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【素直になれない心】

「近くにいてほしい

そばにいてあげたい。」

まだ一緒に住んでいたとき
お父さんに対して
何度もそう思った。

いつも仕事が終わると、
家で過ごすことはすくなく
しょっちゅう外へ出かけてしまう父をみて
寂しくて涙を流したことがあった。

そばにいてほしい。
私の親はあなただけなんだから
家にいて、何もしゃべらなくていいから
家にいてほしい。

家に帰ってくると、表向きは冷静でも
心の中は、子供心がはしゃいでいた
「あ、お父さん帰ってきた」
玄関を開けるタイミングで下に降りて、
「お帰り」
って声をかける。

父は
ただいま
とは言わない。

「おう、いたんか。」
とか
「おう、かえってきてたんか」

っていつも言う。
その言葉が聞けるだけで、安心した。

父のそばにいてあげたい。
あなたは一人じゃないよって。
そんなメッセージでもあった。

大好きだった父が
母との離縁をきっかけにそっけなくなり
手の届かない位置に行ってしまったように感じてから
10年以上たっていた頃の父への想いだった。

それまで間に、父を嫌になったり、恨んだり、
あんな人父親じゃない!って思ってしまったり

した時期もあったけど
年を重ねるにつれて、お父さんの苦悩葛藤がわかるようになって
いつしか、寄り添う気持ち、母性みたいなものが膨らんでいった。

お母さんはいなくなったけど、私があなたから離れないから。
口では言わないけど心ではそう思っていた。



一昨日、実家に帰ったとき
父は、体調崩して寝込んでいた。

父は、家の敷地内に会社の事務所もあって
その事務所の二階で寝ている

その事務所は、
私が生まれたばかりの頃から数年間過ごしていたところでもあるから
家に帰っても父はそこに寝ていて
顔合わせができなかった。

朝の9時ころに実家について
それから20時ころまでゆっくりしていた

その間に、曾祖父のお墓参りや散歩
叔母さんや祖父母との交流をした。

私が、お墓参りに行っている間に
(家から歩いて5分くらいのところに墓地がある)
父がお昼を取りに母屋へ来たらしい。

その時に、私が来ていることを知った父は
「なんだ、来てるのか。
何してんだ?」とおばさんに聞いて
「お墓参りだよ」って叔母さんが伝えて
父は
「はやく家に帰らせろ」といって
すぐに寝床に戻ったと聞いた。

父なりの愛情表現です。

風を映してはいけないから
こんなところに長居してないで
用事澄ましたら早く帰れって

素直に言えばいいのに
移したら大変、心配だから
って言ってくれればいいのに。

と、思い続けて30年。

父の愛情表現はこれでいいんだ。

ぶっきらぼう、不器用な父のことが私は大好きだし
尊敬している。

父は、今年54歳になった。

いまだに現役で井戸掘り職人を続けている。

私も手伝いで何度も現場に連れて行ってもらった。

そこで父の姿を見たとき
ほんとにかっこよかった。

父の寡黙な姿が
居心地がよく、一緒にいて安心した。

お父さんは、おれのもんだって。
自慢の父親だった。

大好きなんだよね。

父との物語はたくさんあるからこれから少しずつ綴っていこうと思う。

あなたのそばにいてあげたい。
でも私はやらなければならない仕事があるから
それをしっかりやり切らないといけない。

そうしてから
ゆっくりあなたと時間を過ごしたい。

お父さんが仕事をしなくてもいい状態に
早くするから、それまで元気でいてください。

私は、手紙で伝えれていないけど
素直な心は、あなたが大好きで
あなたが父親であることに本当に誇りを持っている。

あなたでよかった。
あなたじゃなかったら、今の私はいない。

いつ結婚するんだ?
って帰るたびに、祖父母に聞かれる。

きっとお父さんも気になってるよね。

あと残すところ私だけだものね。

大丈夫。
ちゃんとお嫁さんつれてくるから。

私の子も抱いてほしい。

この道に出会ったから
もう後は、突き進むだけ。

お父さんへの素直な心が
実は、私の根っこなのかもしれない。

お父さんがそういう心を芽生えさせてくれた。

その心を大切に。

私も、一人前の大人として
大事なパートナーとの関係性を実らせて
あなたに顔向けしたい。

お母さんがいない日々を
たった一人で、支えてくれて。
本当にありがとう。

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