新しい学校のリーダーズライブ考 富山ONEFES

 2022年のゴールデンウイークに富山に行ってきた。
 一年ぶりの富山。

 ライブの会場は高岡(正確にはライブ会場の海王丸パークは射水市なのだがここではそこら辺は割愛)で地元富山の人でも行ったことがない人が多いという海王丸パークに新しい学校のリーダーズを見るために行ってきた。

 前日は焼けるような熱い一日で、高岡の街と酒に酔いしれた。この日は気温もぐっと下がり、日陰だと少し肌寒いくらいだ。それでも会場に着いた11時過ぎは日を遮るものが何もなく、直射日光を浴びるので帽子を目深にかぶり、上着を着て日焼け対策をする。会場に入場した後お目当てのバンドが出るまで出たり入ったり。海王丸パークの展望台まで行って雄大な立山連峰や晴天の真昼にかかる虹の景色を見る。都内のライブとは全く環境が違う風景が胸にしみる。向こうから聞こえてくる音楽。海。山。帆船。公園には家族連れ。長閑な日曜日。


 昼から時間を一気に進めてライブへ。16時半過ぎ、Pineapple Kryptoniteのリミックスが流れて四人が入場。この曲は初めて。出囃子じゃないんだー。富山は獅子舞が有名らしいからてっきり出囃子で人間太鼓だろうと踏んでいた。もしかしてこのリミックスは別の曲へのフリなのかと思ったら、そのまま一曲目はPineapple Kryptonite。最近はPineapple Kryptoniteから最終人類の流れが多いが今日もそうだった。常連にとっては聴きなれた、見慣れたセットリストだが、こういうフェスで初めて見る人には刺激的ではなかろうか。殺伐とした演舞に英語交じりの歌詞で、最後には全員地面に倒れ込む一曲目から、縦横無尽に踊りまくるド迫力の二曲目のギャップの大きさ、表現力の幅の広さに初見の人は度肝を抜かれるのではないかと思う。Pineapple Kryptoniteが終わって、ステージの最前に横たわっているRINを見ると呼吸で腹が上下している。ダンスというよりは一曲丸々格闘技の演舞をしているようなもので、そりゃ息も乱れるであろう。空手の型がオリンピック競技となり、次回パリ開催ではブレイクダンスも種目になるという。そう遠くない将来、オリンピックに「新しい学校のリーダーズ」という種目が取り入れらるかも知れない。アイドルとかアーティストという括りではなく、新しい学校のリーダーズという1ジャンルになってもおかしくはない。などと空想が膨らむ。てか何を言っているのだ、私は。
 
 正気に戻ろう。四人全員が横たわり、おもむろにSUZUKAが立ち上がり、短いイントロからSUZUKAのボーカルが始まる。灰とミュージックのところから仰向けに寝ていた三人がズズズとブリッジで立ち上がり、闇に咲いて咲き乱れるこの瞬間はいつ見てもゾクゾクする。最近は最初のズチャズは右手を最終人類ポーズで高らかに掲げながら直立不動で微動だにしなかったが、今日は上手のMIZYUから純繰りに一人ずつズチャダンスを踊った。イエスッ! やはり踊っている方がいいッ! なんか気持ちが伝わるような気がする。彼女らは絶えず踊りを思考して試行して変えてきている。毎回のように表現が違っていたりするのも底なし沼にはまる魅力の一つなのだが、基本的には激しく踊っている姿を見たいというものがあるので、このように舞いを取り込んでもらうのは嬉しいし初っ端から盛り上がる。ノリのいいビートに合わせてカッコいいダンスをするかと思えば、コミカルな表情を入れるなど緩急自在。切れのある動きに合わせてSUZUKAが観客を手拍子で乗らせ、ノリノリの二番から(最終回ひどいってクラスメイトが言う、の、SUZUKAが右手をスイングさせるところと、言う、のところで三人が手を口のようにパクパクさせるところがお気に入り)二回目のズチャズで曲はエスカレートしていき、一旦静かになった後の「シンフォニーを!」から怒涛のラストへ。立体的に動き回り踊りまくり、四人が手と足を取り合って複雑なフォーメーションでフィニッシュ! マーベラス! ロス五輪の具志堅幸司選手を彷彿とさせる10点満点だ。最前列で見ていた女の子二人が一所懸命に両手で最終人類ポーズをしようとしていたのも微笑ましい。
 
 MCで一息。いつもの挨拶からAG!ポーズ。MCの間にKANONが最前列の女の子たちに手を振った。すると後ろにいたお母さんが大興奮。手ぇー振ってくれたよ! こっち見てくれたよ! すごいすごいすごい!(昇天)。女の子たちは後ろのお母さんが悶死しているのにも気が付かず、手を振り振りしながら喜んでいた。
 
 三曲目はオトナブルー。SUZUKAの「ほしんでしょ」のポーズがいつも以上に大きかったのはフェスの大きなステージに合わせたものか。MIZYUの歌う「私だーけーの」のところの首振りをみんなでやってみよーやーん! びゃー、みんなできとーやーん! それそれー、とSUZUKAご満悦。アップテンポでキレッキレで、個人的には最後にMIZYUが下を向きながら一心不乱にドコドコしているのがドツボ。
 続いて、断続的な低音ビートからチャイムが鳴ってFantasitico。間奏中はなにを表現しているのかいまいちよく分からないし、ヘイ、ショーンの呼びかけもよく分からないけれど、分からなくて別にいいか、面白けりゃ。関係ないけれどRINの顔はつやっつやでダンスはキレッキレ。最後にSUZUKAが「ナイスですね~」
 続いて、まさかやるとは思わなかった新曲、「WOO!GO!」! 十日後にお台場のZEPPでワンマンを控えているのに、そこでお披露目ではなくて富山のONEFESで初披露とは思わなかった。ナイキとコラボのWOO!GO!を演るとは思わなんだ。完全に予習不足だ。配信バージョンとライブバージョンで振り付けを変えているとは耳にしたが、数日後に確認しておけばいいいだろうとそんなレベル。曲は耳に残りやすいわかりやすいものだけど、ダンスもビートもよく知らないからなんだかもったいない。でもまあ素直に目に焼き付ければいいか。ライブ初公開の場に立ち会えただけでも奇跡。いや奇跡は言い過ぎた。奇跡はそんなに安かない。MIZYUが歌うフラットな高音パートが印象に残るのはMIZYUが好きだからだろうな。
 そのままビースティーガールズ(仮称)のintergalactic(公認?)。RINが衣装の左手を通せていなくてビローンとなっていたのをMIZYUが笑っているのが牧歌的。元の曲を知らないけれど、Pineapple Kryptoniteを共同制作したマニー・マイクが携わっていたBeastie Boysの大ヒット曲のカバー。
 そして次が最後。30分は短い。でも7曲なら満足か。ラストはFree Your Mind。少し前まではラストは迷えば尊しだったが、この二年でセットリストもガラリと変わってしまった。隔世の感がある。以前はメッセージ性が強く息をのむほどの激しいパフォーマンスが多かったが、ここ数年は言葉遊びや肩の力を抜いて楽しめる楽曲が多くなった。世界デビューしてグローバルを対象としている面が大きい。時代や流れやタイミング。その今の新しい学校のリーダーズのラストがFree Your Mind。この曲も可愛くてコミカルでありながら、激しくて骨太な面が交互に入り交じる、実に新しい学校のリーダーズらしい楽曲&ダンスに仕上げている。ラスト、ジャーンとかき鳴らしたギターで下校! と去っていきやすいのも締めにふさわしい。

 30分のライブを見るために丸二日をあてた今回の富山行だったが、実に実りの多い二日間であった。観光で言えば国宝の瑞龍寺やカレーうどんの吉宗や居酒屋盛盛、ライブで言えばもう一つのお目当ての打首獄門同好会に初見で吸い込まれたベッド・インなどフェスならではの発見や面白さがあった。というかフェスに参加するのが数年ぶりなので、そりゃもうワクワクが止まらなかった。フェスが日常だったとは言えないが、ライブが日常だった三年前が狂おしく懐かしい。でもそんなことを言ってもどうにもならず、新しい日常を過ごしていかねばならない。逆に今回のように今まで行ったことない地域でのライブに参戦してくれたらと思う。ライブにかこつけての国内旅行。できれば行ったことのない青森とか和歌山とか愛媛とかでライブをしてほしいものだ。青森県立美術館、アドベンチャーワールド、佐田岬と、行きたいところに行ってみたいだけなのだが。

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