小さな羽虫が一斉に飛び立ったのです。羽虫の正体はたぶん蛾の一種。彼らにしてみれば、人気のないグリーンボールの畑は高級レストランです。

 大規模農業を営むなら効率的な収穫を考えると広大な土地に同じ種類の野菜を植えることになります。その結果、その野菜を好む虫が集まりやすくなると言えるでしょう。また、病気もで伝播しやすくなり、小さな問題があっという間に畑全体に影響します。それを防ぐために農薬を散布することになり、その農薬で益虫まで殺してしまうことになれば、再発の可能性が高まることになります。金魚の水カビの話と同様に負の連鎖に陥るわけです。
 一方、家庭菜園のように小規模の菜園の場合は、コンパニオンプランツの発想を取り入れやすいと言えるでしょう。多様な野菜や花を楽しみながら栽培出来れば、食卓に無農薬の新鮮な野菜を並べることも可能になるわけです。

 畑作りをする際に、昔だったら…いや、現代でも一般的には草取りや除草が欠かせないものと考えられています。後継者問題や作業の軽減を目的に除草剤を散布している田圃も目にします。あぜ道の植物が茶色く枯れた光景は異様な感じです。実は畑に出る草本類…雑草が野菜の栽培をサポートすることがあります。カマキリやクモやハチ…それからカエルなどの生き物が活動しやすくなるからです。また、植物が地面を被覆することで風雨による地面からの跳ね返りが低減されるため病気にかかり難くなると言う説もあります。所謂マルチ効果です。この手法には弱点もあります。最も気をつけたいと思ったのは草丈です。日光を遮る程の草丈になると、野菜が日照不足になってしまうので、選択的に草丈の低いものを残すようにした方が良いと感じていました。ここにグラウンドデザイン的発想が必要になります。ヨモギなどは草丈が大きくなりますし、放置するとどんどん増えるので出来れば収穫して食べてしまうのが良いと思います。美味しいですしね。ツユクサも繁茂するようになるので若いうちに摘み取って食べてしまうといいと思います。結構イケますしね。アカザとかシロザも食べてしまってもいいでしょう。結構ウマいですから…お気づきでしょうか。そうなんです。食べられる野草が結構あります。しかも意外と美味しいのです。食べる場合は毒草でないことを確認して灰汁抜きなど適切な調理が必要です。
 もっとも、野草ばかり食べていては本末転倒です。程々にした方がいいですね。

 時折不思議に思うのです。スーパーに並んでいる野菜はほとんどが外来野菜であるということ。日本は何かと輸入に頼っていますが、日常で食べているものもほとんど外来…輸入物です。では、日本人は何を食べて来たのでしょう。
 実は雑草だと言って畑から排除しようとしている植物の中に食べられるものが多数混じっています。何故それを栽培しないかと言えば、売れないから…でしょう。種も売ってませんしね。ところが、放置すれば繁茂してしまう程の生命力を持ち、農薬も要らないわけです。当然ながら虫に食べられて全滅してしまうような植物なら野生種として生き残ることはできません。雑草失格です。そう、野菜は「野の菜」でありながら雑草失格なのです。

 もちろん、雑草を育てようと言うつもりもありません。育てなくても繁茂しますから放置しただけで近隣の方から白い目で見られるようになるでしょう。
 グラウンドデザインのひとつとして雑草…野草に目を向けてみてはどうでしょう。

 春先に近所の田畑を眺めていると、小さな植物が一斉に花を咲かせていることに気がつきます。害虫に食害されて絶えることもなく毎年きちんと花を咲かせます。そしてその花が終わる頃、次の植物が花を咲かせます。まるで順番が決められているかのようです。こうした野生の植物の関係性を計算してデザインに活かすようにするためには大変な研究が必要でしょう。

 その方程式を見出して自然を味方につけると言うことは、天を味方につけることにも繋がるのかも知れません。

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ご精読ありがとうございました。

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