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AWAREの活動

AWAREの活動
                                                                                                                    中嶋 泉

本発表では、パリに基盤を持ち、現在国際的に活動を広げつつある、女性美術家のアーカイヴAWARE(Archives of Women Artists Research & Exhibitions)について報告した。AWAREは、2009年にポンピドゥー・センターで行われた女性による作品のみの展覧会、「elles@centrepompidou」のキュレーターを務めたカミーユ・モリノーが中心となって2014年に共同設立された組織で、省庁を含む数多くの支援を受けた非営利団体である。AWARE賞、シンポジウム、出版、若手女性アーティスト支援など多岐にわたる活動のうち、今回はAWAREのウェブサイトに掲載されている、アーティストのバイオグラフィー(伝記的文章)のアーカイヴについて述べた。同アーカイヴでは、1790年から1972年の間に生まれた各地の女性アーティストを対象に、伝記的情報を含んだ文章、主要参考文献、主要展覧会、アーティストのポートレイト、作品図版を収集している。精査された文章、情報は、AWAREウェブサイト内の「Index」に掲載される。同サイトは、「運動」、「主題」、「媒体および技法」、「関連した国」、「世代」で横断検索することが可能で、名前を知らなくとも興味の持てるアーティストにたどり着くことができる開かれた構造となっている。
 AWAREは各地のアーティストを扱う国際的なアーカイヴを目指しているが、そこにはまだ問題もある。バイオグラフィーの収集および作成はアジア、アフリカ、南米を含む10カ国から集まった14人のメンバーによって取り組まれている。それぞれのメンバーが、取扱地域のアーティストを担当することによって、地域差を小さくしようとの目論見だが、アジアからは一人(日本)しか参加していないなど、未だ西洋中心的であることは否めない。また対象としている「女性アーティスト」がどの範囲を含むかといった議論もなされておらず、「女性アーティストのアーカイヴ」という網羅的資料体として成立するための数々の課題が見えてくる。

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