見出し画像

「母に当たりが強くて…」な話題☆アートケアだより☆2024年6月号

子どもがお母さんにひどく八つ当たりする、ものすごく感情をぶつけてくる

というお話が、このところ毎回のワークで誰かしらから出ています。
 お話される皆さん、もう疲労困憊しきっていて、時に涙ぐむ方もいて、こちらも泣けてきます。毎日のことだから本当に大変ですよね…
 小さい子どもたち、あるいは負荷が過大にかかっている場合は年齢問わず、ストレスを上手に逃して心身の健康を保つ方策を取れないことがあります。
 そんな時、「感情をぶつけてもいいや!」という相手にだけ、つっかかってくる
。甘えられる相手として、ある種「選ばれし者」ではあるのですが、イライラは連鎖しやすく、面倒この上ない現象です。

 なんとなくですが、コロナが明けて園も学校も行事や子ども同士の関わりが多い以前の日常に戻って、コロナ期より子どもたちのストレス度が高いような感じがしています。
 「幼少期に社会的な育ちを後押しする環境」って、何がベストなのか。なかなか難しい問題ですが、現在進行形で子どもを育てる人にとって、「自分では変えられないこと」を変えようとするのはかなり大変なので、個々の生活の中でできることをまずやろうという状況です。

 日々、奮闘されているご家族の皆さんに、少しでも何かヒントになることを…と考えた時に、お顔が浮かんだのはNさんでした。Nさんの奮闘ぶりをおたよりに書かせていただくことで、心が軽くなる方がいるんじゃないかな、と、Nさんに文章と写真の掲載をご許可いただきました。
「アートケアひろば」で毎月ワーク時にご家族とスタッフで書いている「お子さん1人1人のアルバム」より。第一子、Aちゃんが2年生の頃にNさんが書かれた文です。

・・・・・・・・
4月
新学期だからと、ドキドキソワソワした様子はほとんどなく、学校に通っています。ガンガンお友達に声をかけるタイプではないですが、着実にクラスでお話しするお友達が出来ているようです。クラス替えが大の苦手だった私は、そんなAが素敵だなぁ頼もしいなぁと感じています。最近は、『いってきます』と『ただいまー』が元気よく、嬉しいかぎりです。家では、今までとかわらず私とよく喧嘩になりますが、、

5月
学校は嫌そうな様子もなく行っていますが、家での様子はワガママ放題の日も多く、外で頑張っている事に加え、私の対応が冷たい事への苛立ちや満たされない想いがあるんだろうと思います。

6月
今までは下校の際に、近所のお友達の家まで迎えに行く事が多かったのですが、最近は家まで1人で帰ってくるようになりました。迎えに行っていた頃よりも、なぜか帰宅後の親子関係が落ち着いたように思います。

7月
少し元気のない日があったり、珍しく私に甘えてきたり、すんなりお風呂に入ったり、何か悩んでいる事があるのかなぁ?と思ったり、、または、素直に甘えを表現出来るようになったから、やるべき事をすんなりするようになったのかな?と思ったり、、これまでの反抗しまくる段階から少し変わったような気がしています。

8月
夏休みは、ゆっくりのんびり好きな事して楽しもう~と思っていましたが、なんだか学校がある方が時間を持て余さなくていいのかな?と思うほど、母子関係が良くなかったです。絵を描くのが苦手なのか、夏休みの宿題の絵も泣きながら描きましたが、貯金箱は粘土ですっごく楽しそうに作っていました。

9月
「私ばかりいつも怒られる!」と泣いて訴えられた日がありました。とにかく夏休み前からよく腹痛を訴えていて、夏休み前から今まで一緒に通学していた子たちと行くのをやめ、1人で行く!となったタイミングだったので、お友達と何あるのかなと見守っていましたが、一番の原因は私の態度だったのか!とAが話してくれることで気づかされ反省し、これからAとの関係をいちから築いていく気持ちでいなければならないなと思っています。
ついつい私の都合の良いように、生活時間を決めていましたが、対話をするとそこにもストレスを感じていることもわかり、まだまだAの感じる不満や不安はあるのだと思いますが、少しづつ気持ちを汲み取っていけるようにしたいです。

10月
どうしたってイライラしちゃう!!ちょっとした事でキレキレスイッチオン!!みたいな空気があり、楽しむためのゲームが争いの種になる日々だったので、新しくゲームルールを作りました。自分だけが出来るゲームを一つダウンロードして、1日1時間OK、時間の割り振りは自分で決める、機嫌が悪くなったら(理不尽にあたりちらしてくるやつ)その時間を計り始めて翌日のゲーム時間を減らす、など親子で相談しながら決めました。まだ始めて1日しかたっていませんが、なんとなくいい感じな気がしています!

11月
10月は、学校に行きたくないという日がちょくちょくあり、10月末から主人がほぼ毎朝、自転車で学校まで送っています。送って行くようになると、11月は学校に行きたくないという日もほぼなくなりました。学校まで約2キロなので、遠くて行くのが面倒くさい様子も見受けられ、母としてはしっかり歩いて行きなよ!という気持ちと、まぁでも遠いし、妹が入学したら一緒に歩いて行くようになるかなぁと思ったり、、です。

・・・・・・・・
 拝読すると、Aちゃんの心の変化、バイオリズムが、山あり谷あり、ギザギザの線や、なだらかな線が見えてくるかのようです!
 進級するとクラス替えや授業数が増えるなどの変化で疲れるものですが、疲れや弱音を見せないお子さんたちは、数ヶ月経った夏から秋頃に不調が出てくることが散見されます。がんばってきたお子さんたちは、小出しにストレスを解消せず溜めてきた分だけ、安定を取り戻すまでの時間が長引く傾向だと感じています。
 Aちゃんもそのような変遷でした。
 元気が良い時に変に心配するのもおかしいですし、不調が出てから「そういえば」と気が付く、というのが自然な形です。だから「なぜ気づかなかったんだろう」と自分や周りを責める必要もなし。

「私ばかりいつも怒られる!」とお母さんに泣いて訴えた日があったり、
夏休み前から腹痛を訴えていたため一緒に通学していた子たちと行くのをやめた頃の作品
大好きなお人形のためのお家。ふわふわの素材に包まれていますね

Nさんは子どもの不調をご自分の対応がいけないからと書いていらして、すごい方だなぁと思いました。
 でもあまり自分を責めてほしくないなぁという思いがします。
 なぜなら、お母さんがとても素敵に子どもに対応しても、子どもの八つ当たりが激しくなることもある。
 その子の性質だったり、親の知らないところでの人間関係だったり、いろいろ要因はあるのですから、全部お母さんのせいと考えなくていいんじゃないかなと思うんです。
 でも親の対応が変わると変化するお子さんが多いのも事実です。だからやっぱり大人が自分を振り返ることは大事。

 私は「親は子どものサンドバッグになることがある」とお話しする時があります。サンドバッグになれという意味ではなくて「そうなってしまう時期がある」という意味です。
 子どもがバーンと思いをぶつけることができる相手。
 試合=社会という本番に向けて、練習できる相手。

 けれど親も人間ですし感情がありますから、あまり理不尽な要求をされたり暴力的な態度が続くとツライ。
 だから「子どもの言うことをなんでも受けとめる」なんて思わないで、自分がされてツライことは子どもに語ってみてほしい。
 そして子どもと一緒に、この八つ当たりを解決する方策を考える。
 Nさんは、そのような機会もちゃんとご自分で作っていらっしゃって、10月の「ゲームについての相談」がそうですね。

 そのころに「学校に行きたくない」と言えて、お父さんに学校に送ってもらうという変化が!
  お父さんに自転車で学校まで送ってもらう時、ピトッとくっついているのかなぁ~まさに充電タイムですね。遠い通学路を歩かないでピューっと行けるのも、実のところ楽チンだし特別な感じで嬉しいことでしょう。
だんだんお友達の目が気になってくる頃、外では親にべったりしなくなりますから、その時だけの親子の楽しみかもしれません。

10月 「行きたくない」を言えてお父さんに自転車に乗せてもらって登校し出した頃
ほっと一息、カフェタイムな気持ちなんでしょうか〜?と思ってしまいたくなる作品

 その後、Aちゃんの「行きたくない」は、春にかけて断続的にありましたが、波がありながらも快活な様子で、徐々に乗りこえていきました。

 子どもが不満を言っている時、「そのこと自体ではなく、他の言葉にならないストレスの蓄積、親に話しにくい事柄から発されているのかも」と思って対応すると、感情の応酬にならず、変化し始めるお子さんが多いです。
 自分を責めすぎず、かといって自分を振り返らず全て子どものせいにするのでもなく。
 泣いたり怒ったりぼやいたり笑い飛ばしたりしているうちに、子どもは大きくなっていきまーす!

と、上記おたより原稿チェックをお願いしましたところ、Nさんからいただいたメールがおもしろすぎたのでご紹介します!

・・・・・・・・Nさんより 後日談・・・・・・・・
後日談としては、10月の「機嫌が悪くなったら時間を計り始めて、翌日のゲーム時間を減らす」という対策、母子の言い合い中には、火に油を注ぐ事になり、1週間ほどで消滅しました!
落ち着いて話している時には納得できても、イライラしてる時に「はい、時間はかりまーす」なんて言われたら、そりゃ余計に腹立ちますよね!笑
もう、泣いたり怒ったりぼやいたり、笑い飛ばしてるあいだに、大きくなってもらおうと思います!
素敵なおたよりをありがとうございました。

・・・・・・・・
こちらこそ、Nさん、いつもたくさんの笑顔と優しいお心遣いを、ありがとうございます!

 
 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?