見出し画像

興福寺中金堂

📷 興福寺中金堂ライトアップ (2018年10月)  四天王立像 (鎌倉時代 国宝) が見えました。

画像11

📷  中金堂 四天王立像  増長天 (左) 、広目天 (右)

画像1

📷  中金堂 四天王立像  持国天 (右) 、多聞天 (左)

画像2


画像11


この四天王像は以前は南円堂 (重文) に有り、
通常南円堂は年に一度の法要時のみ拝観可能であって、
優れた彫刻で国宝であるにも関わらず、何故かメディアでも殆ど見ることがありませんでした。
私は1997年4月南円堂解体修理落慶法要時の一般公開で初めて拝見し、
いかにも鎌倉彫刻風にリアルで新しい感じの格好良さが強く印象に残っています。

南円堂自体も修理直後で真新しく、四方の戸が開けられた堂内は明るく
円堂という形式ゆえ参観者は須弥壇の周囲を回りながら
大ぶりなポーズの四天王のそれぞれを順番に至近距離で見上げて、
その高くかかげた槍や腕が天井に向かう、彫刻と空間のバロック的なアンサンブルに感動しました。

2メートルほどの等身大よりやや大きめの像高も、南円堂の高い天井とよく合い (※1)、
一方、運慶の先代の作品にしては随分「先進的」な印象で、康慶の弟子という定慶辺りが担当したのかもと想いました。

邪鬼でなく岩の上に立つ形が四天王像としては異例で、元来この像が立っていた堂の位置がその理由と考えられます。

🍁

既に南円堂落慶法要より前、1990年に藤岡穣氏が新説を発表し
この四天王は本来中金堂の所在で、当時中金堂 (仮金堂) に有った四天王像が元々は南円堂の像だと述べました。
その見解が認められて、2017年に南円堂と中金堂の四天王像が入れ替わり
 (2018年に再建中金堂の落慶法要。その前年に仮金堂の仏像を完成直後の中金堂へ移動) 、
2018年には南円堂へ移った四天王像が国宝に指定。

重文から国宝に「昇格」した理由は、
今の南円堂伝来の諸像 (本尊の不空羂索観音像 [国宝]、法相六祖像 [国宝]、四天王像) が康慶一門による作品、「作者・年代が明確な作例 (基準作)」 と見做されていて、
しかも康慶が鎌倉彫刻を代表する仏師運慶の父・師匠という「美術史上重要な存在」であり、この四天王像がそれに当てはめられたからでしょう。

四天王交代後の南円堂にも参りましたが、以前と違い戸口は多く開放されず暗い堂内と、重量感のある四天王の雰囲気が合っていました。
四天王の筆頭格という多聞天が一回り大きく、鎧の模様もきらびやかである事が関心を引きます。

[📷 南円堂公開時 (2019年) 北面。手前は西金堂跡]

画像4


画像5

🍁

通常年一度公開の南円堂と比べ、中金堂は
 ( 2021年1月8日から当分拝観中止 [1月現在] していますが
[🔍 興福寺公式ページ https://www.kohfukuji.com/emergency/ ] )
再建直後は日常的に公開されていたので四天王像を拝観する機会の飛躍的な増加に隔世の感がありました。
ただ、(かつての仮金堂同様に) 須弥壇前方 (南方) までしか入れない為、四天王の特に後方の多聞天、広目天が遠方からしか観られない状態になっています。

🍁

いま中金堂にある四天王が北円堂 (国宝) の運慶一門の国宝の諸像と同じ、仏像には珍しいカツラ材で作られていることなどから、
元来北円堂に有ったとする伊東史朗氏の説 (2006年, 2008年) も有り、
だとすれば四天王像も運慶一門の作となります。


🍁
※1
2019年の北円堂と南円堂同時公開時に続けて参って実感したのですが、
互いに似通った外観であるものの、北隣の北円堂と比べると南円堂が一回りほど大きく天井も高いことに気づきました。
そもそも本尊の大きさが違いますね。

🍁

[📷 興福寺中金堂 正面 (南面)]

画像10

[📷 興福寺南円堂  正面 (東面)]

画像12

[📷 同 北西面]

画像12

[📷 興福寺北円堂 正面 (南面)]

画像7

[📷 南円堂の基壇から西の三重塔 (国宝) を望む]

画像6


[2018年10月23日, 12月17日 (中金堂), 2018年11月10日 (北円堂), 2018年3月13日, 2019年10月22日 (南円堂) 撮影]

🍁

🔍 奈良文化財研究所リポジトリ「中金堂の歴史」(2002年 馬場基) 
https://repository.nabunken.go.jp/dspace/bitstream/11177/6060/1/BA44356178_3_004_005.pdf /
(上論文のデータ)  https://repository.nabunken.go.jp/dspace/handle/11177/6060 /   

🍁

🔍 興福寺公式ページ「現在のご拝観について」 
https://www.kohfukuji.com/emergency/ 
🔍 興福寺公式ページ「中金堂四天王像」
https://www.kohfukuji.com/property/b-0026/
🔍 興福寺公式ページ「南円堂四天王像」
https://www.kohfukuji.com/property/b-0028/  

🍁

📔 本ブログ記事 


🍁

(17日18日更新)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?