夕暮れの街並み

さあ、いっしょに。

ちょっとした片付けを行いました。

それで出て来たのが、過去に勤めていた小学生対象のアートスタジオでの自作資料。「今日はこういうものを作りますよ~。」と最初にみせる参考作品。お題は私の心の師匠で美術家であり美術教育の専門家でもあるN教授から賜ったものを自分なりにアレンジしたものと、そのスタジオで前任の講師から引き継いだものなど色々。様々な題材を状況に合わせてよく組み合わせたものです。

「夕暮れの街並み」という題材名だったかと。水彩絵の具のにじみを楽しみながら街並みの形に切った黒い画用紙を貼り付けるというもの。貼り付けた瞬間に作品が大きく変化するところも感動ポイントですね。

「フィンガーペインティング」文字通り絵の具(アクリル絵の具に糊を混ぜたもの)を手で直接すくって画用紙に描く技法です。確か私がアトリエで実践した時は「気持ちを色と形で表そう」的な題材だったかと。小学生対象なので明るく軽めのタイトルで。

余談ですが、フィンガーペインティングはヒーリング系のワークショップではポピュラーな技法のようです。2011年の東日本大震災の折に問題視されたこともありますが、これ素人がセラピストぶって心的外傷のある方相手に安易に実践してはいけません。クライアントにとって取り返しのつかないことになります。プロのアートセラピストはきちんと責任を持って最後まで継続的にクライアントのフォローをするものです。そしてブーメラン式にダメージを受けるセラピスト自身が相当壊れますので、そのケアも定期的に必要になります。それ相応の覚悟と環境で活動していらっしゃるアートセラピストは国内にどの位居るのでしょうか。さて脱線終わり。

「冬の風景」スクラッチの技法で冬をイメージした風景を描く題材。持ち帰って家に飾れるように、ボール紙に作品を貼って装飾し、引っかけるための紐も裏に取り付けます。スクラッチの技法が児童たちに意外と知られていないことに驚きました。スクラッチといえばクレヨンで色とりどりに塗った上から黒いクレヨンで塗りつぶすというイメージだったのですが、先輩から教わった方法では黒いクレヨンの代わりに黒いアクリル絵の具だったので思ったより制作時間が短縮されました。やり直しもある程度できるので児童も安心して描いていたようでした。ただアクリル絵の具は塗り過ぎると引っ掻けなくなるので程々に…。

「筆だけで描く」だったかと。その参考作品にこれはないだろ…。…一体何があったんだ私よ。水彩絵の具という素材の面白さや可能性を探ることや、下描きにとらわれず思い切って伸び伸び描くことを狙った題材だったと思います。まあ、大体脱線するのですけれどね。脱線こそ本質、とか前任の講師がおっしゃっていたようなのでそれもアリかと受け止めています。

ただ当時、小学1年生から6年生の児童がひとつのアトリエで活動するにはかなりの苦労がありました。児童たち自身にも、私にも。

私はいわゆる子ども(乳幼児~中学生あたり)を子どもとしてみることができないと勤めながら気付きました。自分と対等な、自立した一個の個人として付き合う感覚にしかなれないのです。これは私がずっと昔から無意識のうちに培ってきた感覚の癖と言えるかもしれません。

だから、「教育」という体制に対してどうもしっくりこない自分が居たことも否めません。それに気付いた今、私にできることは教育ではなく一緒になって楽しく活動することではないかと思うのです。互いの評価を気にすることなく、ひたすら心から、身体ごと「美」を「楽しむ」のです。そのとき、私は対象者に対してどんな立場かというと、決して「指導者」ではなく「伴走者」のようなものが理想的だと思っています。

Art ground kuu のワークショップでは年齢問わず、表現することに興味のある方々の手助けができればと思っています。

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