新しい学校のリーダーズライブ考 2023年6月、やついフェス

 ヤツイフェス。快晴。暑い。お昼前、開場の30分くらい前に行ったら既に長蛇の列。ラブホの先まで並んでいる。ざっと数百人。照りつける太陽。たなびく紫煙。ほぼ南中で日陰はない。先頭の人はいったい何時から並び始めたのだろう。続々と客が集まる中、時間通りに入場が始まる。建物の中に入ることができるだけでもありがたい。
 O-EASTの階上から下のスタンド席へ降りていく。すでに人で一杯である。お目当ては勿論新しい学校のリーダーズなのだが、オープニングの後の渋さ知らズも楽しみにしていたから近くで見られないかもしれないのは残念だ。でもしかしこの炎天下の中、一時間も二時間も前に来て並ぶ気力はなかったのでそれは仕方がない。降りて行って、後方しかないかと思っていたが、スタッフに促されるままに会場の中央の方に進んでいくうちにヤツイフェスのオープニングが始まった。
 ヤツイと木梨憲武らによるオープニング。しっかりと笑わせてもらって楽しませてもらった。木梨の笑いの老獪なテクに翻弄されるのをヤツイは自ら楽しんでいるようだ。フライングタイムも含めて30分、満員の会場が大いに盛り上がった。

 その流れのまま渋さ知らズオーケストラが入場してきて、ヤツイ、木梨らとともにコラボセッションして盛り上がる。そしてそのまま渋さ知らズのステージが始まった。前回(昨年)は客が少なかったので、ど真ん中の最前で観た。聴いた。そしてしびれた。管楽器を中心とした爆音にすっかり心を奪われ、今年も楽しみにしていた。ところがステージが始まってもほとんどの客が動かない。もっとほかの会場に移動してくれることを期待していたのだが全然動かない。いかん。これはもっといいところで観たい、聴きたい! 出ていく人と入れ替わるように前に進んでいくと、こちらの本気度が伝わったのか案外すんなりと空間を譲ってくれる人ばかり。真中前方でたっぷりと堪能できる。そして今年も、昨年同様滅茶苦茶素晴らしい音楽とパフォーマンスに魅了される。唯一、前方左に背の高い人がいて死角が生じた。渋さ知らズの変態サックスプレーヤーのもじゃもじゃ頭の人をついぞ見ることができなかったのが残念だ。でも演者の煙草の臭いが鼻につくほどの至近距離の爆音で演奏とパフォーマンスを体感出来て大満足である。これだけでも来た甲斐があったというものだ。系統は違うがスナーキー・パピーのようなビッグバンドの音楽の楽しさに溢れていると思う。来月のビルボード東京でのライブが俄然楽しみになってきた。

 オープニングと渋さ知らズの興奮の後、そんなこんなで数時間が経ち、いよいよ新しい学校のリーダーズの出番である。その時までに前方二列目の真中まで移動ができた。間近で見ることができると安堵していたが、その後から人が来るは来るはで、観客が押し込まれ「この後混雑が予想されますので今一歩前に進んでください」とアナウンスが流れるも鮨詰め状態で微動だに出来ず、コロナ前では考えられなかった密集ぶり。改めて新しい学校のリーダーズの勢いを目の当たりにした。
 いよいよ始まる時間が近づいてきて、会場のざわめきが高ぶってきたところで、アナウンスが新しい学校のリーダーズを紹介すると会場から割れんばかりの声が上がり、チャイムが鳴ると一転して静まり返る。会場の期待が大きく膨らんでいる。嵐の前の静けさのようだ。
 
 チャイム、固唾をのむ観客、一時帰国のワンマンライブの時のオープニング曲、歓声、拍手、登場する四人、耳をつんざく歓声と絶叫と拍手が轟く!

 一曲目は最近のオープニング曲となりつつある、「青春を切り裂く波動」。イントロの後のSUZUKAの「渋谷ー!」の声でショーが始まる。観客は超満員。ハイハイ! の大合掌。声援も響く。オヤジの野太い声よりも若い女の子の黄色い声が多い。昔とは大違いだ。物凄い熱狂に包まれている。目まぐるしく変わる四人の歌声、踊り、オタクダンス、見事な表現力で観客の心を瞬時に掴みとる。その中でもSUZUKAの高音が実に伸びやかだ。

 続いて「最終人類」のイントロが流れると湧き上がる大歓声。最初の間奏でSUZUKAがニコッと笑うとまたもや大歓声。客もリダズも乗りに乗っている。組体操のような冒頭から、SUZUKAの力強いボーカルにMIZYU、RIN、KANONの激しい舞いへと続く。途中で観客に拍手を促し、ズチャズダンスでは独特な振りが一人、二人、三人と増えていく。一転、曲は静かになり、語るような歌声から「シンフォニーを!」の叫びで私も自然に、うおお! と叫んだ。その激しいダンスに魂をゆすぶられる。ラストに向かっての怒涛の後半はダイナミックな動きと四人の一糸乱れぬ連携で突っ走り圧倒的なフィナーレを迎える。四人が手に手を取ってのけぞったポーズを完璧に決めると、拍手と歓声が雷雨のように会場に響き渡った。実に素晴らしい。

 MCはいつもの休め、気をつけ、礼で始まり、決めポーズをドーン!
「手を挙げていきましょー」と次の「NAINAINAI」が始まる。最初の身長おっきいねではKANONがSUZUKAを肩車で担ぎ、おっぱい大きいねではSUZUKAとKANONが二人で胸に手を突っ込んでいる。間奏の「バア!」の所では四人とも観客の最前まで行って客を沸かす。みんなでプチャハンザップの時に前方から振り返って見たら、会場全体が波を打っている。すごい。よくぞここまで。見たかった光景がここにある。

 そのまま「Giri Giri」へと続く。激しいビートに合わせステージ後ろのスクリーンにはサイケな映像が流れる。SUZUKAだけではなくコミカルなRINのボーカル、透き通ったMIZYUの歌声で曲に彩りが出る。
 続いては「AG!SUZAN」。ハチャメチャな日本語歌詞が無国籍な色彩を強める。オリジナルではないが、それにしても冒頭の朝だ朝だよのMIZYUの指揮者? のはみだしっぷりはなんだ。初めて見る。いつもの白目でガンガン首を振っているMIZYUも相当にエキセントリックだが、全身を使って会場を煽る弾けっぷりには別種の魔物が潜んでいる。この娘はホントにYABAI。KANONの抑揚のないひーふーみーよーや、コミカルでありながらビシバシと決まる四人の脱力感溢れるステージングで大いに楽しませる。

 寸劇が始まった。暑ーいとか、火照ってきちゃった~ん、とか四人で喋りながら急に「ちょっとあんた、何私のことやらしい目で見てんのよ!」とSUZUKAが私の目を見て問い詰めた。ような気がした。いやいやいや、そんな気持ちは毛頭ございません、というような態度を見せたが「渋谷のホテルにでも連れ込む気でしょ!」と会場を巻き込んで煽りまくって、いやー、すっかりオトナになりましたなあ、とこの新しい流れに古いファンも思わずニヤリ。「でも私って大人っぽいでしょー」と、寸劇なのか曲の前振りなのかよく分からない面白やりとりコーナーを挟んで、さあ、皆さんお待ちかねの「オトナブルー」が流れる。みんなで首を振って踊りましょう! とイントロが始まり、「ほしんでしょ」「何を期待してるの~」で会場は待ってましたとばかりに盛り上がる。続いての首振りダンスで皆が真似をし、「おー!」でみんな手を振り上げ、二番でSUZUKAがステージ前方に出ていくとまたまた歓声が上がる。次から次からへと見どころ聴きどころがある。曲中、四人の紹介をできるのがまたいい。「二つしばりのMIZYU!」とかのテロップが合いそうだ。いやあ実に全く楽しい曲じゃあないですか。初見からかれこれ四年になるはずだが、何度見ても興味尽きない。手焼きのCDを売っていた昔がちょっと信じられない。

 続けて「乙女の美学」。冒頭でSUZUKAが「令和の女、なめたらあかんでぇ」と呟き、昭和歌謡風に歌い上げる。MIZYU、RIN、KANONの三人はスカートを肩に巻き、にじり寄るようなダンスに「シュビドゥビ、パッパヤー」とコーラスを入れる。すましたKANON、無表情なRIN、目力が凄いMIZYU。ワンマンで見た初見よりも構成力が抜群に良くなっている。まだまだ進化していきそうな曲だ。ワンマンの時にも書いたが、内山田洋とクールファイブのようなボーカル&コーラスグループテイストなこの曲。考えてみると私が知っているのは男性グループばかりで、女性だけのグループは昭和から数えても少なかったのではないか。もしかして初の女性シュビドゥワコーラスグループなのでは? MIZYU、RIN、KANONもダンスだけではなくボーカルとしての魅力もあるので、是非この路線も広げていってもらいたいものだと思う。メジャーレーベルで楽曲を提供していたH ZETT Mによる久々の曲が昔からのファンの心に突き刺さる。

 しとやかに曲が終わり、次のイントロが流れる。「Pineapple Kryptonite」だ。ショートバージョンだ。よし! 小さくガッツポーズ。四人が次々と切って切られて殴り殴られ、間を置かずに曲は終盤に向かう。MIZYUが三点倒立する顔をちらりと眺めることができた。この顔を見た人には幸せが訪れるという。曲は徐々にテンポアップし、殴り合いもテンポアップし、曲はブーンと低音が響いて暗転する。四人は後ろに行き学ランに着替え、その流れで「Pineapple Kryptonite Remix」が始まると大歓声が上がる。漆黒を身にまとい、MIZYUバイクで混沌に乗り出し、四人のダンスの激しさは最高潮に達する。ダンス、スピード、ド派手な振り。学ラン、乱舞、ブラボー! 実に素晴らしい! 舞踏だけで魅せる。超カッコいい!

 MCでSUZUKAが「せんせー!」と言ったのでてっきり久々の「恋ゲバ」かと思いきや、「せんせい」違いで、宣誓、ヤツイフェスを楽しむことを誓います! ということで次の曲!

 ところがイントロが流れて、一瞬迷う。なんだっけ、この曲。あっ! 「席替ガットゥーゾ」だ! 実に久しぶりだ! いつ以来だ。恋ゲバでなくとも構わない。まさか今日、ステージの後半でこの曲を持ってくるとは! この時間で「ジャンケンしよーぜ!」とSUZUKAが叫ぶとは思わなんだ! ハイハイ! の掛け声。KANONとRINのXの舞い。ジャンケンポンあいこでしょ! など盛り上がりどころがいくつもある大好きな曲。いつ以来だ? 銃声のSEがなくなっている? 拳をあげて繰り返す永遠のあいこのジャンケン。楽しい曲だ。最後、RINの演舞があったのか覚えていない。久しぶり過ぎて興奮しすぎた。もっと他の曲もやって欲しいと切に願う。

 そして次はもう「迷えば尊し」だ。もうラストだ。もうもうもう、45分のなんと短いことよ。復活したハイハイハイハイの四回コールのしっくり感は二回では味わえない心地良さだ。SUZUKAの自由なボーカルにMIZYU、RIN、KANONのダンス。いつからか円を周るような振りではなくなった。常に舞いが変化するのを考察するのも面白い。手を伸ばして! 掴んで! とSUZUKAが客に教え、四人はステージ最前に立って客の目をそれぞれのぞき込んでいく。ジャンプし、ヘドバンし、スカートをまくり上げ、ハイハイハイハイの振り、そしてSUZUKAはまたもや客席にダイブ。またやってる~みたいな表情だったKANONが印象的。SUZUKAがステージに戻ってくると「みんな支えてくれてありがとう!」そして歌いながら、「これから世界に羽ばたいていきます!」みたいな宣言をして、大団円! 青春日本代表として、ますますの活躍が期待できる。そんなステージ。熱い。熱すぎる。

 最後も休め気をつけ礼で締め。下校の掛け声で四人が去ると、客席から「ありがとう!」の声が飛ぶ。ああ、私も同じ気持ちだ。ダンスアンドボーカルグループの四人組は世界に向けて飛んでいくことも多くなったが、この夏は日本に「一時帰国」して多くのフェスに参加する。その全てに参加することはできないが、どのフェスでどんなパフォーマンスを見ることができるのか、今日のステージが終わった直後から次のステージが楽しみでならない。


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