Raoul Dufy 展 @ パナソニック汐留美術館

絵画も良いのだが、そのテキスタイルデザインを見たあとでは絵画は何か物足りなさを感じる。絵画をひと目見たときのインパクトは、主として画面構成と色彩による。描かれた対象の造形や内容といった情報が意味を持つのはその次の段階だ。Dufyは色彩に関しては極めて鋭敏かつ創造的な感覚を持つ一方、画面構成に関してはあまり強くはない。凡庸と言っても良いだろう。このことは鑑賞者が彼の絵画を見るときには不利に働く。その色彩の輝きに圧倒される一方で、それを支えるだけの構成の強さを、そこに見出すことができないからだ。

テキスタイルデザインでは、このことがむしろプラスに働く。平面的な造形の繰り返しによって表現されるそれらのデザインにおいては、絵画的な構成は不要である。テキスタイルデザインというフレームの中で、Dufyの、色彩に、そしてもちろん造形にも特化したその才は、鑑賞者の眼差しに満ち渡ることになる。彼が愛した音楽のハーモニーは、テキスタイルデザインにこそ居場所を見つけ、鳴り響くのだ。

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