見出し画像

珈琲道ぢろばたとの徒然記 その一

誰一人として
知人のいなかった秩父(移住したのは2000年だ)

東京の外れのモヤシだった私にとって
気温が6~7度異なり
坂が多く
路面凍結当たり前のこの地に
なじむのは挑戦だった。

美味しい珈琲が飲みたい。
とりまく周囲が
四角い無機質のグレーに見えても

せめて
香り豊かな

バーントアンバーや
バーントシェンナの美しい色をした

湯気がハープ状に踊る
美味しい珈琲が飲みたい

そう思ったものだ。

珈琲豆を買いに
自転車に乗り、店を探した。

そこら中に
キ○コーヒーの看板は出ているが
大量生産のものなど
のっぺらぼうの珈琲は飲みたくもない。

見つからず 気落ちしていると
携帯が鳴った。
片足を付けて話しているとき
ふと見ると 時代を感じる珈琲屋があるではないか。

あった、あった。
私は店に入り
マスターに『珈琲豆ください』と言った。

マスターは私に気づいたと思うが
返事も応対もしてくれない。
奥さんが、私にメニューを渡して
『この中から選んでください』と言ってくれた。

キリマンジャロの豆をください

それでもマスターは私を睨むように見て
返事をしなかった。
二種類の豆を手に取り、
私に見せて
『この、どちらが良いでしょうか?』と
私に聞いた。

わたしは素人ですから
豆だけではわかりませんよ

そう答えると

『そうでしょう!飲んでみなくちゃあね』
なんと、いろいろな自家焙煎の珈琲を
飲み比べで出してくれて
選んだ豆の代金と その豆で入れた珈琲代しか
マスターは求めなかった。

それが私と 珈琲道ぢろばたの
初めての出会いだった。

独学の画家 香本博(コウモトヒロシ)です。北海道から沖縄まで約130回の個展を開催してきました。より多くの方に見て知っていただけるよう、絵本出版なども考えています。応援よろしくお願いします。